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夕刻、新米メイドのリディアは緊張していた。
今日が宮廷での初めての手紙配達当番。先輩メイドから「間違えないように」と念を押されていた。
配達箱から手紙を取り出す。二通だけだ。
一通目は「セリア・ノーラン様」宛て。差出人はエドウィン王子。
二通目は「オズワルド・グレイ・マクスウェル様」宛て。差出人はロザリンド様。
「セリアさんは......確か侍女の部屋で、オズワルド様は......騎士団の詰所......」
リディアは宮廷の地図を頭の中で思い浮かべた。
だが、彼女は極度の方向音痴だった。
東棟と西棟を間違え、階段を上がるべきところを下がってしまう。
気づいた時には、まったく違う場所にいた。
「あれ......? ここは......」
慌てて引き返すが、ますます迷ってしまう。
時間だけが過ぎていく。焦りが募る。
そうだ、ロザリンド様の部屋なら分かる。まずそこに一通届けよう。
手紙を確認する。「セリア・ノーラン様」宛て。セリアさんはロザリンド様の侍女だから、部屋にいるかもしれない。
ロザリンドの部屋のドアをノックする。
「失礼いたします、お手紙です」
「どうぞ」
中からロザリンドの声。
リディアは手紙を渡して、一礼して退出した。
次はもう一通。「オズワルド・グレイ・マクスウェル様」宛て。
騎士団の詰所は......確か王子の執務室の近く......?
またしても迷いながら、なんとかエドウィンの執務室にたどり着く。
「失礼いたします、お手紙です」
「入りなさい」
エドウィンの声。
リディアは手紙を机に置いて、深々と頭を下げて退出した。
ふう、なんとか配達完了。
彼女は自分が二通とも間違った相手に渡したことに、まったく気づいていなかった。
その夜。
エドウィンは執務を終え、机の上の手紙に気づいた。
差出人はロザリンド・アルテア・フィオレンティーノ。
彼女からの手紙? 珍しい。
封を開けて読み始めた瞬間、目が見開かれた。
『オズワルド様
突然のお手紙、失礼いたします。
実は、エドウィン様との接し方について、ご相談したいことがあります......』
手紙を持つ手が震えた。
ロザリンドが、オズワルドに相談を? エドウィン様との接し方を?
いや、待て。落ち着け。
だが、手紙の内容は明確だった。彼女はオズワルドを頼りにしている。親しい口調。そして、私との関係に距離を感じている。
まさか......ロザリンドはオズワルドのことを......?
思い返せば、宮廷の集まりで二人が楽しそうに話しているのを何度か見た。オズワルドは社交的で、話しやすい。私とは正反対だ。
胸が苦しくなった。
***
一方、ロザリンドの部屋。
彼女は受け取った手紙を開いた。
差出人はエドウィン・フェリクス・ヴァレンティア。
婚約者からの手紙。何だろう?
読み始めて、息が止まった。
『セリア嬢
彼女の傍らで笑顔を守ってくださる貴女の存在は、何よりも心強いものです......』
エドウィン様がセリアに? こんな優しい言葉を?
いや、これは感謝状のはず。でも......
「彼女の傍らで笑顔を守ってくださる貴女」
この言葉には、特別な想いが込められているように感じた。
セリアは確かに美しく、優しく、献身的だ。エドウィン様が惹かれても不思議ではない。
ロザリンドは手紙を握りしめた。
やはり、私は政略結婚の道具でしかないのだ。
今日が宮廷での初めての手紙配達当番。先輩メイドから「間違えないように」と念を押されていた。
配達箱から手紙を取り出す。二通だけだ。
一通目は「セリア・ノーラン様」宛て。差出人はエドウィン王子。
二通目は「オズワルド・グレイ・マクスウェル様」宛て。差出人はロザリンド様。
「セリアさんは......確か侍女の部屋で、オズワルド様は......騎士団の詰所......」
リディアは宮廷の地図を頭の中で思い浮かべた。
だが、彼女は極度の方向音痴だった。
東棟と西棟を間違え、階段を上がるべきところを下がってしまう。
気づいた時には、まったく違う場所にいた。
「あれ......? ここは......」
慌てて引き返すが、ますます迷ってしまう。
時間だけが過ぎていく。焦りが募る。
そうだ、ロザリンド様の部屋なら分かる。まずそこに一通届けよう。
手紙を確認する。「セリア・ノーラン様」宛て。セリアさんはロザリンド様の侍女だから、部屋にいるかもしれない。
ロザリンドの部屋のドアをノックする。
「失礼いたします、お手紙です」
「どうぞ」
中からロザリンドの声。
リディアは手紙を渡して、一礼して退出した。
次はもう一通。「オズワルド・グレイ・マクスウェル様」宛て。
騎士団の詰所は......確か王子の執務室の近く......?
またしても迷いながら、なんとかエドウィンの執務室にたどり着く。
「失礼いたします、お手紙です」
「入りなさい」
エドウィンの声。
リディアは手紙を机に置いて、深々と頭を下げて退出した。
ふう、なんとか配達完了。
彼女は自分が二通とも間違った相手に渡したことに、まったく気づいていなかった。
その夜。
エドウィンは執務を終え、机の上の手紙に気づいた。
差出人はロザリンド・アルテア・フィオレンティーノ。
彼女からの手紙? 珍しい。
封を開けて読み始めた瞬間、目が見開かれた。
『オズワルド様
突然のお手紙、失礼いたします。
実は、エドウィン様との接し方について、ご相談したいことがあります......』
手紙を持つ手が震えた。
ロザリンドが、オズワルドに相談を? エドウィン様との接し方を?
いや、待て。落ち着け。
だが、手紙の内容は明確だった。彼女はオズワルドを頼りにしている。親しい口調。そして、私との関係に距離を感じている。
まさか......ロザリンドはオズワルドのことを......?
思い返せば、宮廷の集まりで二人が楽しそうに話しているのを何度か見た。オズワルドは社交的で、話しやすい。私とは正反対だ。
胸が苦しくなった。
***
一方、ロザリンドの部屋。
彼女は受け取った手紙を開いた。
差出人はエドウィン・フェリクス・ヴァレンティア。
婚約者からの手紙。何だろう?
読み始めて、息が止まった。
『セリア嬢
彼女の傍らで笑顔を守ってくださる貴女の存在は、何よりも心強いものです......』
エドウィン様がセリアに? こんな優しい言葉を?
いや、これは感謝状のはず。でも......
「彼女の傍らで笑顔を守ってくださる貴女」
この言葉には、特別な想いが込められているように感じた。
セリアは確かに美しく、優しく、献身的だ。エドウィン様が惹かれても不思議ではない。
ロザリンドは手紙を握りしめた。
やはり、私は政略結婚の道具でしかないのだ。
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