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「ただのバカップルと思われたかもしれません」
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「ん、、、」
長いキスのあと、わたしはうっとりと川島さんを見つめた。
彼もわたしに、まっすぐな視線を向ける。
はじめて見る、川島さんの真剣な眼差し。
「本気かい?」
低い声でそう言った川島さんは、憂いを漂わせた瞳でわたしを見つめながら、ゆっくりと顔を寄せてきた。
なんて色っぽい瞳。
ぞくぞくしてくる。
川島さんの顔が目の前いっぱいに広がる。
思わずわたしは、瞳を閉じて唇を緩めた。
川島さんの手の感触。
暖かくて大きな手が、わたしの頬をやさしく撫でる。
その手が前髪をかきあげたかと思うと、額に軽く、川島さんの唇が触れた。
「凛子ちゃんのこと、すごく大事に思ってるよ。だから、今はここまで」
そう言いながら川島さんは、わたしの頬を包み込むように、手を添えた。
「、、、え?」
てっきり、キスが来ると思ったのに。
薄目を開けたわたしは、拗ねるように唇を尖らせた。
「来週は凛子ちゃんもセンター試験だし、アルディア化粧品の仕事も控えている。ぼくとの恋愛なんかにかまけてられないだろ」
「、、、川島さんは、なんともないんですか? キスされて」
わたしの声は、少し不満げだったのかもしれない。
まるでだだっ子をあやすように、川島さんは優しく言い含める。
「そんなはずないだろ。凛子ちゃんみたいな可愛くて素敵な子からキスされて。ぼくだって男だよ。ふつうじゃいられないよ」
「じゃあ、、」
「でもその前に、ぼくらにはやらなきゃいけないことがあるから。
一瞬の欲望や衝動で、後先顧みずに突っ走るなんて、この年じゃもうできないんだよ。
凛子ちゃんも酔いが醒めてから、よく考えてみるんだな。
ぼくみたいなふた回りも年上のおっさんと、つきあえるかどうかを。
そうして冷静になって出した結論を、ぼくも喜んで受け入れるよ」
そう言いながら川島さんは、わたしの頬と髪を優しく撫でてくれた。
とっても気持ちがやすまる。
まるで父のような安心感。
こんな気持ち、ヨシキさんといっしょにいたときには、経験できなかったな。
“パパァーーーッ”
後続のクルマがクラクションを鳴らした。
いつの間にか、信号が青に変わってたんだ。
わたしの頬から手を離すと。川島さんは正面に向き直ってハンドルを取り、アクセルを踏んだ。
車線を変えてわたしたちのクルマに並んだ後続車のドライバーは、窓越しにこちらをジロジロと睨みつけ、追い抜いていく。
それを見ながら、川島さんは笑う。
「あははは。ぼくたちただの、バカップルと思われただろうな」
「え?」
「今のクルマからは丸見えだろ。凛子ちゃんがぼくにキスするところ」
「ええっ」
「ははは。ぶっちゃけ嬉しかったけど、後悔もしてるよ。
カッコつけてないで勢いに任せて、凛子ちゃんをどこかのホテルにでも連れ込めばよかったかなって」
「そ、そんな、、、」
「そうするともっと後悔するか。お互い」
「…」
「ははははは。さ、もうすぐ着くよ。とりあえず今はみっこの言う通り、未来のトップモデルを無事にうちに送り届けなきゃ。送り狼にならずにな」
そう言って川島さんは愉快そうに笑いながら、クルマを走らせていく。
なんか口惜しいけど、楽しくもある。
わたしがどんなに全力でぶつかってみても、それを余裕で受け止めてくれるのが、心地いい。
つづく
長いキスのあと、わたしはうっとりと川島さんを見つめた。
彼もわたしに、まっすぐな視線を向ける。
はじめて見る、川島さんの真剣な眼差し。
「本気かい?」
低い声でそう言った川島さんは、憂いを漂わせた瞳でわたしを見つめながら、ゆっくりと顔を寄せてきた。
なんて色っぽい瞳。
ぞくぞくしてくる。
川島さんの顔が目の前いっぱいに広がる。
思わずわたしは、瞳を閉じて唇を緩めた。
川島さんの手の感触。
暖かくて大きな手が、わたしの頬をやさしく撫でる。
その手が前髪をかきあげたかと思うと、額に軽く、川島さんの唇が触れた。
「凛子ちゃんのこと、すごく大事に思ってるよ。だから、今はここまで」
そう言いながら川島さんは、わたしの頬を包み込むように、手を添えた。
「、、、え?」
てっきり、キスが来ると思ったのに。
薄目を開けたわたしは、拗ねるように唇を尖らせた。
「来週は凛子ちゃんもセンター試験だし、アルディア化粧品の仕事も控えている。ぼくとの恋愛なんかにかまけてられないだろ」
「、、、川島さんは、なんともないんですか? キスされて」
わたしの声は、少し不満げだったのかもしれない。
まるでだだっ子をあやすように、川島さんは優しく言い含める。
「そんなはずないだろ。凛子ちゃんみたいな可愛くて素敵な子からキスされて。ぼくだって男だよ。ふつうじゃいられないよ」
「じゃあ、、」
「でもその前に、ぼくらにはやらなきゃいけないことがあるから。
一瞬の欲望や衝動で、後先顧みずに突っ走るなんて、この年じゃもうできないんだよ。
凛子ちゃんも酔いが醒めてから、よく考えてみるんだな。
ぼくみたいなふた回りも年上のおっさんと、つきあえるかどうかを。
そうして冷静になって出した結論を、ぼくも喜んで受け入れるよ」
そう言いながら川島さんは、わたしの頬と髪を優しく撫でてくれた。
とっても気持ちがやすまる。
まるで父のような安心感。
こんな気持ち、ヨシキさんといっしょにいたときには、経験できなかったな。
“パパァーーーッ”
後続のクルマがクラクションを鳴らした。
いつの間にか、信号が青に変わってたんだ。
わたしの頬から手を離すと。川島さんは正面に向き直ってハンドルを取り、アクセルを踏んだ。
車線を変えてわたしたちのクルマに並んだ後続車のドライバーは、窓越しにこちらをジロジロと睨みつけ、追い抜いていく。
それを見ながら、川島さんは笑う。
「あははは。ぼくたちただの、バカップルと思われただろうな」
「え?」
「今のクルマからは丸見えだろ。凛子ちゃんがぼくにキスするところ」
「ええっ」
「ははは。ぶっちゃけ嬉しかったけど、後悔もしてるよ。
カッコつけてないで勢いに任せて、凛子ちゃんをどこかのホテルにでも連れ込めばよかったかなって」
「そ、そんな、、、」
「そうするともっと後悔するか。お互い」
「…」
「ははははは。さ、もうすぐ着くよ。とりあえず今はみっこの言う通り、未来のトップモデルを無事にうちに送り届けなきゃ。送り狼にならずにな」
そう言って川島さんは愉快そうに笑いながら、クルマを走らせていく。
なんか口惜しいけど、楽しくもある。
わたしがどんなに全力でぶつかってみても、それを余裕で受け止めてくれるのが、心地いい。
つづく
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