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恥ずかしさと口惜しさで顔が真っ赤になりました」
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「凛子ちゃん。今の動画見る?」
スタジオの隅に置かれたパソコンの周りには、プロデューサーさんやカメラマンさん、公安のお偉いさんらが集まってて、みんなでモニターを覗き込んでいた。
放心状態でホリゾントに突っ立ってるわたしに、みっこさんが手を振って招いてる。
「なかなかいいですね」
「さすが、みっこちゃんの秘蔵っ子ね。華があるわ」
「まあ、はじめての撮影だし、こんなもんでしょうね」
「いいんじゃないですか?」
当たり障りなくみんなが褒めてくれるなかで、みっこさんだけは腕組みをしたまま、じっとモニターを見つめていた。
そのとなりに立って、わたしもモニターに見入る。
何度も再生される画面のなかの自分を、まばたきもせずにわたしは見つめた。
恥ずかしさと口惜しさで顔が真っ赤になってきて、わたしは拳を固く握りしめた。
こんなの、全然ダメだ。
ロクな演技じゃない。
見るからに集中力がなくて、速さにも正確さにも気魄にも欠けてる。
素人が見てもわからないだろうけど、試合じゃ一回戦負けするようなレベル。
全国大会に出場して、6位まで勝ち上がったわたしの力は、こんなもんじゃない!
なのに『こんなもんでしょうね』って。
みくびらないで!
そりゃ、緊張で実力が発揮できなかったわたしが、いちばん悪いんだけど。
しっかりしろ。凛子!
だらしないぞ!
なんとかしなきゃ!!
「どう? 凛子ちゃん的には」
わたしの方を振り向き、みっこさんが訊いてきた。
思わず声を荒げる。
「こんなの、、、 納得いきませんっ」
「どこが?」
「なにもかもです!」
「ふうん」
「あっ、すみません。撮影がとかってわけじゃなくて、自分のなぎなたのことです。
わたし、緊張で全然集中できなくって、演技もうわの空で… こんな演武、みっともないだけです!
師範や上級者の方に見られたら、笑われます!」
激昂した言葉に、それぞれに感想を述べていたみんなは口を閉じ、不審そうにわたしを見つめる。
たくさんの視線を痛いほど感じながら、わたしは思い切って深々と頭を下げ、監督に頼んだ。
「すみません。やり直させて下さい!」
「え? やり直す?」
「…生意気ね」
呆気にとられた様子でわたしを見返てる監督を、みっこさんは一瞥すると、こちらを睨み、冷たく言い放った。
「監督もクライアントさんも、もう、OK出したのよ。駆け出しモデルのくせに、自分からダメ出しするつもり?」
「しかし…」
「スタジオの予定だって、このあと詰まってるのに、あなたが『納得いかない』からって、撮り直せって言うの?」
「すっ、すみません。でもわたし、こんな形で終わるのはイヤです。もっといい演技を見てもらいたいです。
だからどうしても、もう一度やらせてほしいんです。お願いします!」
もう、あとには引けない。
抑えつけるように見つめるみっこさんの視線に気圧されながらも、わたしは一歩も引かなかった。
かすかに口元に笑みを浮かべ、みっこさんは答える。
「じゃあ、見せて」
「え?」
「凛子ちゃんが納得いくまでやって、その、『もっといい演技』ってのを見せてもらいましょ。ね、監督?」
「あ? そうだな…」
「ありがとうございます。でもその前に、素振りの時間を少し下さい。からだを暖めないと調子が出ないから」
「好きにすればいいわ」
わたしは丸に十文字の入った馴染みの真剣を手に取り、思いっきり薙刀を振れる場所を探した。
「ホリゾント使いなさいよ。邪魔なものもないし、そこがいちばん広いでしょ」
そう言って、みっこさんは真っ白な空間を目で示した。撮影に使う場所だけど、確かにそこなら薙刀を振り回すには十分過ぎるスペースがある。
まだライトが煌々と輝いているホリゾントの真ん中に立って、わたしは薙刀を構えた。
つづく
スタジオの隅に置かれたパソコンの周りには、プロデューサーさんやカメラマンさん、公安のお偉いさんらが集まってて、みんなでモニターを覗き込んでいた。
放心状態でホリゾントに突っ立ってるわたしに、みっこさんが手を振って招いてる。
「なかなかいいですね」
「さすが、みっこちゃんの秘蔵っ子ね。華があるわ」
「まあ、はじめての撮影だし、こんなもんでしょうね」
「いいんじゃないですか?」
当たり障りなくみんなが褒めてくれるなかで、みっこさんだけは腕組みをしたまま、じっとモニターを見つめていた。
そのとなりに立って、わたしもモニターに見入る。
何度も再生される画面のなかの自分を、まばたきもせずにわたしは見つめた。
恥ずかしさと口惜しさで顔が真っ赤になってきて、わたしは拳を固く握りしめた。
こんなの、全然ダメだ。
ロクな演技じゃない。
見るからに集中力がなくて、速さにも正確さにも気魄にも欠けてる。
素人が見てもわからないだろうけど、試合じゃ一回戦負けするようなレベル。
全国大会に出場して、6位まで勝ち上がったわたしの力は、こんなもんじゃない!
なのに『こんなもんでしょうね』って。
みくびらないで!
そりゃ、緊張で実力が発揮できなかったわたしが、いちばん悪いんだけど。
しっかりしろ。凛子!
だらしないぞ!
なんとかしなきゃ!!
「どう? 凛子ちゃん的には」
わたしの方を振り向き、みっこさんが訊いてきた。
思わず声を荒げる。
「こんなの、、、 納得いきませんっ」
「どこが?」
「なにもかもです!」
「ふうん」
「あっ、すみません。撮影がとかってわけじゃなくて、自分のなぎなたのことです。
わたし、緊張で全然集中できなくって、演技もうわの空で… こんな演武、みっともないだけです!
師範や上級者の方に見られたら、笑われます!」
激昂した言葉に、それぞれに感想を述べていたみんなは口を閉じ、不審そうにわたしを見つめる。
たくさんの視線を痛いほど感じながら、わたしは思い切って深々と頭を下げ、監督に頼んだ。
「すみません。やり直させて下さい!」
「え? やり直す?」
「…生意気ね」
呆気にとられた様子でわたしを見返てる監督を、みっこさんは一瞥すると、こちらを睨み、冷たく言い放った。
「監督もクライアントさんも、もう、OK出したのよ。駆け出しモデルのくせに、自分からダメ出しするつもり?」
「しかし…」
「スタジオの予定だって、このあと詰まってるのに、あなたが『納得いかない』からって、撮り直せって言うの?」
「すっ、すみません。でもわたし、こんな形で終わるのはイヤです。もっといい演技を見てもらいたいです。
だからどうしても、もう一度やらせてほしいんです。お願いします!」
もう、あとには引けない。
抑えつけるように見つめるみっこさんの視線に気圧されながらも、わたしは一歩も引かなかった。
かすかに口元に笑みを浮かべ、みっこさんは答える。
「じゃあ、見せて」
「え?」
「凛子ちゃんが納得いくまでやって、その、『もっといい演技』ってのを見せてもらいましょ。ね、監督?」
「あ? そうだな…」
「ありがとうございます。でもその前に、素振りの時間を少し下さい。からだを暖めないと調子が出ないから」
「好きにすればいいわ」
わたしは丸に十文字の入った馴染みの真剣を手に取り、思いっきり薙刀を振れる場所を探した。
「ホリゾント使いなさいよ。邪魔なものもないし、そこがいちばん広いでしょ」
そう言って、みっこさんは真っ白な空間を目で示した。撮影に使う場所だけど、確かにそこなら薙刀を振り回すには十分過ぎるスペースがある。
まだライトが煌々と輝いているホリゾントの真ん中に立って、わたしは薙刀を構えた。
つづく
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