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倦怠期?
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秋尋様の様子がおかしい。
俺には対してやたらとよそよそしいし、えっちなことも、その気になれないと断られる。
『浮気では?』
画面向こうで頬杖をつきながら、平坂くんが言った。
会うことはほとんどなくなったけど、みんなとはこうしてたまにスマホでグループ通話をしている。本日は広川くんは、サッカーの試合を見るとかで不在だ。
なんだか、秋尋様だけでなく平坂くんの様子も素っ気ない気がする。
「そ、そんな様子はないと思うけど」
何しろ俺は秋尋様のボディーガード。さすがに浮気をされたらすぐにわかる。
『君に見つからないよう、グループ通話とかで密やかな逢瀬を楽しんでるのかもしれない』
そんなにも浮気にしたいのか。平坂くんめ。
『浮気じゃないなら、倦怠期とか』
金井くんが、少し不機嫌そうに言った。
「えっ。今更? 付き合いが長すぎて、そんなのとっくに過ぎてる気がするけど……」
『恋人としては短いし、同棲を初めてそろそろ一年でしょ? お屋敷で暮らしてた頃とも違うだろうし』
なんか実感がこもってる気がする。
「……もしかして、金井くんも?」
『そうなんだよ』
答えたのは平坂くんのほうだった。
『毎日姉からの愚痴が酷い……。イチャイチャするのもやめてほしいけど、早く仲直りしてくれないかな?』
そっか。俺だけじゃないんだ。
だからって問題が解決したわけでもないのに、心が少し軽くなった気がするのは何故だろう。
「俺は秋尋様に飽きるなんてこと、絶対にないのにな。金井くんは、こういう時どうしてるの?」
『少し距離を置くとかかな』
「絶対に無理なんだけど。一緒に暮らしてても顔が見られないだけで寂しい」
『景山くんはいつでも全力だから、近衛先輩も疲れてきちゃうのかも……』
『確かに』
心当たりなんて、ありすぎるほどある。重いとか、少しは放っておいてくれとか、言われたりするから。
でもそう言われたら素直に従ってるんだけど。
『押してダメなら引いてみなっていうけど、景山くんは引くことができないのが問題だよねえ。あとは、他の解決方法としては……』
『察した』
平坂くんがその言葉と同時に、チャットルームを退室した。
『……まだ何も言ってないのに、エスパーか何かかな? まあ、つまりその手の話題なんだけど』
平坂くんは俺と秋尋様の話なら付き合ってくれるけど、身内のそういった話は聞きたくないと金井くんのセックス事情は全部スルーしてる。だから金井くんの童貞捨てたよ宣言は俺と広川くんだけが知っている。まあ、エスパー疑惑のある平坂くんのことだから、さとってはいそうだけども。
『マンネリになってきてるのも理由のひとつだろうから、いつもと違うプレイをしてみるとか』
「それ以前に、させてすらもらえなくて!」
『それが一番つらいよね、男には……』
「でも意外だな。金井くんとこは、凄く仲が良さそうだったのに」
『だからこそっていうか。むしろ、向こうがっていうか……。僕なんて君と違って頼りない歳下だし』
「金井くんのソコがよくて付き合ってるんだから、それは問題ないと思うけどなあ」
『それでも長くなると色々あるんだよ……』
どうやら金井くんのほうが、俺と同じで素っ気なくされてる側らしい。
そのせいか、珍しくネガティブになってる。
そのまま2人で、わかるよー、つらいよねー。って言い合ってたら、心が少し落ち着いてきた。
「ところで違うプレイって、金井くんとこはどんなことするの?」
『いや、うちは……マンネリになるほどしてないから……。君のとこは二人暮しを始めてから、結構シテるかなって』
「してる……! まさか、俺の身体に飽きてきたとか……?」
『理由を訊いちゃうのが一番早いんだけどね』
「答えてくれなくない?」
『くれないよね……』
最後はお互いを励まし合って通話を終えた。
その場にいなくても顔を見てお話できるって、スマホって凄い。
スマホ……。今は前よりも近くに秋尋様がいるから、常に顔を見てお話してたけど、ラインで訊いてみたら案外答えてくれるのでは? 文章のほうが話しやすいってこともあるかもしれないし。前に手紙作戦が成功した実績もある。ここは文章だ。
勇気を出して直球で、俺のこと嫌いになりましたか? って送ってみた。
……既読スルーされた。1時間待ってみたけど返事なし。悲しすぎ。
しょんぼりしていたら、控えめなノックの音が響いた。
「は、はいっ!」
秋尋様が俺の部屋に、久々に来てくれた。
扉を開けると嫌そうな秋尋様の顔。それを見た途端、何かがプツンと切れた。
「あの、秋尋様っ! 俺に悪いところがあったら、なんでも直しますから! だから、俺から離れようとしないでください」
多分……。俺のこういうとこが、秋尋様は嫌なんだろうってわかってるのに、止まらなかった。
でもしかたない。だって俺にはこれしかない。溢れんばかりの貴方への愛しか持っていないんだ。それしか育ててこなかったから。
「違う。お前は悪くない。いや……。わ、悪くない、わけでは……ないんだが」
「やっぱり俺のせい……!」
「ええい、喚くな! 本当に嫌いになるぞ」
「ひぇっ……」
あまりにも情けない声が洩れた。
秋尋様は何か説明しようと頑張ってるみたいで、言いかけてはやめを繰り返す。
「うん。やっぱり、どう考えてもお前のせいだ」
「すみません!!」
「……だが、理由も言わずに無視したのは僕が悪かった」
この様子から考えて、倦怠期ではなさそう。えっちのマンネリ……は、ありそう……。
だってこれ、理由を言いにくかったとか、そういうことだよね?
そうじゃなきゃ、結構ズバズバ文句言ってくるし。
「あの……。ところで、今日も、その、オアズケですか?」
「お前。この流れでどうしてそうなるんだ。……あっ」
秋尋様はハッとした表情をしたあと、目を逸らし斜め下を向いた。
「別に、お前が下手だからとかでは、ない……。か、かといって、上手いわけでもないけどな!」
毎回とても感じてくださるから下手ってことはないと思ってたけど、そう言ってもらえると安心する。
でもバリエーションがあまりないのも、テクニックのうちに入るとするならばちょっと悩むところだ。
「では、俺のせいとは一体?」
「……言わない」
「部屋に来てくださったのは、俺を許し悪いところを改善させるためだったのでは?」
「そもそも、許す許さないの話でもなくてだな……」
……まさか。逆? 感じすぎるから嫌だとか!?
って、本当にまさかだよ。身体を重ねたのは一度や二度の話じゃないのに。
まあ、何度重ねても初めてみたいな反応をシテくれるのが秋尋様の最高に可愛いところなんだけど。
「ともかく、朝香を嫌いになったわけではないから。離れる予定もない」
「本当ですか? 本当に? そのお言葉が聞けただけで、俺……ッ」
秋尋様不足が限界だったこともあって、俺はその身体を抱きしめて肩に顔を埋めた。慰めるように背中をポンポンとされて、目頭がじんわりと熱くなってくる。
「まったく。お前は身体は大きくなっても、いつまでも甘えただな」
「秋尋様限定です」
「そうか」
当然のように下半身も熱くなってきたし、秋尋様もそれに気づいたのか腰を引いた。
「今日もダメですか? どうしてもダメですか?」
「お前、さっきから同じような言葉を繰り返すな」
「だって……。最近、ずっとオアズケで……」
上目遣いで秋尋様を見てから、甘えるように何度も額を擦りつける。
背中に回っていた手が俺を押し返す動きを見せ、絶望した途端すぐに強く抱きしめられた。
「わ、わかった。だが……て、手加減は、してくれ」
それはずっとオアズケさせられていた俺には難しい注文。
でも秋尋様のためなら誠心誠意、手加減し、愛は増量で頑張ってみせる。
マンネリ打破は、また今度。
俺には対してやたらとよそよそしいし、えっちなことも、その気になれないと断られる。
『浮気では?』
画面向こうで頬杖をつきながら、平坂くんが言った。
会うことはほとんどなくなったけど、みんなとはこうしてたまにスマホでグループ通話をしている。本日は広川くんは、サッカーの試合を見るとかで不在だ。
なんだか、秋尋様だけでなく平坂くんの様子も素っ気ない気がする。
「そ、そんな様子はないと思うけど」
何しろ俺は秋尋様のボディーガード。さすがに浮気をされたらすぐにわかる。
『君に見つからないよう、グループ通話とかで密やかな逢瀬を楽しんでるのかもしれない』
そんなにも浮気にしたいのか。平坂くんめ。
『浮気じゃないなら、倦怠期とか』
金井くんが、少し不機嫌そうに言った。
「えっ。今更? 付き合いが長すぎて、そんなのとっくに過ぎてる気がするけど……」
『恋人としては短いし、同棲を初めてそろそろ一年でしょ? お屋敷で暮らしてた頃とも違うだろうし』
なんか実感がこもってる気がする。
「……もしかして、金井くんも?」
『そうなんだよ』
答えたのは平坂くんのほうだった。
『毎日姉からの愚痴が酷い……。イチャイチャするのもやめてほしいけど、早く仲直りしてくれないかな?』
そっか。俺だけじゃないんだ。
だからって問題が解決したわけでもないのに、心が少し軽くなった気がするのは何故だろう。
「俺は秋尋様に飽きるなんてこと、絶対にないのにな。金井くんは、こういう時どうしてるの?」
『少し距離を置くとかかな』
「絶対に無理なんだけど。一緒に暮らしてても顔が見られないだけで寂しい」
『景山くんはいつでも全力だから、近衛先輩も疲れてきちゃうのかも……』
『確かに』
心当たりなんて、ありすぎるほどある。重いとか、少しは放っておいてくれとか、言われたりするから。
でもそう言われたら素直に従ってるんだけど。
『押してダメなら引いてみなっていうけど、景山くんは引くことができないのが問題だよねえ。あとは、他の解決方法としては……』
『察した』
平坂くんがその言葉と同時に、チャットルームを退室した。
『……まだ何も言ってないのに、エスパーか何かかな? まあ、つまりその手の話題なんだけど』
平坂くんは俺と秋尋様の話なら付き合ってくれるけど、身内のそういった話は聞きたくないと金井くんのセックス事情は全部スルーしてる。だから金井くんの童貞捨てたよ宣言は俺と広川くんだけが知っている。まあ、エスパー疑惑のある平坂くんのことだから、さとってはいそうだけども。
『マンネリになってきてるのも理由のひとつだろうから、いつもと違うプレイをしてみるとか』
「それ以前に、させてすらもらえなくて!」
『それが一番つらいよね、男には……』
「でも意外だな。金井くんとこは、凄く仲が良さそうだったのに」
『だからこそっていうか。むしろ、向こうがっていうか……。僕なんて君と違って頼りない歳下だし』
「金井くんのソコがよくて付き合ってるんだから、それは問題ないと思うけどなあ」
『それでも長くなると色々あるんだよ……』
どうやら金井くんのほうが、俺と同じで素っ気なくされてる側らしい。
そのせいか、珍しくネガティブになってる。
そのまま2人で、わかるよー、つらいよねー。って言い合ってたら、心が少し落ち着いてきた。
「ところで違うプレイって、金井くんとこはどんなことするの?」
『いや、うちは……マンネリになるほどしてないから……。君のとこは二人暮しを始めてから、結構シテるかなって』
「してる……! まさか、俺の身体に飽きてきたとか……?」
『理由を訊いちゃうのが一番早いんだけどね』
「答えてくれなくない?」
『くれないよね……』
最後はお互いを励まし合って通話を終えた。
その場にいなくても顔を見てお話できるって、スマホって凄い。
スマホ……。今は前よりも近くに秋尋様がいるから、常に顔を見てお話してたけど、ラインで訊いてみたら案外答えてくれるのでは? 文章のほうが話しやすいってこともあるかもしれないし。前に手紙作戦が成功した実績もある。ここは文章だ。
勇気を出して直球で、俺のこと嫌いになりましたか? って送ってみた。
……既読スルーされた。1時間待ってみたけど返事なし。悲しすぎ。
しょんぼりしていたら、控えめなノックの音が響いた。
「は、はいっ!」
秋尋様が俺の部屋に、久々に来てくれた。
扉を開けると嫌そうな秋尋様の顔。それを見た途端、何かがプツンと切れた。
「あの、秋尋様っ! 俺に悪いところがあったら、なんでも直しますから! だから、俺から離れようとしないでください」
多分……。俺のこういうとこが、秋尋様は嫌なんだろうってわかってるのに、止まらなかった。
でもしかたない。だって俺にはこれしかない。溢れんばかりの貴方への愛しか持っていないんだ。それしか育ててこなかったから。
「違う。お前は悪くない。いや……。わ、悪くない、わけでは……ないんだが」
「やっぱり俺のせい……!」
「ええい、喚くな! 本当に嫌いになるぞ」
「ひぇっ……」
あまりにも情けない声が洩れた。
秋尋様は何か説明しようと頑張ってるみたいで、言いかけてはやめを繰り返す。
「うん。やっぱり、どう考えてもお前のせいだ」
「すみません!!」
「……だが、理由も言わずに無視したのは僕が悪かった」
この様子から考えて、倦怠期ではなさそう。えっちのマンネリ……は、ありそう……。
だってこれ、理由を言いにくかったとか、そういうことだよね?
そうじゃなきゃ、結構ズバズバ文句言ってくるし。
「あの……。ところで、今日も、その、オアズケですか?」
「お前。この流れでどうしてそうなるんだ。……あっ」
秋尋様はハッとした表情をしたあと、目を逸らし斜め下を向いた。
「別に、お前が下手だからとかでは、ない……。か、かといって、上手いわけでもないけどな!」
毎回とても感じてくださるから下手ってことはないと思ってたけど、そう言ってもらえると安心する。
でもバリエーションがあまりないのも、テクニックのうちに入るとするならばちょっと悩むところだ。
「では、俺のせいとは一体?」
「……言わない」
「部屋に来てくださったのは、俺を許し悪いところを改善させるためだったのでは?」
「そもそも、許す許さないの話でもなくてだな……」
……まさか。逆? 感じすぎるから嫌だとか!?
って、本当にまさかだよ。身体を重ねたのは一度や二度の話じゃないのに。
まあ、何度重ねても初めてみたいな反応をシテくれるのが秋尋様の最高に可愛いところなんだけど。
「ともかく、朝香を嫌いになったわけではないから。離れる予定もない」
「本当ですか? 本当に? そのお言葉が聞けただけで、俺……ッ」
秋尋様不足が限界だったこともあって、俺はその身体を抱きしめて肩に顔を埋めた。慰めるように背中をポンポンとされて、目頭がじんわりと熱くなってくる。
「まったく。お前は身体は大きくなっても、いつまでも甘えただな」
「秋尋様限定です」
「そうか」
当然のように下半身も熱くなってきたし、秋尋様もそれに気づいたのか腰を引いた。
「今日もダメですか? どうしてもダメですか?」
「お前、さっきから同じような言葉を繰り返すな」
「だって……。最近、ずっとオアズケで……」
上目遣いで秋尋様を見てから、甘えるように何度も額を擦りつける。
背中に回っていた手が俺を押し返す動きを見せ、絶望した途端すぐに強く抱きしめられた。
「わ、わかった。だが……て、手加減は、してくれ」
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