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第1章 婚約破棄の慰謝料が石ころだった件。
【4.落ち度はないと言い張る元婚約者】
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それからしばらくして、リリエッタの邸をアーゼルが訪れた。
アーゼルはおよそ謝罪などとは程遠いラフな格好をしており、もうその姿を見ただけでリリエッタはアーゼルの目的が「自分とこに落ち度はないから」と伝えるだけのものだということが分かった。
リリエッタは顔を曇らせる。
しかし、アーゼルはお構いなしだった。
そしてリリエッタにとっては衝撃の言葉を言った。
「リリエッタ。おまえは嘘をついているね。おまえの家に使者として行ったジャンに確認を取ったのだが、『慰謝料の木箱を開ける場に確かに立ち会ったが、中にはお金がちゃんと入っていた』と言っていたぞ」
「え? そんなバカな! 一緒に見ましたけど! 石ころの詰められた木箱を……」
リリエッタが目を見開いて抗議をすると、アーゼルの方がうんざりした顔をした。
「だからそれは嘘だ。うちの者は金が入っているのを見ている。つまり受け取っていないというのはおまえの嘘。本当あんまり変な言いがかりをつけてくれるなよ」
「言いがかり? 嘘じゃないんですけど!」
「そうは言われてもね。ジャンが金を見たと言っている以上……。ま、そーゆーことだから」
「帳簿は払ったことになっているんすか?」
「払ったと執事は言っている」
「帳簿は? 執事が管理していますよね? 帳簿はどうなっているんです?」
リリエッタが食い下がって具体的に聞くと、アーゼルは少し気まずそうな顔をした。
「……」
なんか変だなと思ったリリエッタは詰め寄った。
「ちゃんと答えてください」
するとアーゼルは額に手をやり困惑の表情で一言答えた。
「燃えた。だから手元にない」
「は? え? ええっと、燃えた? それってどういうことですか?」
リリエッタは驚いて聞き返した。
「まあ大騒ぎではあったが、大きな火事じゃなかったから大丈夫だ」
「火事!? ……あの、大丈夫でしたか?」
大きな火事ではないとはいえ、家で火事が起こったというのは大事件に違いない。
リリエッタは思わず心配になって聞いた。
すると、リリエッタに心配されて、アーゼルが少し居心地悪そうな顔で答えた。
「あ、いや、本当にたいした火事ではなかったんだ。一部屋……というか、部屋の一区画が燃えただけだ。そんなに大事ではない。すぐに片付いた」
一区画?
リリエッタはその言い方に含みを感じてハッとした。
「え、ちょっと。それって。一区画ですって?」
「ああ。……棚がね」
「まさか、帳簿のあった棚が、とかですか?」
「そう」
「それって! その火事、慰謝料を盗んだ犯人が何か隠蔽しようとしてません?」
リリエッタは思わず叫んでしまった。
憶測で物を言うのは危険だ。しかし、こんな偶然は疑っても仕方がない。慰謝料が消え、慰謝料が入っていないのを見たはずの使者は「慰謝料は入っていた」と嘘を言い、帳簿を調べろと言ったとたんに帳簿が燃える――。それって……!
しかし、アーゼルはその考えには賛成しなかった。
「犯人って何のことだ! 慰謝料はうちは確かにおまえに届けた。だから犯罪ではないわけで」
「いやいや怪しすぎますよ! 帳簿の棚だけってそんなの誰かがわざと燃やしたんでしょう? そんな都合よく帳簿だけ燃えます? で、どうして帳簿を燃やすんです? それってやましいことがあるからですよね?」
「何の言いがかりだ!」
アーゼルが苦虫を嚙み潰したような顔で腕組みした。
「今回の慰謝料の件だけではなく、帳簿は他にもいろいろ改竄されていたかもしれませんよ、資産はすぐにお調べになった方がいいのでは!?」
「まあ、それはさせている。帳簿は新しく作り直す必要があるし、いったん整理しようと」
「それから、怖いのは身内にお金をちょろまかしていた人がいるかもってところですよ。もちろん資産が全てちゃんとしているなら問題ありません。でも、もし、資産が大きく減っていた場合。犯人はあなたの身近にいるかもってことですよね。それは恐ろしいことです……。一番怪しいのは執事ですし、彼がどこまで把握していたか……」
そう言いながら、リリエッタは「それに、まずはあの使者だわ」と心の中で思った。
リリエッタやリリエッタの父も同席する中で、石ころを詰められた木箱を見ているのに、それなのにちゃんとお金が入っていたというなんてどう考えてもおかしい!
そんな嘘を言う必要はどこにあるの?
使者が木箱をすり替えるなどして盗んだのか。それとも、犯行はもっと前に起こっていて使者はただ犯人を庇っているのか――それなら使者は犯人の仲間ということになる。それとも、犯人に脅されたか……。考えられる選択肢は色々ある。
どちらにせよ、使者は犯人への手がかりになるはずだった。だからリリエッタは「彼の口を割らすのが近道かもしれないな」と思った。
リリエッタはすぐさま人を呼び、アーゼルに気づかれないように、こっそりワートン公爵家のジャン・ワートンを連れてくるように命じた。
アーゼルはおよそ謝罪などとは程遠いラフな格好をしており、もうその姿を見ただけでリリエッタはアーゼルの目的が「自分とこに落ち度はないから」と伝えるだけのものだということが分かった。
リリエッタは顔を曇らせる。
しかし、アーゼルはお構いなしだった。
そしてリリエッタにとっては衝撃の言葉を言った。
「リリエッタ。おまえは嘘をついているね。おまえの家に使者として行ったジャンに確認を取ったのだが、『慰謝料の木箱を開ける場に確かに立ち会ったが、中にはお金がちゃんと入っていた』と言っていたぞ」
「え? そんなバカな! 一緒に見ましたけど! 石ころの詰められた木箱を……」
リリエッタが目を見開いて抗議をすると、アーゼルの方がうんざりした顔をした。
「だからそれは嘘だ。うちの者は金が入っているのを見ている。つまり受け取っていないというのはおまえの嘘。本当あんまり変な言いがかりをつけてくれるなよ」
「言いがかり? 嘘じゃないんですけど!」
「そうは言われてもね。ジャンが金を見たと言っている以上……。ま、そーゆーことだから」
「帳簿は払ったことになっているんすか?」
「払ったと執事は言っている」
「帳簿は? 執事が管理していますよね? 帳簿はどうなっているんです?」
リリエッタが食い下がって具体的に聞くと、アーゼルは少し気まずそうな顔をした。
「……」
なんか変だなと思ったリリエッタは詰め寄った。
「ちゃんと答えてください」
するとアーゼルは額に手をやり困惑の表情で一言答えた。
「燃えた。だから手元にない」
「は? え? ええっと、燃えた? それってどういうことですか?」
リリエッタは驚いて聞き返した。
「まあ大騒ぎではあったが、大きな火事じゃなかったから大丈夫だ」
「火事!? ……あの、大丈夫でしたか?」
大きな火事ではないとはいえ、家で火事が起こったというのは大事件に違いない。
リリエッタは思わず心配になって聞いた。
すると、リリエッタに心配されて、アーゼルが少し居心地悪そうな顔で答えた。
「あ、いや、本当にたいした火事ではなかったんだ。一部屋……というか、部屋の一区画が燃えただけだ。そんなに大事ではない。すぐに片付いた」
一区画?
リリエッタはその言い方に含みを感じてハッとした。
「え、ちょっと。それって。一区画ですって?」
「ああ。……棚がね」
「まさか、帳簿のあった棚が、とかですか?」
「そう」
「それって! その火事、慰謝料を盗んだ犯人が何か隠蔽しようとしてません?」
リリエッタは思わず叫んでしまった。
憶測で物を言うのは危険だ。しかし、こんな偶然は疑っても仕方がない。慰謝料が消え、慰謝料が入っていないのを見たはずの使者は「慰謝料は入っていた」と嘘を言い、帳簿を調べろと言ったとたんに帳簿が燃える――。それって……!
しかし、アーゼルはその考えには賛成しなかった。
「犯人って何のことだ! 慰謝料はうちは確かにおまえに届けた。だから犯罪ではないわけで」
「いやいや怪しすぎますよ! 帳簿の棚だけってそんなの誰かがわざと燃やしたんでしょう? そんな都合よく帳簿だけ燃えます? で、どうして帳簿を燃やすんです? それってやましいことがあるからですよね?」
「何の言いがかりだ!」
アーゼルが苦虫を嚙み潰したような顔で腕組みした。
「今回の慰謝料の件だけではなく、帳簿は他にもいろいろ改竄されていたかもしれませんよ、資産はすぐにお調べになった方がいいのでは!?」
「まあ、それはさせている。帳簿は新しく作り直す必要があるし、いったん整理しようと」
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使者が木箱をすり替えるなどして盗んだのか。それとも、犯行はもっと前に起こっていて使者はただ犯人を庇っているのか――それなら使者は犯人の仲間ということになる。それとも、犯人に脅されたか……。考えられる選択肢は色々ある。
どちらにせよ、使者は犯人への手がかりになるはずだった。だからリリエッタは「彼の口を割らすのが近道かもしれないな」と思った。
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