次の俺の転生先はウイルス(人外)らしいですよ。

心葉 光

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第1話 ウイルス

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客観的に見て俺は田舎の方にある理大を出てから都内の会社に就職し、社畜のごとく会社にこき使われ、そのストレスからかちょっと独り言が激しくなった気がするが、ごく普通のサラリーマンだったと思う。
 
 
それが二ヶ月前に重篤な病を患っていたことが分かって病院に入院している。病気の進行は結構早かったらしい。余命四ヶ月の宣告をされたのに二か月でもう満足に体を動かせなくなった。

                     ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
  

「先生、109号室の患者様に異常があったようです!」
 
「わかった。今行くから急いでバイタルサインの確認をしてくれ」


 なんだかたくさんの人が俺に向かって話しかけている。
 おぼろげな意識の中俺はただ見ていることしかできない。 
 
 
「脈拍、呼吸共に低下を確認。意識レベルも低下しています!」 
 
なにか言い合っているようだ... 
 
まぁそんな事どうでもいいか...
 

そろそろお迎えも近いみたいだ。瞼が重くなってきた。
  
 なんてことない人生だった。
 なんの面白みもなく、会社にこき使われるだけの人生。
 次生まれ変わったら少しくらいはマシな人生を送らせてほしいってところが最後の望みかな...
 
グッバイ。我が人生。 
 
「先生!どんどん心拍数が下がっています。心肺停止を確認しました!」 
 
「わかった。心臓マッサージを行っている間に急いで除細動器を用意してくれ!」
 
「はい、わかりました!」
 
「彰さん、頑張ってください!電気ショックまでもう少しですから!」   
 
「先生、除細動器の準備が出来ました!」
 
「わかった。ではみんな離れて......」
 
除細動器のボタンが押された。
 
 
バクンッバクンッ 
 
「心拍...戻りません...」
 
 

 
 
午前3時22分 
 
 
「脈拍なし、瞳孔散大、対光反射の消失を確認。心電図の状態、フラット。午前3時22分、死亡を確認しました。」
 
 医師は声を低くしてそう告げた。
 
 
 
 
 
 
その日おれは死んだ。
 
 
池崎 彰いけざき あきら
 
享年   26歳
 
 
 
 
                      ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
 

 
「起きてください。起きてください」
 
そう体を揺すられると俺はうっすらと目を開けた。

「あれ?俺は死んだはずじゃあ」
 
「いいえ、厳密には死んでいません」
 
一体どういうことなのだろう...... 

「お姉さんバカいっちゃいけないよ。おれは重篤な病にかかって死んじまったんだよ...」

「はい、そのように記録されていますね。正確にはあなたは死んだのではなく肉体から魂が離れただけなのです。そうして魂が肉体から離れたあとはこの天界へともどってくる仕組みになっているのです。そしてごく稀に生前の記憶を保持したままの魂も戻ってくるのです。今回はあなたがその魂だったようですね」 
 
俺が唖然としている中、暫くの間を置いたあと、
   
「あなたはこれから第二の人生を始めるのですよ。早く起きて一緒に来てください」
 
お姉さんはそう言うとにっこり微笑んだ。 
 
そしてそう言われて改めて俺は実感した。
 
あぁここは死後の世界か...と
 
「あっ待ってください。お姉さん」
 
 そうしておいてけぼりにならないように追いかけていくと大きな広間に出た。
 どうやらここで何かをしているらしい。
  
「次の人生への受付はあちらになります。奥にあるカウンターにお並びください」
 
 そう言われて奥の方を見ると同じように死んだ人なのか数人ばかりの列ができていた。
 
(何だかみんな表情が虚ろだな。記憶が無いからなのか?それにしても名前を呼ばれたら返事はするんだな。記憶が無いのにみんな名前だけは覚えてるんなんて不思議なもんだ)
 
 おっと、そんなことを考えていたらどうやら順番が回ってきたみたいだ。

「えーっと、池崎 彰様ですね?」
 
「はい、そうです」 
 
 なにも見ずに名前当てちゃったよ。生前、存在感の薄かった俺も覚えてくれてるとはなかなかに嬉しい。
 それにしても一人一人の名前を憶えてるなんてすごいなぁ。
 
「池崎様は記憶を保持したままだと記録されていますがそれでよろしいですか?」

「はい、そうです」
 
えっ?なんか記憶を持ったままだと不味いんだろうか...
 
「えーっと、それではご説明させていただきます。
こちらの天界では記憶を消す事は出来ませんので記憶を保持したまま第二の人生を始めていただくことになります」 
 
 (あれ?これラッキーじゃね?今度こそ薔薇色の人生が俺を待ってる気がする。記憶を持ったまま生まれ変われるなんて神様がきっと前世を考慮してくれた結果に違いない。ありがたや、ありがたや。
 いやぁ嬉しさについつい顔がゆるんじゃうよ。ゆるんじゃ...
いやいやいやここは真面目な顔をせねば) 

「池崎様、それではこれからあなたの第二の人生についてお話させいただきます」
 
「はいっ!」
 
そういって受付の女性は封筒から一枚の紙を取り出した。
 
 
「池崎様の第二の人生なのですが......」
 
 

「ウイルスです」
 
「はい?」
俺は言っている意味がわからず、思わず聞き返してしまった。
 
「ですから、ウイルスです。」
 
「はい?」
なんか変な単語が聞こえるのは気のせいだろうか?単なる幻聴に違いない。いや、絶対そうに違いない。
 
「ですから、ウイルスですって!」
 
そう力強く女性は答えた。 
どうやら幻聴ではないらしい。
そんなことを一瞬考えると叫び出していた。
 
「なんですとーーー!ウイルスってあの風邪とか、インフルンエンザの原因のウイルスですか!?映画とかでよく使われているこれはなんちゃらウイルスが原因みたい。とかのウイルスですか!?」
 
「そ、それはこちらの説明書に記載してありますので、詳しくはこちらの説明書を読んでください。それと今回は記憶の持ったままの転生で、かつ生まれ変わる先が特殊ですのである程度の融通はきかせると上の者が申しておりましたのでこの旨お伝えしておきます」 
 
「は、はぁ。わかりました。」
 
 そういうと薄っぺらい紙をさっきと同じ封筒から取り出した。
 説明書の割になんだか薄っぺらいけど何なのだろう。
 

「あの~、次のお客様がお待ちなので横にずれていただけるでしょうか。それと一時間以内にあのゲートを潜って次の人生へ行かないと魂が浄化されてしまうので気をつけてください」
 
 
「わかりました......」
 
そういって彰が横にずれると受付のお姉さんは次の客の対応を始めた。

魂の浄化ってなんだよ...

 それよりどうやら本当に俺の来世はウイルスらしい。
 とりあえずさっき貰った紙でも見てみますか......


えーと、どれどれ。
 
「これからのあなたの人生はウイルスです。
 
あなたはウイルスとは何かを知っていますか?
 
ウイルスはほかの生物と違い生物の最小単位である細胞を持っていません。
それ即ち、ウイルスは生物ではないのです。
 
では生物ではないウイルスはどうやって増えているのか?そう疑問に思いませんか?
 
ウイルスは細胞を持たない代わりに独自の遺伝子を持ち、それを宿主である生物の細胞に組み込むことで増殖しています。
 
例えば、ウイルスが動物の体内に入り込めばたちまちウイルスは増殖し、その体は侵されるでしょう。そして次の生物の体へ。また別の生物の体へ。
こうしてウイルスは増殖していきます。
 
あなたはそのウイルスとなるのです。
 
世界へのゲートを潜ればあなたは次の瞬間にはウイルスになっていることでしょう。
 
それではあなたの次の人生に幸福がありますように。」
 
えっ!?これだけ!?
ほかの説明はなんもなし?
俺の次の人生は生物ですらないの!?
しかもウイルスになってどうするとか何をしたらいいとか全く分からないんですけどぉ!? 
あぁ、あれか。なってみたら分かるってやつか。なるほどなるほど。
 
いやいや、ホントだろうな...
 
まぁなるようになれだ。 
俺は散々不幸な目にあってきたんだ。
今更不安がることなんか何も無いじゃないか。ポジティブに行こう!ポジティブに!
ふぅ落ち着いてきた。 
 
「なんだか不思議な感じだな。
あのゲートを潜れば今までの俺じゃなくなるんだもんな。
まあゴチャゴチャ考えてても仕方ないし、そろそろ次の人生始めるとしますか。」
 
そう言うと次の世界へのゲートを潜るのだった。
 
 
 
 
 
~拝啓~
 
お父様、お母様。

僕の次の人生はウイルスみたいです。
死んでしまって伝えることは出来ませんけど、次の人生頑張ります。
 
え?ウイルスは危ないって?
別にイイじゃないか!
ウイルスの世界にルールはない!
好き放題させてもらいますよ!
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