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第3話 アリVSアキラ
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何者も寄せ付けないような黒光りする体。細くしなやかに見えるがその実、しっかりと大地を踏み抜く力のある六本の脚、幹のような太さを持つ胴体、口元には噛み砕けないものはないと言わんばかりの強靭なアゴ。そんな風貌をした生物がそこにはいた。
「デケー! あれはアリか。まるで怪物みたいだ。」
だが怖がっている暇などない。うまく体の中に入りさえすれば増殖なりなんなりして生き延びれるのだ。
こうしてアリと彰の戦いは始まった。
まず第一の目標としてあいつの体にくっつかないといけない。あいつに乗らないと増殖もクソもないからだ。
そして見た感じアリは基本、体全体が頑強な皮膚に覆われている。おそらく皮膚の上では増殖はできないだろう。だから口の方までいき、頑丈な皮膚に覆われていないと思われる口の中で増殖すればいいだろう。
そうと決まればまずは体めがけて飛ぶだけだ。
「そいやー!」
「カサカサ」
ポフッ
「せいやー」
「カサカサッカサカサッ」
ポフッ
乗れない。
思った以上に移動速度が速い。餌を探すのに必死だからかは分からないがすごく速い。
そういえば子供の頃よく捕まえて遊んでたけど、あの俊敏な動きに幾度となく翻弄されたっけな。
そう思うと体が小さい今、なおさら速く感じるのも仕方がないか。
ここは相手の動きに合わせて飛ばないといけない。
しばらく観察してみたらある程度規則的な動き方をしているのがわかった。
それなら次に移動する場所を予測して飛べば乗ることができるだろう。
体が少し破れて変な液体まで出てるからここは早々に決めたいところだ。
右、右、そこの次はそこか!
俺はタイミングを見計らい空高く飛び上がった。綺麗な放物線を描いてアリめがけて落下していった。
ペチョッ
「よし、よし乗った。乗ったぞ。アリに乗ったどぉぉ」
幸運にも一発で乗ることが出来た。
アリは俺の存在を微塵も認知できていないのか、特に変わった様子はない。まぁこんだけ小さければ気づくはずもないか。
あとは口の方までずれていければ...
「ビュオーーー」
またしても突如強い風が吹いてきた。せっかく乗ったアリから飛ばされる俺。
やっぱり俺は運がないらしい
「いーやーーーーッ」
叫び声をあげながら空へと飛ばされていった。
しばらく飛ばされ続けること数十分。
今回吹いてきた風は強く、まだまだ地面には落ちそうにない。
なんだかなぁ。
どうしてこうも俺はついてないのか。
たしかに前世では色々とついてなかったけども...
ついてなかったけども...
今世ぐらいはいいじゃないか!
何でこうも俺ばっか...
どうか神様お願いします。
今世ぐらいは幸せな人生をお願いします。
何でもしま......
パクッ
「!?」
今何が起きた?
俺が考え事してる間に何が起きた?
お祈りしてる間に何が起きた?
なにこのデジャヴ。また暗闇ですか。
「クアックアックアッ」
しかも今度はなんだか変な声が聞こえる。どういう状況だよこれ。
そして声が聞こえる度に周囲が明るくなる。
うーむ。この状況から考えるに......
空を飛んでた
↓
暗くなった
↓
鳴き声がする
↓
明るくなる
なるほどなるほど。
どう考えても飛んでる生き物の口の中だな。そうじゃないとかもうやってられない。
てか怒涛の展開すぎだろ。アリの次は飛行生物か。運があるんだかないんだか。
まぁとりあえず今度こそ絶好のチャンスだ。
こんなまたとない機会を逃すなんてどう考えてもありゃあしない。
そうと決まれば早速増殖してみようじゃないか。たぶんこの生き物はお亡くなりになってしまうかもしれないが俺だってまだまだ死ぬわけにはいかない。
「0歳児、池崎彰、初めての仲間作りいっきまーす!」
と言ったもののどうしようか。詳しい増殖の仕方までは知らんかった。てか気づいたら、得体の知れない白くて丸くて大きい奴らに囲まれてる気がするんですけど。
しかもなんかこっちに近づいてきてるような...
まぁ気のせいか。
それよりも増殖する方法は...
いやいやどう考えても気のせいじゃないよな。明らかに俺めがけて近づいてきてるよ。
そこへ1匹の白い物体がこっちめがけて飛びかかってきた。
「うぉう!いきなり飛びかかってくんなよ」
こいつら一体なんなんだよ。なんで俺を狙ってくるんだよ。なんか恨みでもあんのか。そんなことよりこれは一体全体どういう状況だよ。
誰か教えてくれ!というわけにもいかないし、自分で考えるしかない。
考えろ。考えろ。人間も動物も体の中の構造はあまり変わらないはずだ。昔習った記憶を思い出せ!
すっと頭の中にあることが思い浮かんだ。
あ、そうか。なんで思い至らなかったんだ。考えてみたらわかることじゃないか。これはたぶん免疫系だ。
実際はほとんど知識なんてないし当てずっぽうなんだけど、昔どっかの教養テレビで見たことがある。なんだったか、怪我をした時、体に入ってきたバイ菌を白血球が食べて溶かしてしまいます。そして血小板が手と手をつないで怪我の傷口を治します。
こんな感じだったか、まあ今は怪我とは全く関係ないけども。
兎にも角にも多分これはその白血球だろう。俺を異物だと判断して襲いかかって来てるんだろう。そしてヤツらに食べられたら俺は今度こそお釈迦だ。
と、ここまで分かっても解決策が見つからん。
そして一体いつまで追いかけっこしてればいいんだよ。存外追いかけてくるスピードは遅いから追いつかれることは無いとは思うが。
しかし、ずっとこうしてる訳にはいかないし...
解決策、解決策と。
「ん!?よく見たらこれなんだか見覚えがあるな」
自分の足元をよく見てみたら高校の頃、生物の教科書で見た細胞のようなものがいっぱいあるじゃあないか。
なんで気づかなかった...
この丸っぽい形の大きな膜の中に核だっけ?大きくて丸いやつ。まあその他にもなんかいっぱい丸っこいのとかがあるけども。
とりあえず俺の知識から照らし合わせるにこれは細胞でまちがいないだろう。
ここに逃げ込めばヤツらを撒けるかもしれないし、ついでに増殖もできるんじゃなかろうか。
たしか、受付のお姉さんがくれた説明書にも細胞に遺伝子を組み込んで増殖するとかなんとか書いてあった気がするし、多分細胞の中で増えるんだろう。
ということはこの中に入れば増殖できるってことだ。
そうと分かればさっそく浸入してみようじゃないか!
にゅるにゅる
チャポン
「あら、細胞の中には力を込めれば意外とスルリと入れるのね」
ヤツらはやっぱり細胞の中までは入ってこれないらしい。
中はというと液体でいっぱいだ。
周りには小さい粒やひらべったい形をした物体などが浮いている。
細胞の中は結構複雑に出来ているらしい。
とりあえず現在の俺はその中をゆっくりと漂ってる感じだ。しばらくすると核が見えてきた。
「よし核に近づいてきたな。って、うわっ。核の方に吸い込まれてる気がするんですけど!?
あれ、あれあれれ、おいおいおいおい。どんどん吸い込まれてってますけど大丈夫ですかねぇぇぇ。うぉぉぉお」
きゅぽん。
!?
一体何が起きたんだ。
ここは核の中か?
体は...特に異常はないみたいだ。
いやあせったぁ。
とりあえずなんともなくてよかった。
いきなり吸い込まれたら誰だってビビるでしょ。
俺じゃなかったら絶対にオシッコちびってるね。うん絶対。いや多分。もしかしたら少しだけ。
そんなくだらないことを考えている間にも目の前に俺に似た丸い形の物体が少しずつ出来上がり始めていた。
結局これが増殖でいいのか?俺っぽいのが出来てるし、いいんだよな。
おっ。一つできたみたいだ。時間にして三分くらいってところか。カップラーメンを作るぐらいの時間とはなかなか早い。と思ったら後ろに二つも同じのができてるじゃないか。
てことは三分に三つか。凄まじいな。
増やし方も分かったことだし、この調子で増やしていくか。
さて、次の場所へ行...
「ヨウ!」
「ヨウ!」
「ヨウ!」
「!?」
突然脳内に声のようなものが響いてきた。
まぁきっと気のせいに違いない。
さて次の場所へ行く...
「ヨウ!」
「ヨウ!」
「ヨウ!」
最後まで言わせてぇ!?
やっぱり後ろの方から声が聞こえる。
しかも三つ。
心当たりは...ある。
多分あれとあれとあれだよな。
でもそんなことあるだろうか。
「ヨウ!」
「ヨウ!」
「ヨウ!」
「うおっ。近い近い!」
振り返ると三体の白い物体がすぐ目の前に来ていた。
第三者がいたのなら怖いお兄ちゃん達にカツアゲされてるように見えるだろう。それぐらい近い。
「やっぱりお前達か。俺に俺に俺?」
「ソウダ!」
「ソウダ!」
「ソウダ!」
どうやら複製したこいつらは意思を持って喋ることができるらしい。若干バカっぽい気がするが。
「お前ら俺の言ってることは分かるか?」
「ワカル!」
「ワカル!」
「ワカル!」
どうやら俺の言ってる事も分かるらしい。そして意外にもコミュニケーションを出来るだけの知能もある。
これは俺の遺伝子を元に作ったことによって、遺伝子に内包されている知識、つまりは情報がこいつらに遺伝してるって事なのか?バカっぽい感じからすると完全には遺伝出来てないみたいだけども。詳しいことは分からんが理由付けしてみたらこんな感じだろう。
まぁ色々と確かめるのがいいだろう。
「では各自、自分の名前を言え!」
「・・・・・・・・」
さすがにわからないか。逆に「アキラ!」とか言ったら怖いしな。
「ではお前らに名前を授ける!左からアキ、キラ、ラキだ!返事は!」
「ハイ!」
「ホイ!」
「・・・」
「こら!ラキ!そっち向いてないで返事しなさい!」
「ホア!」
「ん!?」
これは返事なのだろうか。まあいい。
とりあえず言うことは聞いてくれるみたいだ。
「おれの名前はアキラだ!覚えておくように」
「アキラ!」
「アキラ!」
「アキラ!」
「よくできた!では点呼を始める!各自名前を呼ばれたら返事をするように!」
「アキ!」
「ハイ!」
「キラ!」
「ホイ!」
「ラキ!」
「ホア!」
「よし。ではお前らに任務を与える!
各自、同胞を増殖させよ!」
「ハイ!」
「ホイ!」
「ホア!」
そう言うと一斉に核を突き破り外へと出ていった。
俺は...疲れたし寝るとするか。
細胞の中ってフワフワ浮いてる感じで気持ちいいのよね。
こうして俺は意識をシャットアウトした。
「ハイ!」
「ホイ!」
「ホア!」
「ハイ!」
「ホイ!」
「ホア!」
「「「ナカマ!ナカマ!ハイ!ホイ!ホア!」」」
彰が寝ている間もアキ、キラ、ラキは休むことなくひたすら同胞を増やしていた。時間にして約一時間がたった頃、
ドスンッ
「うおあぁ!何事だ!?」
ものすごい揺れたぞ今。
まさか敵襲?なわけないよな。
「「「「「ようようようようようようようようようようようようようようようようようようあきらようようようようようようようようようようようようようようようようようほいようようようあきらようようようようようようようようようようようあきらようようようようようよほいうようようようようようようようようようようようようようよう」」」」」
うるせーうるせーうるせーうるせー!
一体何事だ!夏場の蝉の鳴き声以上だぞ!
ようようようようお前らはラッパーかよ。
しかも所々で俺の名前言うなよ...
って
「うるさーーーーーーーい!静かにしろ!」
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
おっ?静かになった。
言えばやめるのかよ。
とりあえず、このうるさい声は同胞達の声だろう。
それはいいとして、さっきの揺れはなんなんだ。状況確認のためにも一旦外へ出よう。
そういえば、白血球どもは...
どうやらいないみたいだ。
さぁ外へ出よう。
「うおっ。眩しっ。こいつぁ。死んでる?」
虹色に輝く羽根。気品を漂わせる羽根。繊細そうな羽根。なんと表現していいのか分からないがとにかく羽根が綺麗だ。どう考えても珍しい類の鳥だろう。一般人の俺から見ても綺麗な鳥だと思う。前世では見たことないような鳥だ。
そんな鳥が今俺の隣で静かに横たわっている。特別天然記念物とかじゃないよな?まあいいか。
実際に生き物を殺してしまったが意外と罪悪感はない。
鳥だからだろうか。
もし人間がこの世界に居たとして、この鳥と同じように殺してしまっても俺は平然としていられるのだろうか。
それはその時になってみないと分からないと思う。とりあえずは現状の確認だ。
「お前らしゅう~ご~う!!!」
我ながらちょっと間抜けな掛け声だったと思う。
「デケー! あれはアリか。まるで怪物みたいだ。」
だが怖がっている暇などない。うまく体の中に入りさえすれば増殖なりなんなりして生き延びれるのだ。
こうしてアリと彰の戦いは始まった。
まず第一の目標としてあいつの体にくっつかないといけない。あいつに乗らないと増殖もクソもないからだ。
そして見た感じアリは基本、体全体が頑強な皮膚に覆われている。おそらく皮膚の上では増殖はできないだろう。だから口の方までいき、頑丈な皮膚に覆われていないと思われる口の中で増殖すればいいだろう。
そうと決まればまずは体めがけて飛ぶだけだ。
「そいやー!」
「カサカサ」
ポフッ
「せいやー」
「カサカサッカサカサッ」
ポフッ
乗れない。
思った以上に移動速度が速い。餌を探すのに必死だからかは分からないがすごく速い。
そういえば子供の頃よく捕まえて遊んでたけど、あの俊敏な動きに幾度となく翻弄されたっけな。
そう思うと体が小さい今、なおさら速く感じるのも仕方がないか。
ここは相手の動きに合わせて飛ばないといけない。
しばらく観察してみたらある程度規則的な動き方をしているのがわかった。
それなら次に移動する場所を予測して飛べば乗ることができるだろう。
体が少し破れて変な液体まで出てるからここは早々に決めたいところだ。
右、右、そこの次はそこか!
俺はタイミングを見計らい空高く飛び上がった。綺麗な放物線を描いてアリめがけて落下していった。
ペチョッ
「よし、よし乗った。乗ったぞ。アリに乗ったどぉぉ」
幸運にも一発で乗ることが出来た。
アリは俺の存在を微塵も認知できていないのか、特に変わった様子はない。まぁこんだけ小さければ気づくはずもないか。
あとは口の方までずれていければ...
「ビュオーーー」
またしても突如強い風が吹いてきた。せっかく乗ったアリから飛ばされる俺。
やっぱり俺は運がないらしい
「いーやーーーーッ」
叫び声をあげながら空へと飛ばされていった。
しばらく飛ばされ続けること数十分。
今回吹いてきた風は強く、まだまだ地面には落ちそうにない。
なんだかなぁ。
どうしてこうも俺はついてないのか。
たしかに前世では色々とついてなかったけども...
ついてなかったけども...
今世ぐらいはいいじゃないか!
何でこうも俺ばっか...
どうか神様お願いします。
今世ぐらいは幸せな人生をお願いします。
何でもしま......
パクッ
「!?」
今何が起きた?
俺が考え事してる間に何が起きた?
お祈りしてる間に何が起きた?
なにこのデジャヴ。また暗闇ですか。
「クアックアックアッ」
しかも今度はなんだか変な声が聞こえる。どういう状況だよこれ。
そして声が聞こえる度に周囲が明るくなる。
うーむ。この状況から考えるに......
空を飛んでた
↓
暗くなった
↓
鳴き声がする
↓
明るくなる
なるほどなるほど。
どう考えても飛んでる生き物の口の中だな。そうじゃないとかもうやってられない。
てか怒涛の展開すぎだろ。アリの次は飛行生物か。運があるんだかないんだか。
まぁとりあえず今度こそ絶好のチャンスだ。
こんなまたとない機会を逃すなんてどう考えてもありゃあしない。
そうと決まれば早速増殖してみようじゃないか。たぶんこの生き物はお亡くなりになってしまうかもしれないが俺だってまだまだ死ぬわけにはいかない。
「0歳児、池崎彰、初めての仲間作りいっきまーす!」
と言ったもののどうしようか。詳しい増殖の仕方までは知らんかった。てか気づいたら、得体の知れない白くて丸くて大きい奴らに囲まれてる気がするんですけど。
しかもなんかこっちに近づいてきてるような...
まぁ気のせいか。
それよりも増殖する方法は...
いやいやどう考えても気のせいじゃないよな。明らかに俺めがけて近づいてきてるよ。
そこへ1匹の白い物体がこっちめがけて飛びかかってきた。
「うぉう!いきなり飛びかかってくんなよ」
こいつら一体なんなんだよ。なんで俺を狙ってくるんだよ。なんか恨みでもあんのか。そんなことよりこれは一体全体どういう状況だよ。
誰か教えてくれ!というわけにもいかないし、自分で考えるしかない。
考えろ。考えろ。人間も動物も体の中の構造はあまり変わらないはずだ。昔習った記憶を思い出せ!
すっと頭の中にあることが思い浮かんだ。
あ、そうか。なんで思い至らなかったんだ。考えてみたらわかることじゃないか。これはたぶん免疫系だ。
実際はほとんど知識なんてないし当てずっぽうなんだけど、昔どっかの教養テレビで見たことがある。なんだったか、怪我をした時、体に入ってきたバイ菌を白血球が食べて溶かしてしまいます。そして血小板が手と手をつないで怪我の傷口を治します。
こんな感じだったか、まあ今は怪我とは全く関係ないけども。
兎にも角にも多分これはその白血球だろう。俺を異物だと判断して襲いかかって来てるんだろう。そしてヤツらに食べられたら俺は今度こそお釈迦だ。
と、ここまで分かっても解決策が見つからん。
そして一体いつまで追いかけっこしてればいいんだよ。存外追いかけてくるスピードは遅いから追いつかれることは無いとは思うが。
しかし、ずっとこうしてる訳にはいかないし...
解決策、解決策と。
「ん!?よく見たらこれなんだか見覚えがあるな」
自分の足元をよく見てみたら高校の頃、生物の教科書で見た細胞のようなものがいっぱいあるじゃあないか。
なんで気づかなかった...
この丸っぽい形の大きな膜の中に核だっけ?大きくて丸いやつ。まあその他にもなんかいっぱい丸っこいのとかがあるけども。
とりあえず俺の知識から照らし合わせるにこれは細胞でまちがいないだろう。
ここに逃げ込めばヤツらを撒けるかもしれないし、ついでに増殖もできるんじゃなかろうか。
たしか、受付のお姉さんがくれた説明書にも細胞に遺伝子を組み込んで増殖するとかなんとか書いてあった気がするし、多分細胞の中で増えるんだろう。
ということはこの中に入れば増殖できるってことだ。
そうと分かればさっそく浸入してみようじゃないか!
にゅるにゅる
チャポン
「あら、細胞の中には力を込めれば意外とスルリと入れるのね」
ヤツらはやっぱり細胞の中までは入ってこれないらしい。
中はというと液体でいっぱいだ。
周りには小さい粒やひらべったい形をした物体などが浮いている。
細胞の中は結構複雑に出来ているらしい。
とりあえず現在の俺はその中をゆっくりと漂ってる感じだ。しばらくすると核が見えてきた。
「よし核に近づいてきたな。って、うわっ。核の方に吸い込まれてる気がするんですけど!?
あれ、あれあれれ、おいおいおいおい。どんどん吸い込まれてってますけど大丈夫ですかねぇぇぇ。うぉぉぉお」
きゅぽん。
!?
一体何が起きたんだ。
ここは核の中か?
体は...特に異常はないみたいだ。
いやあせったぁ。
とりあえずなんともなくてよかった。
いきなり吸い込まれたら誰だってビビるでしょ。
俺じゃなかったら絶対にオシッコちびってるね。うん絶対。いや多分。もしかしたら少しだけ。
そんなくだらないことを考えている間にも目の前に俺に似た丸い形の物体が少しずつ出来上がり始めていた。
結局これが増殖でいいのか?俺っぽいのが出来てるし、いいんだよな。
おっ。一つできたみたいだ。時間にして三分くらいってところか。カップラーメンを作るぐらいの時間とはなかなか早い。と思ったら後ろに二つも同じのができてるじゃないか。
てことは三分に三つか。凄まじいな。
増やし方も分かったことだし、この調子で増やしていくか。
さて、次の場所へ行...
「ヨウ!」
「ヨウ!」
「ヨウ!」
「!?」
突然脳内に声のようなものが響いてきた。
まぁきっと気のせいに違いない。
さて次の場所へ行く...
「ヨウ!」
「ヨウ!」
「ヨウ!」
最後まで言わせてぇ!?
やっぱり後ろの方から声が聞こえる。
しかも三つ。
心当たりは...ある。
多分あれとあれとあれだよな。
でもそんなことあるだろうか。
「ヨウ!」
「ヨウ!」
「ヨウ!」
「うおっ。近い近い!」
振り返ると三体の白い物体がすぐ目の前に来ていた。
第三者がいたのなら怖いお兄ちゃん達にカツアゲされてるように見えるだろう。それぐらい近い。
「やっぱりお前達か。俺に俺に俺?」
「ソウダ!」
「ソウダ!」
「ソウダ!」
どうやら複製したこいつらは意思を持って喋ることができるらしい。若干バカっぽい気がするが。
「お前ら俺の言ってることは分かるか?」
「ワカル!」
「ワカル!」
「ワカル!」
どうやら俺の言ってる事も分かるらしい。そして意外にもコミュニケーションを出来るだけの知能もある。
これは俺の遺伝子を元に作ったことによって、遺伝子に内包されている知識、つまりは情報がこいつらに遺伝してるって事なのか?バカっぽい感じからすると完全には遺伝出来てないみたいだけども。詳しいことは分からんが理由付けしてみたらこんな感じだろう。
まぁ色々と確かめるのがいいだろう。
「では各自、自分の名前を言え!」
「・・・・・・・・」
さすがにわからないか。逆に「アキラ!」とか言ったら怖いしな。
「ではお前らに名前を授ける!左からアキ、キラ、ラキだ!返事は!」
「ハイ!」
「ホイ!」
「・・・」
「こら!ラキ!そっち向いてないで返事しなさい!」
「ホア!」
「ん!?」
これは返事なのだろうか。まあいい。
とりあえず言うことは聞いてくれるみたいだ。
「おれの名前はアキラだ!覚えておくように」
「アキラ!」
「アキラ!」
「アキラ!」
「よくできた!では点呼を始める!各自名前を呼ばれたら返事をするように!」
「アキ!」
「ハイ!」
「キラ!」
「ホイ!」
「ラキ!」
「ホア!」
「よし。ではお前らに任務を与える!
各自、同胞を増殖させよ!」
「ハイ!」
「ホイ!」
「ホア!」
そう言うと一斉に核を突き破り外へと出ていった。
俺は...疲れたし寝るとするか。
細胞の中ってフワフワ浮いてる感じで気持ちいいのよね。
こうして俺は意識をシャットアウトした。
「ハイ!」
「ホイ!」
「ホア!」
「ハイ!」
「ホイ!」
「ホア!」
「「「ナカマ!ナカマ!ハイ!ホイ!ホア!」」」
彰が寝ている間もアキ、キラ、ラキは休むことなくひたすら同胞を増やしていた。時間にして約一時間がたった頃、
ドスンッ
「うおあぁ!何事だ!?」
ものすごい揺れたぞ今。
まさか敵襲?なわけないよな。
「「「「「ようようようようようようようようようようようようようようようようようようあきらようようようようようようようようようようようようようようようようようほいようようようあきらようようようようようようようようようようようあきらようようようようようよほいうようようようようようようようようようようようようようよう」」」」」
うるせーうるせーうるせーうるせー!
一体何事だ!夏場の蝉の鳴き声以上だぞ!
ようようようようお前らはラッパーかよ。
しかも所々で俺の名前言うなよ...
って
「うるさーーーーーーーい!静かにしろ!」
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
おっ?静かになった。
言えばやめるのかよ。
とりあえず、このうるさい声は同胞達の声だろう。
それはいいとして、さっきの揺れはなんなんだ。状況確認のためにも一旦外へ出よう。
そういえば、白血球どもは...
どうやらいないみたいだ。
さぁ外へ出よう。
「うおっ。眩しっ。こいつぁ。死んでる?」
虹色に輝く羽根。気品を漂わせる羽根。繊細そうな羽根。なんと表現していいのか分からないがとにかく羽根が綺麗だ。どう考えても珍しい類の鳥だろう。一般人の俺から見ても綺麗な鳥だと思う。前世では見たことないような鳥だ。
そんな鳥が今俺の隣で静かに横たわっている。特別天然記念物とかじゃないよな?まあいいか。
実際に生き物を殺してしまったが意外と罪悪感はない。
鳥だからだろうか。
もし人間がこの世界に居たとして、この鳥と同じように殺してしまっても俺は平然としていられるのだろうか。
それはその時になってみないと分からないと思う。とりあえずは現状の確認だ。
「お前らしゅう~ご~う!!!」
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日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
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