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level 19
「ひとりだけ置いてけぼりにされてるみたいです」
コスプレ活動に精を出すかたわらで、モデルレッスンの方も頑張った。
みっこさんとの個人レッスンだけでなく、紹介していただいたモデル事務所にも所属して、そちらでのレッスンやメイク講座にも積極的に参加した。
みっこさんから打診されていたCM出演の話は、事務所に入るとすぐに、正式に決まった。
それは行政の未成年向けドラッグ撲滅啓蒙のポスターとCMで、女子高生が薙刀を構えているシーンに、わたしが起用されたのだ。
まだモデル事務所に馴染んでもいないのに、すぐに撮影の企画ミーティングに同席することになった。
いろんな出来事が、予想もしてなかったスピードで進んでいく。
「こちらが島津凛子ちゃん。現役高校生です。
全日本なぎなた選手権6位の腕前で、しかも薩摩島津家の末裔。まさに才色兼備で文武両道のお姫さま。今回のコンセプトにこれ以上のモデルはいないと、確信しています」
「島津凛子です。この度は大役を仰せつかり、ありがとうございます。
一所懸命に頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします」
マネージャーとしてついてくれたみっこさんから紹介されたわたしは、教えられたように両手をキチンと前に組み、深々と頭を下げて挨拶を述べた。
緊張する。
行政の担当者や代理店のプロデューサー、カメラマンや撮影監督といった、年長のお偉いさんたちの視線が、一斉にわたしに集まる。
みんな、値踏みするように、わたしの一挙一動を観察している。
ひととおり紹介が終わると、会議は早速本題へと移っていく。
だれもが真剣に仕事に打ち込んでいて、激論が交わされることもしばしば。
挨拶をしたきり発言することがないまま、わたしはずっといちばん隅の席で、会議を見守っていた。
みんな、一流の仕事をこなす、立派なおとな。
わたしだけがなにも知らない子どもみたいで、ちっぽけな存在に感じる。
「お手元の資料をご覧下さい。
プレゼンでは2案提出していましたが、1案目はシンプルなホリゾントでの撮影。モデルのキャラクター性がダイレクトに表現でき、インパクトがあります。
森バージョンの方はクレーンの設置やロケ場所の確保が難しいので、ブルーバックでスタ撮りしてCG合成を考えています」
「そちらのコンテでおわかりいただけるように、これまでの当たり前の啓蒙CMとの差別化を図り、トーンは浅めでクールな今風なビジュアルで、プライムタイムメインにオンエアし、若い世代に訴求する計画です」
「ポスターは各種公共機関や学校を中心に、駅などでもB全のバリエ違い連貼りで、目立ち効果を高めていく予定です」
と、会話の最中に挟み込まれる専門用語も、チンプンカンプン。
そんななかで会議はどんどん進んでいき、ひとりだけ置いてけぼりにされてるみたいだった。
「まあね。気にしないで。
今回はお固い公安関係のお仕事で、本庁のお偉いさんも来てるから、会議じゃだれも冗談なんて言えないし。はじめての凛子ちゃんが緊張するのは当然よ。
でもね。現場に同席して、こういう雰囲気を肌で感じて、がむしゃらについていってるうちに、気がつけば人間の器も大きくなってるものなのよ。今はまだ大変だろうけど、薩摩おごじょの意地を見せてね」
会議のあと、みっこさんも『ふぅ』と安堵したように大きくため息をつき、ニッコリ微笑みながら慰め、励ましてくれた。
そのあとも衣装を合わせたり、撮影の監督から演技指導を受けたり。
突然、おとなのビジネスの世界に足を踏み入れたわたしは、右も左もわからないまま、まるで大きな流れに押し流されるように、みんなについていくので精一杯。
そして、なにがなんだかわからないうちに、CM撮影の日を迎えてしまった。
つづく
みっこさんとの個人レッスンだけでなく、紹介していただいたモデル事務所にも所属して、そちらでのレッスンやメイク講座にも積極的に参加した。
みっこさんから打診されていたCM出演の話は、事務所に入るとすぐに、正式に決まった。
それは行政の未成年向けドラッグ撲滅啓蒙のポスターとCMで、女子高生が薙刀を構えているシーンに、わたしが起用されたのだ。
まだモデル事務所に馴染んでもいないのに、すぐに撮影の企画ミーティングに同席することになった。
いろんな出来事が、予想もしてなかったスピードで進んでいく。
「こちらが島津凛子ちゃん。現役高校生です。
全日本なぎなた選手権6位の腕前で、しかも薩摩島津家の末裔。まさに才色兼備で文武両道のお姫さま。今回のコンセプトにこれ以上のモデルはいないと、確信しています」
「島津凛子です。この度は大役を仰せつかり、ありがとうございます。
一所懸命に頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします」
マネージャーとしてついてくれたみっこさんから紹介されたわたしは、教えられたように両手をキチンと前に組み、深々と頭を下げて挨拶を述べた。
緊張する。
行政の担当者や代理店のプロデューサー、カメラマンや撮影監督といった、年長のお偉いさんたちの視線が、一斉にわたしに集まる。
みんな、値踏みするように、わたしの一挙一動を観察している。
ひととおり紹介が終わると、会議は早速本題へと移っていく。
だれもが真剣に仕事に打ち込んでいて、激論が交わされることもしばしば。
挨拶をしたきり発言することがないまま、わたしはずっといちばん隅の席で、会議を見守っていた。
みんな、一流の仕事をこなす、立派なおとな。
わたしだけがなにも知らない子どもみたいで、ちっぽけな存在に感じる。
「お手元の資料をご覧下さい。
プレゼンでは2案提出していましたが、1案目はシンプルなホリゾントでの撮影。モデルのキャラクター性がダイレクトに表現でき、インパクトがあります。
森バージョンの方はクレーンの設置やロケ場所の確保が難しいので、ブルーバックでスタ撮りしてCG合成を考えています」
「そちらのコンテでおわかりいただけるように、これまでの当たり前の啓蒙CMとの差別化を図り、トーンは浅めでクールな今風なビジュアルで、プライムタイムメインにオンエアし、若い世代に訴求する計画です」
「ポスターは各種公共機関や学校を中心に、駅などでもB全のバリエ違い連貼りで、目立ち効果を高めていく予定です」
と、会話の最中に挟み込まれる専門用語も、チンプンカンプン。
そんななかで会議はどんどん進んでいき、ひとりだけ置いてけぼりにされてるみたいだった。
「まあね。気にしないで。
今回はお固い公安関係のお仕事で、本庁のお偉いさんも来てるから、会議じゃだれも冗談なんて言えないし。はじめての凛子ちゃんが緊張するのは当然よ。
でもね。現場に同席して、こういう雰囲気を肌で感じて、がむしゃらについていってるうちに、気がつけば人間の器も大きくなってるものなのよ。今はまだ大変だろうけど、薩摩おごじょの意地を見せてね」
会議のあと、みっこさんも『ふぅ』と安堵したように大きくため息をつき、ニッコリ微笑みながら慰め、励ましてくれた。
そのあとも衣装を合わせたり、撮影の監督から演技指導を受けたり。
突然、おとなのビジネスの世界に足を踏み入れたわたしは、右も左もわからないまま、まるで大きな流れに押し流されるように、みんなについていくので精一杯。
そして、なにがなんだかわからないうちに、CM撮影の日を迎えてしまった。
つづく
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