婚約者は私より親友を選ぶようです。親友の身代わりに精霊王の生贄になった私は幸せになり、国は滅ぶようです。

13

　ルビアがイクスと出逢って二ヶ月が経過しようとしていた。

　レイはラースと結婚し、次期王妃として不自由のない暮らしを満喫している。
　彼女の頭の中からは、すでにルビアの存在は消えていた。
　もうすでに過去のことなのだ。
　彼女を裏切った事実は、もう彼女の中では無かったことになっていた。

　レイは自分の優れた容姿、そして大人しい女性の強さというのを把握している。
　自分を守ろうと躍起になる男性たち。
　男性からモテる術を自然に身につけていたのだ。
　
　対照的にルビアは、同じ女性であるレイをも守ろうとする優しさと強さを兼ね備えた女性。
　そんな彼女はモテるわけがない。
　子供の頃からの友人であるルビアを、いつも心の中で見下していたレイ。
　
　将来こいつは誰のもとにも嫁ぐことができず、生贄になるんだろうな。

　そんな風に考えていたレイ。
　自分はそれなりに条件のいい男のもとに嫁ぎ、良い生活をするのだ。
　
　だがそんなレイに、信じられないような出来事が起きた。
　それはルビアが、皇子であるラースと婚約したことだ。

　ラースという男は、女の見る目がないのか？
　何故ルビアなんて選んでしまったの？

　それなりの条件の男性を求めていたレイであったが、ルビアから皇子と婚約したという話を聞き、自分も同条件の男と結婚しなければという感情が爆発する。

　次期国王以上の好条件の男なんて……いるはずがない。
　となれば、次期国王と結婚する以外に選択肢はないだろう。

「……ルビアから奪うか」

　自室のベッドに座り、そんなことをポツリと漏らすレイ。
　　
　そして彼女の思惑通り、事は運んだ。
　ルビアに相談したら、彼女はラースに相談するだろう。
　私はごく自然に彼を紹介してもらえるというわけだ。

　後はルビアからラースを奪うなんて、蟻を踏み潰すよりも簡単なこと。
　だって私は男性から好かれる、守ってあげたいと思われる女性なのだから。
　皇子だと言ったところで、他の有象無象の男たちと同じだろう。
　私が誘惑すれば、コロッといくに違いない。

　レイはラースと出逢ったのをいいことに、一人で彼に会いに行き、誘惑をした。
　ラースはレイの手の平で転がるように、コロッといってしまう。

　だがそれでも、一度決めた婚約者を捨てることなどできるものか。
　そう考えるラースに苛立ちを覚えたレイは、ルビアに関する嘘を色々と口にした。
　その全てを信じたラースはルビアとの婚約を破棄し、レイと結婚をしたのだ。

　全てはレイの狙い通り。
　しかし彼女は自分がやった過去を忘れ、輝かしい現在を生きている。
　豪華で煌びやかな毎日。
　贅沢過ぎる毎日を、幸せに暮らしているのであった。