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第1章 婚約破棄の慰謝料が石ころだった件。
【8.告白】
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アーゼルの執事は、実はあちらこちらで似たような金銭問題を引き起こしており、波紋を広げていた。
アーゼルの管理する財産も大きく減っており、この問題は著しくアーゼルの評価を下げた。
当然のようにアーゼルは廃嫡され、弟のルイスが嗣子に立てられることになった。
アーゼルの執事は、王都の地下犯罪組織の全容に迫るべく、その素性や普段の交友関係、お金の流れなど徹底的に取り調べを受けていると聞く。
リリエッタのところには、謝罪の気持ちでいっぱいのワートン公爵夫人からきっちり慰謝料相当分の金銭が送られてきた。
エミリーの実家のスピンク男爵家も、エミリーが王都の地下犯罪組織の問題に間接的に関与してしまっていることを問題視し、これ以上巻き込まれるのを避けるため、速やかに多額の慰謝料を寄越してきた。これでアーゼル・ワートンや消えたリリエッタの慰謝料、王都の地下犯罪組織の問題とは手を切らせてもらいたいというのがありありと伝わって来た。
また、エミリーを好き勝手にやらせているとどんな事件に巻き込まれるか分からないし、名門ワートン公爵家にも睨まれるかもしれないということで、スピンク男爵家はエミリーを田舎の堅実な領主の後家にやってしまうことにした。
エミリーは泣いて嫌がったが、保身一辺倒のスピンク男爵はエミリーには厳しい態度を取ると心に決めていた。
よってエミリーの結婚は、彼女が望む華やかな結婚とは程遠いものとなったのだった。
さて一方で、慰謝料の謎が解けたリリエッタの方は、これでアーゼルとのことは完全に整理がついたと嬉しく思っていた。
リリエッタは、今日もなんだかんだ心配して邸まで様子を見に来てくれたヘルベルトに優しい笑顔を向ける。
「ありがとうヘルベルト」
「どういたしまして」
「……」
リリエッタは胸がいっぱいになっていた。
ヘルベルトを見ると湧き上がるこの気持ちは――?
ヘルベルトは変な人だからとこれまで自分を騙してきたけど……。
リリエッタが何も言わずにヘルベルトをじーっと見つめているので、ヘルベルトは「何か様子が変だ」と思ったようだった。しかし相変わらずのヘルベルトは、決してそうとは聞いてこない。
「えーっと。その顔は何かな。俺と旅行行きたい感じかな? それともケーキバイキングに行きたい感じかな? よし、ケーキバイキングなら今すぐ連れて行ってあげれるよ、今から行こうかー」
「なんで急にケーキバイキングなのよ! もう。本当何でも唐突なんだから」
「でもケーキバイキング好きだよね? 寝言でもケーキバイキングって言ってた」
「言ってないし。ヘルベルトの前で寝たことないし! ダイエットしてるし!」
寝言とか言われてリリエッタが赤くなり慌てて全否定すると、ヘルベルトは「ははは」と笑った。
「ダイエット中なんだ、じゃあなおのこと祝勝会にぴったり。背徳感に勝るスパイスはないからね、最高のケーキになると思う。ドーパミンめっちゃ出るって」
「ドーパミン……?」
「で、その後はめっちゃ後悔して、ピタッと甘いものやめれるってうちの弟が言ってた」
「もー。そんなこと言わないでしょ、10歳の男の子が」
リリエッタが呆れてツッコむと、ヘルベルトはツッコまれたことが嬉しいらしくにこっとした。
「じゃ、おからクッキーにシュガーレスティーで乾杯する? 付き合うよ、シュガーレス。なんとなく物足りない祝勝会になるかもしれないけど」
「もう、どうせこの会話、ケーキバイキング行くまで続くんでしょ? 行くわよ、ケーキバイキング。正直言うと、最初っから行きたい気分でした!」
「ははは、ほらみろ。問題解決した時のケーキは格別。大丈夫、今日一日くらいダイエットは気にするな。パーッと行こうよ」
ヘルベルトが、さあ行くぞとばかりに、部屋の出入り口の方へくるりと体を向けたとき。
「ヘルベルト……」
リリエッタはいきなりぎゅっとヘルベルトの背に抱きついた
「おおう!? どーしたリリエッタ。鼻水とか俺の背中で拭きたくなった? いーよ貸してやる、俺の背中は広いから拭きがいがあるぞ。頼りがいあるだろ?」
「ばか……」
「……」
ヘルベルトはリリエッタの腕に手を重ね、そっと体をずらすとリリエッタに真正面に向き合った。
リリエッタは恥ずかしくなってヘルベルトの胸に顔を埋めた。
もう、いきなり何やってんだ私!
こんな私のことヘルベルトはどう思うだろう? 優しいヘルベルトのことだから「キモい」とかは思わないだろうけど、でも「何だ? らしくないな」とかは思うかも。
私もこんな抱きつくつもりはなかったんだけど……でも、なんか体が勝手に。そう、勝手に……。
リリエッタは言葉にならない不思議な感情が胸に込み上げてきて、きゅっと背を丸めた。
すると、それに気付いたヘルベルトがそっとリリエッタの背を撫撫でてくれた。
「リリエッタ。いいよ、泣いても」
リリエッタはなぜ涙が出てくるのか分からなかった。
アーゼルとの関係の終わりにほっとした――。そして、ヘルベルトの優しさと献身が身近にある喜び――。
ヘルベルトはいつも。私に寄り添って付き合ってくれるのだ。何もはっきりとは言わないけど。
「ヘルベルト。私、いいんだ……」
「何が? ダイエットが?」
ヘルベルトがとぼけて言うので、リリエッタは泣きながら笑った。
すると、ヘルベルトがなんだか言葉に詰まりながら、
「しょ、正直、リリエッタはダイエットなんかいらないよ。もう十分、か、可愛いからさ。あ、可愛いって、小さいって意味じゃないよ」
と言った。
「うん」
リリエッタが心の底から満たされる気持ちでヘルベルトの言葉を聞いてると、ヘルベルトは少し緊張が和らいだようで、さっきよりは滑らかな口調で続けた。
「リリエッタは勇気もあるし、心もキレイ。自分に誇りをもって大丈夫」
「うん」
「アーゼル殿がリリエッタを拒否しても、リリエッタのこと好きな人はいっぱいいる。大丈夫。皆に愛されてる」
リリエッタは嬉しくてまた涙が出てきた。
「うん。ヘルベルトも?」
「うん。俺も愛されてる」
またヘルベルトがとぼけて言うので、リリエッタは泣きながら笑った。
「なんでそうなるの。ヘルベルトも私のこと好き?ってこと」
するとヘルベルトは、ほんの一瞬だけ間を空けてから、力強く肯いた。
「うん!」
それからヘルベルトはリリエッタの髪を撫でた。
「俺たち付き合う?」
リリエッタは今度こそ胸がいっぱいになって、ぎゅっとヘルベルトに抱きついた。
「うん。いつまでもそばにいてほしい」
※
ヘルベルトに無理矢理言わせちゃったかなと思わなくもないけど。
付き合うとなったらヘルベルトは毎日顔を見せてくれるようになった。私が会いたがるから時間を作ってくれる。
ヘルベルトはとてもセンスの良い指輪を真面目な顔でくれたが、私が「愛してる?」と聞くと真っ赤になって「アーイアイ」と鼻歌を歌った。
二人で言葉もなくゆっくり座っているときに、ふと指で掌にハートマークを描いてくれたりする。
喋らせるといつも適当でふざけたことばっかりの人だけど、私はとても幸せ。
今度婚約もしてもらおうと思っている。
(第1章 終わり・第2章に続きます)
アーゼルの管理する財産も大きく減っており、この問題は著しくアーゼルの評価を下げた。
当然のようにアーゼルは廃嫡され、弟のルイスが嗣子に立てられることになった。
アーゼルの執事は、王都の地下犯罪組織の全容に迫るべく、その素性や普段の交友関係、お金の流れなど徹底的に取り調べを受けていると聞く。
リリエッタのところには、謝罪の気持ちでいっぱいのワートン公爵夫人からきっちり慰謝料相当分の金銭が送られてきた。
エミリーの実家のスピンク男爵家も、エミリーが王都の地下犯罪組織の問題に間接的に関与してしまっていることを問題視し、これ以上巻き込まれるのを避けるため、速やかに多額の慰謝料を寄越してきた。これでアーゼル・ワートンや消えたリリエッタの慰謝料、王都の地下犯罪組織の問題とは手を切らせてもらいたいというのがありありと伝わって来た。
また、エミリーを好き勝手にやらせているとどんな事件に巻き込まれるか分からないし、名門ワートン公爵家にも睨まれるかもしれないということで、スピンク男爵家はエミリーを田舎の堅実な領主の後家にやってしまうことにした。
エミリーは泣いて嫌がったが、保身一辺倒のスピンク男爵はエミリーには厳しい態度を取ると心に決めていた。
よってエミリーの結婚は、彼女が望む華やかな結婚とは程遠いものとなったのだった。
さて一方で、慰謝料の謎が解けたリリエッタの方は、これでアーゼルとのことは完全に整理がついたと嬉しく思っていた。
リリエッタは、今日もなんだかんだ心配して邸まで様子を見に来てくれたヘルベルトに優しい笑顔を向ける。
「ありがとうヘルベルト」
「どういたしまして」
「……」
リリエッタは胸がいっぱいになっていた。
ヘルベルトを見ると湧き上がるこの気持ちは――?
ヘルベルトは変な人だからとこれまで自分を騙してきたけど……。
リリエッタが何も言わずにヘルベルトをじーっと見つめているので、ヘルベルトは「何か様子が変だ」と思ったようだった。しかし相変わらずのヘルベルトは、決してそうとは聞いてこない。
「えーっと。その顔は何かな。俺と旅行行きたい感じかな? それともケーキバイキングに行きたい感じかな? よし、ケーキバイキングなら今すぐ連れて行ってあげれるよ、今から行こうかー」
「なんで急にケーキバイキングなのよ! もう。本当何でも唐突なんだから」
「でもケーキバイキング好きだよね? 寝言でもケーキバイキングって言ってた」
「言ってないし。ヘルベルトの前で寝たことないし! ダイエットしてるし!」
寝言とか言われてリリエッタが赤くなり慌てて全否定すると、ヘルベルトは「ははは」と笑った。
「ダイエット中なんだ、じゃあなおのこと祝勝会にぴったり。背徳感に勝るスパイスはないからね、最高のケーキになると思う。ドーパミンめっちゃ出るって」
「ドーパミン……?」
「で、その後はめっちゃ後悔して、ピタッと甘いものやめれるってうちの弟が言ってた」
「もー。そんなこと言わないでしょ、10歳の男の子が」
リリエッタが呆れてツッコむと、ヘルベルトはツッコまれたことが嬉しいらしくにこっとした。
「じゃ、おからクッキーにシュガーレスティーで乾杯する? 付き合うよ、シュガーレス。なんとなく物足りない祝勝会になるかもしれないけど」
「もう、どうせこの会話、ケーキバイキング行くまで続くんでしょ? 行くわよ、ケーキバイキング。正直言うと、最初っから行きたい気分でした!」
「ははは、ほらみろ。問題解決した時のケーキは格別。大丈夫、今日一日くらいダイエットは気にするな。パーッと行こうよ」
ヘルベルトが、さあ行くぞとばかりに、部屋の出入り口の方へくるりと体を向けたとき。
「ヘルベルト……」
リリエッタはいきなりぎゅっとヘルベルトの背に抱きついた
「おおう!? どーしたリリエッタ。鼻水とか俺の背中で拭きたくなった? いーよ貸してやる、俺の背中は広いから拭きがいがあるぞ。頼りがいあるだろ?」
「ばか……」
「……」
ヘルベルトはリリエッタの腕に手を重ね、そっと体をずらすとリリエッタに真正面に向き合った。
リリエッタは恥ずかしくなってヘルベルトの胸に顔を埋めた。
もう、いきなり何やってんだ私!
こんな私のことヘルベルトはどう思うだろう? 優しいヘルベルトのことだから「キモい」とかは思わないだろうけど、でも「何だ? らしくないな」とかは思うかも。
私もこんな抱きつくつもりはなかったんだけど……でも、なんか体が勝手に。そう、勝手に……。
リリエッタは言葉にならない不思議な感情が胸に込み上げてきて、きゅっと背を丸めた。
すると、それに気付いたヘルベルトがそっとリリエッタの背を撫撫でてくれた。
「リリエッタ。いいよ、泣いても」
リリエッタはなぜ涙が出てくるのか分からなかった。
アーゼルとの関係の終わりにほっとした――。そして、ヘルベルトの優しさと献身が身近にある喜び――。
ヘルベルトはいつも。私に寄り添って付き合ってくれるのだ。何もはっきりとは言わないけど。
「ヘルベルト。私、いいんだ……」
「何が? ダイエットが?」
ヘルベルトがとぼけて言うので、リリエッタは泣きながら笑った。
すると、ヘルベルトがなんだか言葉に詰まりながら、
「しょ、正直、リリエッタはダイエットなんかいらないよ。もう十分、か、可愛いからさ。あ、可愛いって、小さいって意味じゃないよ」
と言った。
「うん」
リリエッタが心の底から満たされる気持ちでヘルベルトの言葉を聞いてると、ヘルベルトは少し緊張が和らいだようで、さっきよりは滑らかな口調で続けた。
「リリエッタは勇気もあるし、心もキレイ。自分に誇りをもって大丈夫」
「うん」
「アーゼル殿がリリエッタを拒否しても、リリエッタのこと好きな人はいっぱいいる。大丈夫。皆に愛されてる」
リリエッタは嬉しくてまた涙が出てきた。
「うん。ヘルベルトも?」
「うん。俺も愛されてる」
またヘルベルトがとぼけて言うので、リリエッタは泣きながら笑った。
「なんでそうなるの。ヘルベルトも私のこと好き?ってこと」
するとヘルベルトは、ほんの一瞬だけ間を空けてから、力強く肯いた。
「うん!」
それからヘルベルトはリリエッタの髪を撫でた。
「俺たち付き合う?」
リリエッタは今度こそ胸がいっぱいになって、ぎゅっとヘルベルトに抱きついた。
「うん。いつまでもそばにいてほしい」
※
ヘルベルトに無理矢理言わせちゃったかなと思わなくもないけど。
付き合うとなったらヘルベルトは毎日顔を見せてくれるようになった。私が会いたがるから時間を作ってくれる。
ヘルベルトはとてもセンスの良い指輪を真面目な顔でくれたが、私が「愛してる?」と聞くと真っ赤になって「アーイアイ」と鼻歌を歌った。
二人で言葉もなくゆっくり座っているときに、ふと指で掌にハートマークを描いてくれたりする。
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今度婚約もしてもらおうと思っている。
(第1章 終わり・第2章に続きます)
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