琥珀は紅玉の夢を見る

真城詩

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衣替え

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「衣替えをするぞ!朱火!」

琥珀が昼食後に朱火に向かって急に叫んだ。どうやら唐突に思いついたらしい。

「何言ってんだ、お前の着物は鱗に対応してるし、俺は服なんか持ってきてないぞ?できねーよ、衣替えなんて」
「それができるのじゃ、村人たちから奉納された布がたんまりあってのう」
「俺は今の格好を気に入ってるし、琥珀はそれ、今のままで十分似合ってると思うし、寒くなってもまだ上にはおるものはあるし、別にいいんじゃないか?そんなことしなくたって」
「しかしおぬし、綿入れはもっておらんじゃろう、作ってやるぞ、この儂が直々に」
「そうだなぁ、綿入れは確かに持ってないかもな」

各地を放浪してきた朱火は、その場しのぎの生活を送ってきたのだ。綿入れなど必要になった時にはその場で安物でいいから買い、必要なくなったら売るということを繰り返してきた。盗賊であるが故、持ち物は少ないほうがいい。しかし今は違う。確かに寒くなってきて綿入れが必要になったらと考えると今琥珀に作ってもらったほうが良いのは明白だった。

「う……じゃあ、綿入れだけ作ってくれるか?」
「何を言っておるのだ。ぬしの服はもう結構、着古したものじゃろう。それらもまとめて作り直すぞ」
「今のが気に入ってるって言ったばっかじゃないか……」

そうと決めた琥珀の耳には朱火の声は届かない。宝物庫へとかけて行った神をあきれながら盗賊は見守った。すぐに帰ってきた琥珀が色々な種類の布を見せてくる。朱火はそれを一つ一つ選びながらこの日常を愛しいと感じ始めていた。

「なあ、神様って手芸の類はできないのか。こう、なんかすごい力でばばーっと」
「残念ながらできんな。儂も布を縫ったりすることがここまで面倒だとは思わんかったのじゃ」
「あーっ!もうやめていいか?俺、今の服で十分だしよぉ」
「ならん!作ると決めたら作るのじゃ。ほれ、貸してみろ。半分までは儂が代わりに縫うてやろう」

なんだかんだ言って琥珀は優しい。朱火は考える。己に尽くす龍神。最初は受け入れる気すらなかったのに今はこんなにも二人でいることが当たり前になってきている。美しい龍神。これが俺を愛し、俺だけのために尽くす。何とも言えずそれは心地よかった。

そうして朱火の新しい服と綿入れは作られた。ほとんどが琥珀の手によるもので、朱火は代わりに狩りに行ったり料理をしたりしていたが。新しい服に袖を通し、琥珀に見せる。琥珀は笑顔で、良く似合うとつぶやいた。新しい服は、気分も変わる。古い服ももう仕舞ってしまった。だんだんと己が琥珀のものになりつつあることに気づいた朱火は、その変化を、奇妙に暖かく思った。
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