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 シェイク様の隣にいるヒメラルダという女性……
 黄金の髪は腰まで届き、その美しさは息を呑むほど。
 これは私がフラれても仕方ないか……そんな風にぼんやりと考えながら彼女を見ていた。

 彼女は顔色を変えることなく、シェイク様に肩を抱かれながら、ただ静かに私のことを見つめ返している。
 シェイク様は私がヒメラルダを睨んでいるとでも思ったのか、彼女を守るように前面に立つ。

「嫉妬をするな、見苦しい」
「え? 嫉妬なんてしてませんけど?」
「……ふ。負け惜しみだということは分かっている。そんな平気なフリはするな! ショックを受けているんだろ? 本当は捨てられたくないんだろ? 僕のことが好きなんだろ?」
「えーと……本当に違うんで、捨ててもらって構いませんから」
「…………」

 顔を引きつらせるシェイク様。
 自分にそんな魅力があるとでも思っているのだろうか?
 確かに端正な顔立ちはしているが……それだけだ。
 男性的な魅力も感じないし、金持ちのボンボンというイメージしかない。
 甘やかされて育ってきたのだろう。
 ハッキリ言って、ないわ。

「もう行ってもよろしいですか?」
「あ、ああ……」
「では、ごきげんよう」
「ふ、ふん。もう会うことはないだろう。さらばだ聖女よ。お前がいなくなってもこの国は繁栄し続ける」
「王様もごきげんよう」
「…………」

 シェイク様のお父上、ソルディッチ王。
 彼は離れたところから黙ってこちらの様子を窺っていた。
 威厳のあるお方ではあるが……先代の聖女である奥様をないがしろにし、そして暴力を振るっていたという噂を耳にしたことがある。
 その真偽は誰も知ることはないが……奥様は自殺をしてしまった。
 暴力に耐えられなくなったからなのか。
 はたまた、精神に異常をきたしてしたことなのか。
 その真実は闇に葬られたまま。
 神のみぞ知る真実というわけだ。

 だがどちらにしても、彼らは悪手を打った。
 奥様が死んだのが王様の暴力が原因かどうかは定かではないが、彼女を軽視したことは事実だと思う。
 でなければ、あんな噂が流れることはない。
 
 そしてシェイク様は聖女である私を見限ってしまった。

 全ては自分たちの責任。
 何代も続いてきた神との契約を自ら断ち切ってしまったのだ。
 聖女を妻とし、それを生涯大事にする。

 そうすれば国は栄え続けるというのに、自分たちの手でそれを手放してしまったのだ。
 
 王妃しての穏やかな日々は失ってしまったけれど、私はシェイク様と結婚しなくていいとう事実にワクワクし、城を後にするのであった。
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