身代わり令嬢は愛されすぎて逃げられない

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第12話

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翌日の夕方、私はリュカの書斎で最終確認をしていた。
窓の外はすでに暗くなり始め、潜入の時間が迫っている。
「セリーヌは今夜も外出している」
ナタンが偵察から戻ってきた。黒い服に身を包み、顔には煤が付いている。
「昨夜と同じ、黒いマントで顔を隠して馬車で出て行った。行き先は港の倉庫街だ」
「倉庫街?」
リュカが眉をひそめた。
「ああ。しかも護衛付きだ。ただの密会じゃなさそうだぜ」
不穏な空気が漂った。
セリーヌは一体、何を企んでいるのだろう。
「とにかく、今がチャンスだ」
リュカが立ち上がった。黒い革の上着に、同じく黒いズボン。腰には短剣が差されている。
まるで盗賊のような出で立ちだが、不思議と様になっていた。
「セリア、これを着てくれ」
渡されたのは、動きやすそうな黒い服だった。
「あの、これは……」
「潜入用だ。ドレスじゃ動けないだろう?」
確かにその通りだった。
私は隣の部屋で着替えた。ズボンを履くのは生まれて初めてで、なんだか落ち着かない。でも、確かに動きやすい。
「似合ってるじゃないか」
部屋に戻ると、ナタンが口笛を吹いた。
「なかなか様になってる」
リュカも私をじっと見つめていた。
その視線があまりにも熱くて、顔が熱くなる。
「そんなに見ないでください」
「あ、ああ。すまない」
リュカが慌てて視線を逸らした。
珍しく動揺している彼を見て、ナタンがにやにやと笑う。
「さて、作戦の確認だ」
リュカが咳払いをして、机に広げた屋敷の見取り図を指差した。
「まず、裏庭から侵入する。使用人の出入り口から地下への階段がある。セリアが昨日視た通りなら、その奥に隠し部屋があるはずだ」
「警備は?」
「最小限に留めているようだ。セリーヌがいない今、護衛の大半も出払っている」
ナタンが付け加えた。
「俺が先行して、安全を確認する。合図をしたら、リュカとセリアが続け。いいな?」
私たちは頷いた。
「セリア」
リュカが私の肩に手を置いた。
「危険を感じたら、すぐに逃げろ。いいな?」
「でも、首飾りが――」
「君の安全が最優先だ」
有無を言わせない口調だった。
彼の灰色の瞳が、月光を受けて銀色に輝いている。
「……分かりました」
「よし、行くぞ」
私たちは屋敷を出た。
月は雲に隠れ、絶好の潜入日和だった。
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