【完結】追放令嬢は海賊生活を謳歌する

当麻リコ

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28.裁縫は得意な方です

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「これは……」

アルフレッドの傷を見て言葉を失う。
バンダナ一つでどうにかしようなんて正気かと思えるくらいの深い傷だ。
よくこんな状態で後処理なんてやっていられたものだ。私だったら間違いなく病院に駆けつける。
まぁ船の上だから無理なんだけど。

「アホ。こんなん放置すんなよ」
「これは縫う必要があるわ。麻酔ないから痛いけど大丈夫?」

呆れるウィルに構わず、アルフレッドに聞く。
絶対痛いはずなのに、アルは脂汗も浮かべずに涼しい顔だ。
女性の前でなら気合いで痛みを止めるのだろうか。
だとしたら本当に筋金入りの女好きだ。

「へーきへーき。可愛いレーナが手当てしてくれるなら痛みなんて、」
「さすがにこれは無理だな。ワイアット呼んでくる」
「必要ないわ」

アルフレッドのナンパなセリフを遮って言うウィルに、即座に首を振る。

「あ? でも縫うんだろ? ワイアットじゃねぇと」
「私、出来るもの」

言って救急キットの中から縫合用の針と糸を取り出す。
しっかり消毒をして、テキパキと縫合の準備を整えていった。

「ちょっ……と待って、レーナがやるの……?」
「そりゃさすがに無理があるだろ……」

ピンっと糸を張って強度を確かめる私に、アルフレッドとウィルが引き攣った笑みを浮かべる。

「あら、私の手当てなら痛みもないんでしょ?」

だから私もにっこりと笑顔を返した。
そうしてお嬢様の暴走をなだめようとする二人を無視して縫合に取り掛かる。

彼らの心配をよそに、縫合は完璧だった。
もともと器用な方だし、鶏や豚の皮でこっそり何度も練習したからお手の物なのだ。

アルはちっとも痛がらなかった。
それは彼が我慢強いからというよりは、私の腕を疑惑の目で凝視していたからだろう。
ずっと息を止めていたんじゃないかしら。

「よし、完了。アル、お疲れ様」
「あ、うん……その、ありがとう」

気障なセリフも忘れてアルフレッドが素直に礼を言う。
なんの問題もなく縫合を終えたのが、余程意外だったらしい。

「おまえほんと何者なんだよ……」

ウィルが呆れとも感心ともつかない口調で言う。
それはこっちのセリフだと思いつつ、傷口にガーゼを当て包帯を巻いた。

アルフレッドの処置を終えるとすぐ次の怪我人に向かう。
ウィルはさすがにもう私の腕を疑うのはやめて、自分の仕事に戻っていった。

幸いこちら側の被害は小さく、怪我人も軽症がほとんどだった。
敵にどれほどの戦力があるかはわからないが、こちらが圧倒したらしい。
みんな陽気でおちゃらけた感じの船員がばかりなのに、その屈強な見た目は伊達ではないらしい。

本当に強かったんだ……なんて失礼な感慨を抱きながら、次々に怪我人たちの手当てを終えていった。
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