あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

文字の大きさ
142 / 259
level 15

「本当に好きなのはわたしひとりだけですか?]

しおりを挟む
「ん~、、、 8月下旬、だったかな」
「8月下旬?! 山口にバカンスに行く直前ですか? 『仕事を片づけとかないといけないから、しばらく会えない』って言っていた」
「ああ。そのときだよ」
「仕事って、恋子さんと新島に行くことですか?!」
「…それも含まれてる」
「『含まれてる』って… よくそんなサラっと言えますね。悪びれもせずに!」
「悪びれるって、、、 オレはなにも悪いことはしてないから」
「開き直らないで下さい! わたしに黙って恋子さんと新島なんかに行って、水着撮影するなんて!」
「いちいち了解とらなきゃいけないのか? 凛子ちゃんの」
「なにそれ? 信じられない! わたし、ヨシキさんのなんなんですかっ?!」
「カノジョ」
「だったら、他の女の人と撮影に行くとき、ひとことでいいから言ってほしいです! でないと、やましいことしているのじゃないかと、疑ってしまいます!」
「そんなこと、してないよ」
「でも、恋子さんと泊まったんでしょ? 新島に」
「泊まったりしてないよ」
「嘘っ! この前ヨシキさんは『新島は泊まりじゃないと日程組みにくい』って言っていたじゃないですか!」
「調べたら、調布から飛行機が出てたんだよ。それだと撮影だけなら日帰りでもなんとかできるし」
「ほんとうに、撮影だけですか?」
「オレのこと信じられない? まあ、あの掲示板スレ見れば、信じられなくなるよな、ふつー」
「どうしてそんな、人ごとみたいに言うんです? あれを見たわたしが、いったいどんな気持ちになったか、ヨシキさんはわかりますか?!」
「イヤ~な気持ちになっただろ。オレだっていい気持ちしないもん」
「そんな… ヨシキさんは平気なんですか? 就職先のことや人間関係や、プライベートなことまで全部晒されて、悪口言われて好き勝手なこと書かれて」
「しかたないよ。『有名税』って思うことにしてるよ」
「それで、本当に納得しているんですか?!」
「できなくてもするしかないだろ。オレは敵が多いし、あることないこと晒されるし」
「『あることないこと』って、ほんとうのことも書いてあるんですか?」
「逆に訊くけど、オレのこと、ほんとにあのスレのとおりだって思ってる?」
「それは… 思いたくないけど、でも…」
「凛子ちゃん、オレのこと信じてないの?
オレがほんとに好きなのは、今は凛子ちゃんただひとりだってのに」
「『今は』って。なんですか?」
「ん~、、 とにかくオレのこと、信じてほしいってこと」
「…そりゃ、信じたいけど、、、 なんだかわからなくなってきました」
「…」
「ヨシキさん… わたし以外にも、今つきあっている人、いるんじゃないですか?」
「…はぁ、、、、、、、、、」

携帯の向こうで、深いため息が漏れる。
長い沈黙のあと、冷めた口調でヨシキさんは言った。

「いたとしたら、どうする?」

なにそれ?!
意味わからない!
わたしは激昂して言った。

「別れます!!」
「………」

ヨシキさんはなにも言わなかった。
その沈黙はわたしを余計に苛立たせ、溜まりに溜まっていた不満をぶちまけさせた。

「最低! なにもかも、ぶち壊しです!
お台場でのファーストキスも、ふたりで行ったバカンスも…
綺麗な思い出はみんな、ぐしゃぐしゃにされて。
わたし、心のどこかで『ヨシキさんはわたしのこと、本気で好きなのかな?』って、いつも疑問、感じていました。自信、ありませんでした。
それでも、精いっぱいついていって、『大事にされているんだ』って実感できるようになって、少しずつ自信も芽生えてきたというのに、それも打ち砕かれました。
正直、むかつきます!」

わたしの言い分を黙って聞いていたヨシキさんは、静かな声で切り返す。

つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...