あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

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「最高に綺麗な姿を見せつけてやりたいです」

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「今、凛子ちゃんがうちに来てるのよ。
違うわ、ただの女子会。川島くんも来ない? いっしょに凛子ちゃんの合格祝いしましょ! ええ、待ってるから」

そう言って電話を切ったみっこさんは、嬉しそうに言う。

「すぐ来るって、川島くん」
「え? ほんとですか?」
「それにしても、つくづく奇遇よね。あたしと同じブランドの夏キャンモデルを、20年以上経って、教え子の凛子ちゃんがやることになるって」
「そうですね。それも運命かもしれません」
「しかも当時のカメラマンは、星川さんで」
「ドラッグ撲滅ポスターを撮影してくださった方ですね」
「そう。あのセンセは、川島くんの師匠にあたる人なのよ。今回、弟子の川島くんが撮影するのも、なにかの縁ね」
「そうですね、、、」

そう応えながら、わたしはちょっと心に引っかかることがあった。

「じゃあ、、、 ヨシキさんも、撮影には来るんでしょうか?」
「それは…」

みっこさんは少し考えて答える。

「もちろん、来るでしょうね」
「…」
「会いたくない?」
「まあ、そうですけど、、、 仕事だから、気にしないようにします」
「ふふ… ヨシキくんなんか目じゃないって」
「え?」
「巨匠カメラマンの川島くんが撮るのよ。あいつの目の前で凛子ちゃんの最高に綺麗な姿、見せつけてやりなさいよ」
「それ、いいですね」
「『どんどん人気出てトップモデルになって、みんなが凛子ちゃんを望んでも、抱けるのはオレだけ』なんて言ってたんでしょ? ヨシキくん」
「え? よく知ってますね」
「川島くんから聞いたわ。ちょっと凛子ちゃんとつきあってると思って、ヨシキくんも浮かれてるわよね」
「浮かれてるかどうかはわかりませんけど、、 ヨシキさんのあの自信は、どこから来るんでしょうか?」
「ま、どんな巨匠よりも、彼氏が撮った方がいい表情が写せるってのは、よく言われる話だけどね」
「そうなんですか?」
「モデルとカメラマンの信頼関係って、とても大事でしょ。ちょっと会って話したくらいじゃ打ち解けられないし、信頼関係を築けてないと、表情も硬くなるわ。
でも、長い時間をいっしょに過ごして、信頼してる彼氏からカメラ向けられるのなら、モデルもリラックスして、いい表情が出せるってわけ」
「そうですね。確かに」
「『お互いに理解するためにエッチしよう』とか誘ってくるカメラマンだっているくらいだものね」
「ええっ!? それは、極端じゃないですか?」
「まあ、そんなのは、ナンパの口実なんだけどね。
ただ、それくらい、モデルとカメラマンは親密な方が、いい写真も撮れるってことだけど…」

そう言いながら、思いついたように、みっこさんは瞳を輝かせた。

「いっそのこと、凛子ちゃん、川島くんとつきあったら? 川島くんが彼氏だったら最強じゃない。ヨシキくん以上の写真だって撮れるわよ」
「ええっ?!」
「あ。ふた回りも年上じゃ、完全圏外か。凛子ちゃんから見ればただのおじさんか」
「いえ。川島さんは素敵な男性だと思います。包容力があってやさしいし。いっしょにいて安心できる感じで、ヨシキさんにはない、おとなの魅力があります」
「そうよね。ヨシキくんって、よくも悪くも、子供ガキだもんね」
「ですよね!
だいたい自信過剰だと思いませんか?
その高く反りかえった鼻を、へし折ってやりたくなります」
「凛子ちゃんも負けん気強いから、ふたりがぶつかるのは、まあ当然よね。
『オレはモテるんだ』って自信満々なヨシキくんの態度は、あたしでもつい、からかってやりたくなっちゃうし」
「そうなんですよ。わたしも一度くらい、ギャフンと言わせてやりたいです」
「あは。だけど、あのヨシキくんを凹ますなんて、そう簡単じゃないかもね」
「ええ。でも、、、」

ふと、わたしは思い出した。

つづく
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