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37.陸上生活⑥
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十分もしないうちにワイアットを見つけることができ、無事に合流を果たす。
ワイアットは眼鏡をきらりと光らせて、繋がれた手をチラッと見た。
その後で「その男は案外油断ならないから気をつけた方がいい」と忠告めいた言葉を残してさっさと歩き出してしまった。
どういうことだろうとテオの顔を伺い見ると、ただ苦笑するだけだった。
ワイアットは少し偏屈なところのある船医だが、私に医療の知識と技術があるのを知って以来、何かと話しかけてくれるようになった。
主に知識の共有と勉強のためだったが、たまに日常の何でもない話や、船員たちにまつわる話も聞かせてくれた。
彼は全体的に線が細く、眼鏡の良く似合う理知的な顔立ちをしている。
白衣でも着せてしまえば、宮廷医と言われても信じられるくらいに理性的な立居振舞いをしている。
明らかに武闘派といった船員たちが多い中、ワイアットの存在は少し異質だ。
けれど見た目に反して、彼もかなり腕が立つらしい。
ウィルの船に戦えない人間なんて一人もいないのだ。
一体どこからこんな人間たちを集めてきたのだろうと不思議になるくらい、腕っぷしの強い男たちばかりだった。
「うん。私の方はこれで全部だ。レーナ、他に必要なものはあるかい」
「うーん……あ、そういえばハサミがひとつダメになってたわ」
「ではそれも買おう」
店員に声をかけ、医療用のハサミを出してもらう。
それからいくつか足りないものを挙げて、必要なものを買い足した。
「ふむ。こんなところか」
「結構早く済んだね」
医療品はひとつの店でまとめて買うので、買いまわる必要はない。
結構な荷物にはなってしまったが、人ごみの中を探し回るハメにならなくて良かった。
「ワイアットと渡り合うなんて、レーナ本当にすごいな」
「そうかな。足元にもおよばないと思うけど」
「いいや若いのによく勉強している。助手に欲しいくらいだ」
自分も若いくせに、ワイアットは少し年寄りじみたことを言う。
荷物を積みに再び船へと向かいながら三人で話をした。
重いものはすべて当然のように男性陣が持ってくれる。
さすがにもうテオと手は繋いでいない。
けれど私の両脇を固めるように二人が歩いてくれる。
テオもワイアットも、自然と私を守るような位置に常にいてくれるのだ。
気付いて、密かに気恥ずかしい気分になる。
大切な仲間である二人に、同じくらい大切と思われている感じが嬉しくてたまらなかった。
「勉強、好きだったから。本を読むのも」
「へぇ。エミリオに聞かせてやりたいね」
「あの男はいかに勉強をサボるかということにばかり頭を使っていた」
「二人は昔からエミリオと仲がいいの?」
「まぁそうだね。十代の頃からよくつるんでたかな」
「不本意だがな」
本当に心から不満そうにワイアットが言うので、思わず笑ってしまう。
こんなふうに言っているが、彼とエミリオが本当は仲良しなのを知っている。
「でも、エミリオの代わりによく航海日誌書いてあげてるよね」
「よく気付いたねレーナ」
「日誌読むの好きなの」
「別にあいつのためではない! あいつが書くと情報がまったく足りないからっ、」
「それにエミリオがサボった仕事を肩代わりしてあげてるのも知ってるよ」
「なっ、ちがっ、」
「そのあとでエミリオに医務室の手伝いさせてるの楽しそうだよね」
「ねー」
「それは当然の代償としてやらせてるまでだ! 別に楽しくなんかない!」
怖い顔で憤慨しているが耳が赤い。
ワイアットがエミリオを大好きなことなんてみんな知っている。
口では文句ばかり言っているが、エミリオのフォローには抜かりがない。
きっとツンデレさんというやつだ。
ワイアットは案外かわいらしい人なのだ。
ワイアットは眼鏡をきらりと光らせて、繋がれた手をチラッと見た。
その後で「その男は案外油断ならないから気をつけた方がいい」と忠告めいた言葉を残してさっさと歩き出してしまった。
どういうことだろうとテオの顔を伺い見ると、ただ苦笑するだけだった。
ワイアットは少し偏屈なところのある船医だが、私に医療の知識と技術があるのを知って以来、何かと話しかけてくれるようになった。
主に知識の共有と勉強のためだったが、たまに日常の何でもない話や、船員たちにまつわる話も聞かせてくれた。
彼は全体的に線が細く、眼鏡の良く似合う理知的な顔立ちをしている。
白衣でも着せてしまえば、宮廷医と言われても信じられるくらいに理性的な立居振舞いをしている。
明らかに武闘派といった船員たちが多い中、ワイアットの存在は少し異質だ。
けれど見た目に反して、彼もかなり腕が立つらしい。
ウィルの船に戦えない人間なんて一人もいないのだ。
一体どこからこんな人間たちを集めてきたのだろうと不思議になるくらい、腕っぷしの強い男たちばかりだった。
「うん。私の方はこれで全部だ。レーナ、他に必要なものはあるかい」
「うーん……あ、そういえばハサミがひとつダメになってたわ」
「ではそれも買おう」
店員に声をかけ、医療用のハサミを出してもらう。
それからいくつか足りないものを挙げて、必要なものを買い足した。
「ふむ。こんなところか」
「結構早く済んだね」
医療品はひとつの店でまとめて買うので、買いまわる必要はない。
結構な荷物にはなってしまったが、人ごみの中を探し回るハメにならなくて良かった。
「ワイアットと渡り合うなんて、レーナ本当にすごいな」
「そうかな。足元にもおよばないと思うけど」
「いいや若いのによく勉強している。助手に欲しいくらいだ」
自分も若いくせに、ワイアットは少し年寄りじみたことを言う。
荷物を積みに再び船へと向かいながら三人で話をした。
重いものはすべて当然のように男性陣が持ってくれる。
さすがにもうテオと手は繋いでいない。
けれど私の両脇を固めるように二人が歩いてくれる。
テオもワイアットも、自然と私を守るような位置に常にいてくれるのだ。
気付いて、密かに気恥ずかしい気分になる。
大切な仲間である二人に、同じくらい大切と思われている感じが嬉しくてたまらなかった。
「勉強、好きだったから。本を読むのも」
「へぇ。エミリオに聞かせてやりたいね」
「あの男はいかに勉強をサボるかということにばかり頭を使っていた」
「二人は昔からエミリオと仲がいいの?」
「まぁそうだね。十代の頃からよくつるんでたかな」
「不本意だがな」
本当に心から不満そうにワイアットが言うので、思わず笑ってしまう。
こんなふうに言っているが、彼とエミリオが本当は仲良しなのを知っている。
「でも、エミリオの代わりによく航海日誌書いてあげてるよね」
「よく気付いたねレーナ」
「日誌読むの好きなの」
「別にあいつのためではない! あいつが書くと情報がまったく足りないからっ、」
「それにエミリオがサボった仕事を肩代わりしてあげてるのも知ってるよ」
「なっ、ちがっ、」
「そのあとでエミリオに医務室の手伝いさせてるの楽しそうだよね」
「ねー」
「それは当然の代償としてやらせてるまでだ! 別に楽しくなんかない!」
怖い顔で憤慨しているが耳が赤い。
ワイアットがエミリオを大好きなことなんてみんな知っている。
口では文句ばかり言っているが、エミリオのフォローには抜かりがない。
きっとツンデレさんというやつだ。
ワイアットは案外かわいらしい人なのだ。
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