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「あの……」
おずおずとその場に現れたのはラース様であった。
だが彼は発狂するレイを見て、慌てた様子で彼女のもとに駆け付ける。
「レイ……レイ、もうやめてくれ……お前が何かする度に僕たちは不幸になっていくんだ。だから頼む、もうやめてくれ」
「でもでもでもでも! ルビアが幸せなのは許せない! 私はこいつより幸せにならないといけないのよ!」
「レイ……」
ラース様は悲壮な表情で彼女を見つめ、そして後ろにいる配下の人に目で合図を送る。
するとその人たちは両脇からレイの腕を取り、どこかへ連れ去ってしまった。
「…………」
レイがいなくなったことにより、周囲は静かになる。
周りにいた人たちは、黙ってラース様を見据えていた。
「……精霊王。この度は私の妻が取り返しのつかないことをしてしまい、申し訳ございませんでした」
イクス様に頭を下げるラース様。
「もう私の国は終わりです……勝手な話ではありますが今回の無礼は目をつむっていただけないでしょうか?」
「私は構わないよ。最初から私は何もしていないのだからね。ただ問題は精霊たちさ」
「せ、精霊たち……ですか?」
「そういうことだよ。僕らはあんたらを許せないんだよ!」
突然レッドがラース様に飛び掛かり、顔を蹴り上げる。
「うわああぁ!」
鼻血を吹き出し、その場に倒れるラース様。
レッドは犬歯をむき出しにして、ラース様を睨みつける。
「イクス様のことを怒ってるのはもちろんだけど、あんた、ルビア様の心を随分と傷つけたよな?」
「い、いや……それは」
「言い訳なんて聞いてない! 僕らはその事実を知っていて、その事実に怒っているんだからな!」
倒れているラース様を何度も足蹴にするレッド。
ラース様は痛みとレッドの迫力に怯えるばかり。
「レッド。落ち着くんだ」
「くっ……」
微笑を浮かべたままレッドを制するイクス様。
ラース様は完全に恐れをなし、ガタガタと震えている。
「君たちはこれから先一生、精霊たちの加護を失ったままだろう。行く先々で自然の驚異が襲い掛かる」
「そ、そんな……お願いでございます。どうか、どうかご慈悲を……」
ラース様は涙を浮かべてイクス様に謝罪する。
イクス様はため息をつき、そして冷たい口調で彼に言う。
「……私だってルビアの件には頭にきているんだ」
イクス様の言葉を聞いたラース様はハッとし、私の方に向き、地面に両手両膝をつき、肩を震わせながら謝罪の言葉を口にした。
「ルビア……いえ、ルビア様! お願いです……全て俺が悪かった……あなた様の心を傷つけたことを誠心誠意謝ります! だからお願いです、許して下さい!」
ラース様はおいおい涙を流し頭を地面にこすりつけ、全身で懇願している。
「許すわけ無いだろ、バーカ!」
「げふっ!!」
イクス様の隙を狙って、レッドがラース様をまた蹴り上げる。
その一撃でラース様は気を失ってしまったらしく、イクス様は呆れてふっと短く笑う。
「彼を許すかどうかは、これからの彼の人生を観察しながら決めるとしよう」
その時のイクス様は、悪戯っ子のようなそんな笑みをしていた。
これはどうやら、イクス様は許す気が無いようだ。
イクス様は苦笑いする私の肩を抱き、森の方へと歩き出す。
「これで過去のことは全て終わりだ。これからは私たちの未来……私たちの幸せだけを考えて暮らしていこう」
「はい、イクス様」
おずおずとその場に現れたのはラース様であった。
だが彼は発狂するレイを見て、慌てた様子で彼女のもとに駆け付ける。
「レイ……レイ、もうやめてくれ……お前が何かする度に僕たちは不幸になっていくんだ。だから頼む、もうやめてくれ」
「でもでもでもでも! ルビアが幸せなのは許せない! 私はこいつより幸せにならないといけないのよ!」
「レイ……」
ラース様は悲壮な表情で彼女を見つめ、そして後ろにいる配下の人に目で合図を送る。
するとその人たちは両脇からレイの腕を取り、どこかへ連れ去ってしまった。
「…………」
レイがいなくなったことにより、周囲は静かになる。
周りにいた人たちは、黙ってラース様を見据えていた。
「……精霊王。この度は私の妻が取り返しのつかないことをしてしまい、申し訳ございませんでした」
イクス様に頭を下げるラース様。
「もう私の国は終わりです……勝手な話ではありますが今回の無礼は目をつむっていただけないでしょうか?」
「私は構わないよ。最初から私は何もしていないのだからね。ただ問題は精霊たちさ」
「せ、精霊たち……ですか?」
「そういうことだよ。僕らはあんたらを許せないんだよ!」
突然レッドがラース様に飛び掛かり、顔を蹴り上げる。
「うわああぁ!」
鼻血を吹き出し、その場に倒れるラース様。
レッドは犬歯をむき出しにして、ラース様を睨みつける。
「イクス様のことを怒ってるのはもちろんだけど、あんた、ルビア様の心を随分と傷つけたよな?」
「い、いや……それは」
「言い訳なんて聞いてない! 僕らはその事実を知っていて、その事実に怒っているんだからな!」
倒れているラース様を何度も足蹴にするレッド。
ラース様は痛みとレッドの迫力に怯えるばかり。
「レッド。落ち着くんだ」
「くっ……」
微笑を浮かべたままレッドを制するイクス様。
ラース様は完全に恐れをなし、ガタガタと震えている。
「君たちはこれから先一生、精霊たちの加護を失ったままだろう。行く先々で自然の驚異が襲い掛かる」
「そ、そんな……お願いでございます。どうか、どうかご慈悲を……」
ラース様は涙を浮かべてイクス様に謝罪する。
イクス様はため息をつき、そして冷たい口調で彼に言う。
「……私だってルビアの件には頭にきているんだ」
イクス様の言葉を聞いたラース様はハッとし、私の方に向き、地面に両手両膝をつき、肩を震わせながら謝罪の言葉を口にした。
「ルビア……いえ、ルビア様! お願いです……全て俺が悪かった……あなた様の心を傷つけたことを誠心誠意謝ります! だからお願いです、許して下さい!」
ラース様はおいおい涙を流し頭を地面にこすりつけ、全身で懇願している。
「許すわけ無いだろ、バーカ!」
「げふっ!!」
イクス様の隙を狙って、レッドがラース様をまた蹴り上げる。
その一撃でラース様は気を失ってしまったらしく、イクス様は呆れてふっと短く笑う。
「彼を許すかどうかは、これからの彼の人生を観察しながら決めるとしよう」
その時のイクス様は、悪戯っ子のようなそんな笑みをしていた。
これはどうやら、イクス様は許す気が無いようだ。
イクス様は苦笑いする私の肩を抱き、森の方へと歩き出す。
「これで過去のことは全て終わりだ。これからは私たちの未来……私たちの幸せだけを考えて暮らしていこう」
「はい、イクス様」
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