【完結】追放令嬢は海賊生活を謳歌する

当麻リコ

文字の大きさ
40 / 91

40.陸上生活⑨

しおりを挟む
「名残惜しいけどそろそろ行こうかな」

歌うように言ってアルフレッドが席を立つ。
持っていたグラスが空になったから、新しく注ぎに行くのだろう。

「……意地悪ね」
「ははっ。拗ねた顔も可愛いな」

すっかりいつもの調子に戻ったアルが、軽やかな足取りで中央のテーブルへ戻っていく。
彼のおかげで余計に酔いが回ってしまった。
火照った頬を自分の手で仰いでみても、ちっとも熱が下がりそうにない。
そろそろ切り上げた方がいいかもしれない。

立ち上がって、アランのところへ行こうとすると足が少しふらついた。
自覚以上に、結構本格的に酔っているみたいだ。

「大丈夫かおまえ」
「……ダメかも」

ぬっと伸びてきた手が私の二の腕を掴んで支える。
それがウィルの手だと気付き、強張りかけた身体からすぐに力が抜けた。
酔った顔を見られるのが恥ずかしくて、逆側の手でとっさに顔を隠す。

「真っ赤じゃねーか」
「ちょっと酔っちゃって」
「それは見りゃわかる。アルになんか言われたのか」
「え?」
「さっきなんか話してたろ」
「ああ……少しね。でも別にアルのせいじゃ、」

言いかけて言葉が途切れる。
まぁアルのせいと言えばアルのせいとも言える。
いつもああやって女性を口説いているのだろう。
あんなの、簡単に落とせる。落とし放題だ。恐ろしい。秒でハーレムが形成できそうだ。あの口説き文句を本気にしたらきっと地獄を見ることになる。
思わず身震いする私に、ウィルが眉根を寄せた。

「なんか嫌なこと言われたのか。あとで船首に吊るしとくか?」
「ぶっ、物騒なこと言わないでよ。そんなんじゃないから」
「ならいいが……言えないようなひどいこと、」
「ちがうったら」

思わず苦笑する。

「いつもみたいに口説かれてただけ。顔が赤いのは本当に酔っただけよ」
「そうか……けどま、もう休んだ方が良さそうだな」
「うん、そうするつもり。最後にアランに挨拶しようと思って、」
「おいお前ら! そろそろ解散だ!」
「うぃー」
「あいよー」
「えっ、いいよまだみんな飲み足りないでしょ⁉」
「いいんだって。まだ飲みたい奴は二次会行きゃいい」
「でも、」
「下で騒いでたらおまえが寝れないだろ」
「それは……けどそれくらい平気だよ」
「ばぁか。昨日も遅くまで寝れなかったんだろ。今日はちゃんと寝ろ」

ポンと頭に手を置かれ、ぐいぐいと雑に撫でられる。

「……じゃあ、そうする」
「おう。ガキが遠慮すんな」
「ガキじゃないんですけど」
「ガキだろ。酔っ払い。片付けはこいつらがやっとくからシャワーでも浴びて酔い覚ましてこい」
「うん。ここはいいから行っておいでレーナ」
「そそ。女の子の夜更かしはいいことないよ」
「お、なんなら俺と一緒に入る?」
「エミリオ!」

テオとアルが気遣ってくれたあとで、エミリオが調子のいいことを言ってワイアットに怒られる。

「あははっ」

思わず笑う。エミリアはいつもこんな調子だ。
エミリオが「本気なんだけどな」と拗ねたように続けて、ワイアットに叩かれた。
ちっとも痛くなさそうだ。

「ほら、いいから行ってこい」
「うん。ありがとうみんな。じゃあお言葉に甘えて、行ってくるね」
「いってらっしゃい」

数人の声が重なって、アランがひらひらと手を振ってくれた。

「おやすみレーナ」
「おやすみアラン。誕生日、本当におめでとう」
「うん、コンパスありがとう。すごく嬉しかった」

最後にアランと笑顔を交わし合ってから、みんなにおやすみなさいと告げる。

たぶんほとんど全員が二次会に行くのだろう。
私の睡眠時間を気遣って、わざわざ外のお店に。

ありがたくて、なんだかとてもくすぐったい気持ちだった。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!

柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。

秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。 「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」 第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。 着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。 「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。 行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。 「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」 「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」 氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。 一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。 慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。 しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。 「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」 これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。

鉄壁騎士様は奥様が好きすぎる~彼の素顔は元聖女候補のガチファンでした~

二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
令嬢エミリアは、王太子の花嫁選び━━通称聖女選びに敗れた後、家族の勧めにより王立騎士団長ヴァルタと結婚することとなる。しかし、エミリアは無愛想でどこか冷たい彼のことが苦手であった。結婚後の初夜も呆気なく終わってしまう。 ヴァルタは仕事面では優秀であるものの、縁談を断り続けていたが故、陰で''鉄壁''と呼ばれ女嫌いとすら噂されていた。 しかし彼は、戦争の最中エミリアに助けられており、再会すべく彼女を探していた不器用なただの追っかけだったのだ。内心気にかけていた存在である''彼''がヴァルタだと知り、エミリアは彼との再会を喜ぶ。 そして互いに想いが通じ合った二人は、''三度目''の夜を共にするのだった……。

グリモワールの塔の公爵様【18歳Ver】

屋月 トム伽
恋愛
18歳になり、結婚が近いと思われたプリムローズは、久しぶりに王都の邸にいる婚約者に会いに行っていた。 だけど、義姉クレアと婚約者ジャンのベッドインを目撃してしまい、婚約破棄されてしまったプリムローズ。 プレスコット伯爵家から追い出すための名目で、金持ちの子爵様に売られるも同然の後妻に入ることになったプリムローズ。 そんなある日、夜会で出会ったクライド・レイヴンクロフト次期公爵様から結婚をもうしこまれる。 しかし、クライドにはすでに親の決めた婚約者がおり、第2夫人でいいなら……と、言われる。 後妻に入るよりは、第2夫人のほうがマシかもとか思っていると、約束だ、と頬にキスをされた。 「必ず迎え入れる」と約束をしたのだ。 でも、クライドとのデートの日にプリムローズは来なかった。 約束をすっぽかされたと思ったクライドは、その日から一向にプリムローズと会うことはなかった。 時折出す手紙のやり取り。プリムローズがどうしたいのかわからないクライドは困惑していた。 そして、プレスコット家での現状を知り、クライドはプリムローズをプレスコット伯爵邸から連れ出し、グリモワールの塔に連れて行き……。 最初は、形だけの結婚のつもりかと思っていたのに、公爵様はひどく甘く、独占欲の固まりだった。 ※以前投稿してました作品を【18歳Ver】に書き直したものです。

【完結】王子から婚約解消されましたが、次期公爵様と婚約して、みんなから溺愛されています

金峯蓮華
恋愛
 ヴィオレッタは幼い頃から婚約していた第2王子から真実の愛を見つけたと言って、婚約を解消された。  大嫌いな第2王子と結婚しなくていいとバンザイ三唱していたら、今度は年の離れた。筆頭公爵家の嫡男と婚約させられた。  のんびり過ごしたかったけど、公爵夫妻と両親は仲良しだし、ヴィオレッタのことも可愛がってくれている。まぁいいかと婚約者生活を過ごしていた。  ヴィオレッタは婚約者がプチヤンデレなことには全く気がついてなかった。  そんな天然気味のヴィオレッタとヴィオレッタ命のプチヤンデレユリウスの緩い恋の物語です。  ゆるふわな設定です。  暢気な主人公がハイスペプチヤンデレ男子に溺愛されます。  R15は保険です。

「俺にしがみつくのはやめろ」と言われて恋が覚めたので、しがみつかずにリリースします。相容れないとほざくあなたは、今、私に捨てられましたわ

西野歌夏
恋愛
前世でフラれた記憶を思いだしたフローラ・ガトバンは、18歳の伯爵令嬢だ。今まさにデジャブのように同じ光景を見ていた。 エイトレンスのアルベルト王太子にまつわるストーリーです。 ※の付いたタイトルは、あからさまな性的表現を含みます。苦手な方はお気をつけていただければと思います。 2025.5.29 完結いたしました。

処理中です...