甘すぎるのも悪くない

used

文字の大きさ
21 / 106
甘さ控えめ

今だけは

しおりを挟む
 先輩は歌も上手かった。この歌声披露したら、歌手デビューへの道もあるんじゃないだろうか。

 本当に何でもできる人なんだな。というか、この人に苦手なことってあるのか?


「歌えよ、後輩」

「音痴なんで……」

「ふーん」


 先輩が意外そうな顔をする。


「何ですか、その顔」

「お前って割りと何でもできる雰囲気あったから」

「できないこともありますよ。先輩と違って」

「俺にだってあるぞ、できないことくらい」

「何ですか?」

「秘密」


 にっとかっこよく笑って、結局教えてはくれなかった。

 おれも促されて幾つか歌ったけど、声は悪くないのになと、慰めにもならないような台詞を吐かれた。

 先輩はオンステージするのに飽きたのか、結局1時間で出ることになった。

 おれとしてはもう少し居たいような、気まずいから一度別れて仕切直したいようなそんな感じ。

 でも傍にある体温は、やっぱり名残惜しい……。


「あの、一度抱きしめてもいいですか?」

「いいけど」

「え、いいんですか!?」

「自分から言い出しておいて」


 それはそうだけど、ダメ元で聞いてみたのにまさか許可されるとは。

 明日からは改めて頑張る。でも今だけは先輩後輩の垣根を少しでもいいから越えたい。

 ぎゅ、と抱きしめるとどちらかと言えば抱き着いているような感じになった。


「あはは、可愛い可愛い」


 やっぱりこのままトイレにでも連れ込んでやろうか。

 そんな気持ちを見透かしたように、先輩がおれから離れる。


「じゃ、行こう」


 温もりがなくなることは寂しいけど仕方ない。

 今だけ……にならないといい。またいつか、先輩を抱きしめたい。

 部屋を出る直前、先輩はキスできる距離まで近付いてぼそりと呟いた。


「恋愛」

「は?」

「俺にできないもの。何に対しても執着薄いんだ、俺」


 だからおれとも無理だって、そういうこと……なんだろうか。


「でも、後輩くんのことは割りと気に入ってる。ってさっきも言ったろ。特別ってことだよ」


 これも夢じゃないよな? 望みあるって思っていいの? 先輩。

 恋愛なんてポジティブになった方が勝ち。

 そんな余裕そうな顔も今だけは許してあげるよ。

 いつか貴方に、お前が初恋だよって言わせてやる。



あとがき


お題に添って進めていた話なので、タイトルは全てお題になっています。ここで一区切り。続きはアタック編になります。


■お題サイトさん■

1141*

http://2st.jp/2579/


*片想い中20のお題

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

好きな人に迷惑をかけないために、店で初体験を終えた

和泉奏
BL
これで、きっと全部うまくいくはずなんだ。そうだろ?

処理中です...