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第十話
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ファイルを読み込みました。それでは、プロの女性向けライトノベル小説家として、指定のシーンを執筆いたします。
1-10. 騎士団入団式
王宮の謁見の間に初めて足を踏み入れた瞬間、私は息を呑んだ。
天井まで届く大理石の柱。壁一面を覆う金の装飾。深紅の絨毯が玉座まで一直線に延び、両脇には王国の紋章を刻んだ旗が整然と並ぶ。婚約者としてここに立っていた頃――いや、考えるのはやめよう。あの日々は終わったのだ。
新人騎士たちが謁見の間に整列する。私は列の中ほどに身を置き、背筋を伸ばした。周囲の騎士たちは皆、緊張で強張った表情を浮かべている。私も男の顔を作り、できるだけ目立たないように努めた。
重厚な扉が開く音が響いた。
王族の入場を告げるファンファーレが鳴り渡る。胸が跳ね上がるのを感じた。呼吸が浅くなる。手のひらにじわりと汗が滲んだ。
レオンハルト殿下が玉座の前に立った。
深い青の軍服に身を包んだ姿は、婚約していた頃と何も変わらない。いや、違う。婚約破棄の時よりも、王太子としての威厳が増している気がした。冷たく整った顔立ち。感情を見せない瞳。
殿下が騎士たちを一人ずつ見渡し始めた。
心臓の鼓動が耳に響く。どくん、どくん、と。まるで太鼓を叩かれているようだった。息を潜める。視線を落とす。どうか気づかれませんように。どうか――
殿下の視線が、私の方へ向かった。
全身が硬直した。血の気が引いていく感覚。冷たいものが背筋を這い上がる。目を伏せたまま、殿下の視線が私の顔を捉えるのを感じた。時間が止まったように長く感じられる。心臓が激しく打ち続ける。胸が苦しい。呼吸が、できない。
『エリアーナ、君は退屈だ』
あの日の言葉が蘇る。婚約破棄を宣告された謁見の間。冷酷な声。周囲の嘲笑。屈辱に震えた、あの日。
違う。今の私は騎士エリアスだ。復讐のために、ここにいる。
私は顔を上げた。
殿下の瞳と、正面から目が合った。
心臓が跳ね上がる。全身に電流が走るような感覚。殿下の青い瞳が、じっと私を見つめている。鋭く、深く。まるで心の奥底まで見透かすような視線。
バレた――?
恐怖が全身を支配した。膝が震える。喉が渇く。汗が首筋を伝う。殿下の表情は相変わらず無表情だったが、瞳だけが何かを語っているように見えた。
復讐のため。復讐のため。復讐のため。
心の中で繰り返す。私はこの男を見返すために騎士になったのだ。守るためじゃない。愛しているからじゃない。ただ、復讐のため。なのに、なぜ。なぜ心臓がこんなに苦しいのだろう。なぜ殿下の視線から目を逸らせないのだろう。
殿下が、わずかに目を細めた。
次の瞬間、殿下の視線は何事もなかったかのように次の騎士へと移った。
緊張の糸が一気に緩んだ。全身から力が抜ける。呼吸が戻ってくる。空気を貪るように吸い込んだ。生き返った、と思った。
気づかれなかった――?
いや、わからない。あの視線は、ただの偶然だったのか。それとも何か意味があったのか。殿下の表情からは何も読み取れない。冷静で、完璧な王太子の顔。
隣に立つ騎士が小さく息を吐いた。他の新人たちも、殿下の視線が過ぎ去ったことに安堵しているようだった。誰もが緊張に耐えている。私だけが特別ではない。そう自分に言い聞かせた。
殿下が口を開いた。
「新人騎士諸君。王国の盾となり、民の守護者となることを誓うか」
低く、威厳のある声が謁見の間に響く。
「誓います!」
騎士たちの声が一斉に重なった。私も声を張り上げた。低い声を意識して。男として。騎士として。
殿下は満足げに頷き、最後に一度だけ、もう一度私の方を見た。
ほんの一瞬。視線が交錯する。
殿下は何も言わなかった。表情も変えなかった。ただ、視線だけが、私の心臓を貫いた。
入団式は滞りなく終わった。だが私の心は、ずっと波立ったままだった。
1-10. 騎士団入団式
王宮の謁見の間に初めて足を踏み入れた瞬間、私は息を呑んだ。
天井まで届く大理石の柱。壁一面を覆う金の装飾。深紅の絨毯が玉座まで一直線に延び、両脇には王国の紋章を刻んだ旗が整然と並ぶ。婚約者としてここに立っていた頃――いや、考えるのはやめよう。あの日々は終わったのだ。
新人騎士たちが謁見の間に整列する。私は列の中ほどに身を置き、背筋を伸ばした。周囲の騎士たちは皆、緊張で強張った表情を浮かべている。私も男の顔を作り、できるだけ目立たないように努めた。
重厚な扉が開く音が響いた。
王族の入場を告げるファンファーレが鳴り渡る。胸が跳ね上がるのを感じた。呼吸が浅くなる。手のひらにじわりと汗が滲んだ。
レオンハルト殿下が玉座の前に立った。
深い青の軍服に身を包んだ姿は、婚約していた頃と何も変わらない。いや、違う。婚約破棄の時よりも、王太子としての威厳が増している気がした。冷たく整った顔立ち。感情を見せない瞳。
殿下が騎士たちを一人ずつ見渡し始めた。
心臓の鼓動が耳に響く。どくん、どくん、と。まるで太鼓を叩かれているようだった。息を潜める。視線を落とす。どうか気づかれませんように。どうか――
殿下の視線が、私の方へ向かった。
全身が硬直した。血の気が引いていく感覚。冷たいものが背筋を這い上がる。目を伏せたまま、殿下の視線が私の顔を捉えるのを感じた。時間が止まったように長く感じられる。心臓が激しく打ち続ける。胸が苦しい。呼吸が、できない。
『エリアーナ、君は退屈だ』
あの日の言葉が蘇る。婚約破棄を宣告された謁見の間。冷酷な声。周囲の嘲笑。屈辱に震えた、あの日。
違う。今の私は騎士エリアスだ。復讐のために、ここにいる。
私は顔を上げた。
殿下の瞳と、正面から目が合った。
心臓が跳ね上がる。全身に電流が走るような感覚。殿下の青い瞳が、じっと私を見つめている。鋭く、深く。まるで心の奥底まで見透かすような視線。
バレた――?
恐怖が全身を支配した。膝が震える。喉が渇く。汗が首筋を伝う。殿下の表情は相変わらず無表情だったが、瞳だけが何かを語っているように見えた。
復讐のため。復讐のため。復讐のため。
心の中で繰り返す。私はこの男を見返すために騎士になったのだ。守るためじゃない。愛しているからじゃない。ただ、復讐のため。なのに、なぜ。なぜ心臓がこんなに苦しいのだろう。なぜ殿下の視線から目を逸らせないのだろう。
殿下が、わずかに目を細めた。
次の瞬間、殿下の視線は何事もなかったかのように次の騎士へと移った。
緊張の糸が一気に緩んだ。全身から力が抜ける。呼吸が戻ってくる。空気を貪るように吸い込んだ。生き返った、と思った。
気づかれなかった――?
いや、わからない。あの視線は、ただの偶然だったのか。それとも何か意味があったのか。殿下の表情からは何も読み取れない。冷静で、完璧な王太子の顔。
隣に立つ騎士が小さく息を吐いた。他の新人たちも、殿下の視線が過ぎ去ったことに安堵しているようだった。誰もが緊張に耐えている。私だけが特別ではない。そう自分に言い聞かせた。
殿下が口を開いた。
「新人騎士諸君。王国の盾となり、民の守護者となることを誓うか」
低く、威厳のある声が謁見の間に響く。
「誓います!」
騎士たちの声が一斉に重なった。私も声を張り上げた。低い声を意識して。男として。騎士として。
殿下は満足げに頷き、最後に一度だけ、もう一度私の方を見た。
ほんの一瞬。視線が交錯する。
殿下は何も言わなかった。表情も変えなかった。ただ、視線だけが、私の心臓を貫いた。
入団式は滞りなく終わった。だが私の心は、ずっと波立ったままだった。
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