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「ソフィア……もっと人に優しくはしてやれないのか? あれではただの性悪じゃないか」
「あら? 下々の者たちにそんな気を使う必要ないでしょ? あれらは私たちにこき使われるために生まれてきた、いわば奴隷のような存在なのですから。私たちに使われてるだけで幸せなのですよ」
「い、いや、そんなことは……」
「そんなことはありますわ。もしルーファウス様がそれを否定するというのなら、お姉様と同じ偽善者ということ。ルーファウス様もあの子たちをお金で雇っているのでしょう? なら、完璧な主従関係が生じていることを理解しないと。私たちは使う側。そして雇われた人は雇った人間の全てを受け入れなければいけないの。文句があるなら仕事を辞めればいいだけですわ」

 メチャクチャなことを言っているが、ソフィアのあまりにも当然のような口ぶりに唖然としてしまうルーファウス。
 もしかしてソフィアは正しいのか?
 そう感じてしまう程であった。

 だが首を振ってそれは間違いだと自分に言い聞かすルーファウス。
 
 それからもソフィアの行為に愕然とするルーファウス。
 しかし彼女と共に行動している間に、一つ問題が生じ始めた。
 それは人間は一緒に行動している人間の色に染まっていくということ。

 ルーファウスは徐々にソフィアがやっていることを肯定し始め、同じように彼に仕える者たちに意地悪をし始める。

「……これを下げてくれ」
「かしこまりました」

 食事を終えたルーファウスは、食器を侍女に下げさせていた。
 だが彼女が食器を手にした瞬間、わざと足を引っ掛ける。

 食堂に響き渡る皿が割れる音。

「申し訳ございません……」

 侍女は戸惑いながら割れた食器を片付ける。

「…………」

 足元で必死になる侍女を見て、ルーファウスは快感を得ていた。
 ソフィアと同じことをし、同じように愉しみを覚えてしまっていたのだ。

 類は友を呼ぶ、と言うが、まさにルーファウスの持つ邪な本性がソフィアを呼び込んでしまったのだ。
 それからは堰を切ったかのように、ルーファウスの持つ悪性が顔を現す。

 ソフィアが部屋で少しミスした侍女を罵っているのを見て、彼女と同じ様に罵るルーファウス。

「お前みたいなゴミに金を出していると考えると悲しくなるよ。まさに給金泥棒だな」
「本当。生きていて恥ずかしくないのかしら?」

 みるみるうちにルーファウスの評判は悪くなっていき、気が付けば屋敷内の全ての人々は彼らには憎悪感を抱いていた。

 だがそれでもルーファウスは止まらない。
 既に彼の心には悪魔が住みついてしまっていたのだから……
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