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「その自信はいったいどこから湧いてくるのでしょうか」
わたしの決心をよそに、まだ憤りが収まらなかのように、ヨシキさんは川島さんに喰ってかかる。
「だからって、みっこさんの言い方はひどいっすよ。あんな言い方じゃ、下手すれば凛子ちゃんが潰れるじゃないですか!」
「あのくらいの批評で潰れるなら、凛子ちゃんもそこまで、ってことだろ」
「…」
「モデルって仕事は、そんなに甘くない。モデルになりたい女の子なんて、掃いて捨てるほどいるんだからな。
その中から這い上がっていけるのは、どんなバッシングにもへこたれない、負けん気が強くてやる気のある子だけだ。みっこは凛子ちゃんの根性も見たかったんだろな。だから、わざと煽ってきた」
そう言いながら川島さんはわたしを見つめ、微笑んだ。
「あそこで凛子ちゃんがみっこに喰い下がったのには、正直いって感心したよ」
「あ、ありがとうございます。ただわたし、必死で…」
「みっこもそういう、凛子ちゃんの勝ち気さを買ったんだろう。
みっこのレッスンは厳しいだろうけど、それは凛子ちゃんに期待してるからだと思うよ。頑張れよ」
「はい!」
わたしの返事に満足げにうなづき、川島さんはヨシキさんを振り返った。
「だけどヨシキ。おまえも変わったヤツだな」
「え? なにがっすか?」
「凛子ちゃんはおまえの彼女だろ? それがモデルなんかになると、独り占めできなくなるぞ。みんなの凛子ちゃんになってしまうぞ。はっきり言って凛子ちゃん、トップモデルになるぞ」
「いいじゃないっすか。どんどん人気出て、てっぺん取れば。みんながどんなに凛子ちゃんを望んでも、抱けるのはオレだけなんて、快感っすよ」
「はは。おまえのその自信。すごいよ。いったいどこから湧いてくるんだろな」
川島さんは愉快そうに笑った。
「いいんですか? わたしがほんとうにトップモデルになっても。競争率、激しくなりますよ」
ベッドのなかで、はだかでひとつのシーツにくるまりながら、わたしは少し意地悪く、ヨシキさんに言った。
撮影が終わって、門限まではまだかなり時間があった。
スタジオを出たわたしたちは、ヨシキさんの部屋に寄り、あとはいつものパターン。
鼻先でせせら笑い、ヨシキさんは自信満々に答えた。
「競争率? オレがだれに負けるんだ?
たくさんの男を知れば知るほど、逆にオレのよさがわかるよ。だから凛子ちゃんにはぜひ、トップモデルになって、他の男とオレを較べてもらいたいな」
「すごいです、その自信。ある意味尊敬します」
「明後日から、みっこさんとレッスンか… 凛子ちゃん、大丈夫?」
「もちろんです。わたし今、燃えていますから」
「それにしても… これも運命かな」
ポツリと言ったヨシキさんは、顔を上げて、窓の外に目をやった。
「運命?」
「…」
わたしの問いには答えず、夕闇が蒼く広がり、街の灯がまたたきはじめた都会の景色を、ヨシキさんはじっと見つめている。
さっきまでの自信満々の笑顔に、少し翳が差している。
「ヨシキさん?」
「…」
「どうかしましたか?」
「…まあ、いいや。とにかく凛子ちゃんは、頑張れよ。オレもできるところは協力するからさ」
「え? ええ。ありがとうございます」
心の翳りを吹っ切るように、ヨシキさんは明るく言う。
「にしても、あの時の凛子ちゃん、カッコよかったよ。みっこさんに喰い下がったとき、野獣みたいな目をしてた」
「え? そ、そうですか?」
「ああ。『なにがなんでもモデルになってみせる』って気迫が、ビシバシ伝わってきたよ」
「わたし、負けず嫌いなんです。ああまで言われておめおめと引き下がるなんて、絶対できません」
「はは。凛子ちゃんらしいよ」
「それに… 本当に好きになってきました。モデルをすることが」
「へえ~」
「見られるのが嬉しいというか、いろいろな自分を見てもらえる充実感や快感。別の自分に変身できるのも、刺激的でとっても楽しいし」
「『変わりたい』って言ってたもんな。モデルは凛子ちゃんの、天職かもしれないな」
つづく
「だからって、みっこさんの言い方はひどいっすよ。あんな言い方じゃ、下手すれば凛子ちゃんが潰れるじゃないですか!」
「あのくらいの批評で潰れるなら、凛子ちゃんもそこまで、ってことだろ」
「…」
「モデルって仕事は、そんなに甘くない。モデルになりたい女の子なんて、掃いて捨てるほどいるんだからな。
その中から這い上がっていけるのは、どんなバッシングにもへこたれない、負けん気が強くてやる気のある子だけだ。みっこは凛子ちゃんの根性も見たかったんだろな。だから、わざと煽ってきた」
そう言いながら川島さんはわたしを見つめ、微笑んだ。
「あそこで凛子ちゃんがみっこに喰い下がったのには、正直いって感心したよ」
「あ、ありがとうございます。ただわたし、必死で…」
「みっこもそういう、凛子ちゃんの勝ち気さを買ったんだろう。
みっこのレッスンは厳しいだろうけど、それは凛子ちゃんに期待してるからだと思うよ。頑張れよ」
「はい!」
わたしの返事に満足げにうなづき、川島さんはヨシキさんを振り返った。
「だけどヨシキ。おまえも変わったヤツだな」
「え? なにがっすか?」
「凛子ちゃんはおまえの彼女だろ? それがモデルなんかになると、独り占めできなくなるぞ。みんなの凛子ちゃんになってしまうぞ。はっきり言って凛子ちゃん、トップモデルになるぞ」
「いいじゃないっすか。どんどん人気出て、てっぺん取れば。みんながどんなに凛子ちゃんを望んでも、抱けるのはオレだけなんて、快感っすよ」
「はは。おまえのその自信。すごいよ。いったいどこから湧いてくるんだろな」
川島さんは愉快そうに笑った。
「いいんですか? わたしがほんとうにトップモデルになっても。競争率、激しくなりますよ」
ベッドのなかで、はだかでひとつのシーツにくるまりながら、わたしは少し意地悪く、ヨシキさんに言った。
撮影が終わって、門限まではまだかなり時間があった。
スタジオを出たわたしたちは、ヨシキさんの部屋に寄り、あとはいつものパターン。
鼻先でせせら笑い、ヨシキさんは自信満々に答えた。
「競争率? オレがだれに負けるんだ?
たくさんの男を知れば知るほど、逆にオレのよさがわかるよ。だから凛子ちゃんにはぜひ、トップモデルになって、他の男とオレを較べてもらいたいな」
「すごいです、その自信。ある意味尊敬します」
「明後日から、みっこさんとレッスンか… 凛子ちゃん、大丈夫?」
「もちろんです。わたし今、燃えていますから」
「それにしても… これも運命かな」
ポツリと言ったヨシキさんは、顔を上げて、窓の外に目をやった。
「運命?」
「…」
わたしの問いには答えず、夕闇が蒼く広がり、街の灯がまたたきはじめた都会の景色を、ヨシキさんはじっと見つめている。
さっきまでの自信満々の笑顔に、少し翳が差している。
「ヨシキさん?」
「…」
「どうかしましたか?」
「…まあ、いいや。とにかく凛子ちゃんは、頑張れよ。オレもできるところは協力するからさ」
「え? ええ。ありがとうございます」
心の翳りを吹っ切るように、ヨシキさんは明るく言う。
「にしても、あの時の凛子ちゃん、カッコよかったよ。みっこさんに喰い下がったとき、野獣みたいな目をしてた」
「え? そ、そうですか?」
「ああ。『なにがなんでもモデルになってみせる』って気迫が、ビシバシ伝わってきたよ」
「わたし、負けず嫌いなんです。ああまで言われておめおめと引き下がるなんて、絶対できません」
「はは。凛子ちゃんらしいよ」
「それに… 本当に好きになってきました。モデルをすることが」
「へえ~」
「見られるのが嬉しいというか、いろいろな自分を見てもらえる充実感や快感。別の自分に変身できるのも、刺激的でとっても楽しいし」
「『変わりたい』って言ってたもんな。モデルは凛子ちゃんの、天職かもしれないな」
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