【完結】追放令嬢は海賊生活を謳歌する

当麻リコ

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45.襲撃の朝

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大荒れの一日だった。

外は私の心模様を写したような嵐で、船の揺れも激しかった。
船旅に慣れた身体でも、寝不足の頭ではうっかり船酔いしてしまいそうだった。


「レーナ」

ノロノロと着替えを終えて部屋を出ようとしたところでウィルが来る。
顔を見ることは出来なかった。

「……どうしたの」
「おまえこそどうした? 具合悪いんだったら休んどけ」
「いいの……何かあったの?」
「本当に大丈夫か……? まぁちょうどいい。今日は予測通り時化だ。危ねぇから部屋で一日休んでろ」

昨日までだったら信じていただろう。
言葉通りに受け取って、気遣いに感謝して、でも大丈夫だから手伝うとか、自分の仕事くらいちゃんとできるよ、なんて言って。
いいから大人しくしてろとか役立たずは引っ込んでろとか、手を変え品を変え言って私を部屋に留まらせるのに素直に従っていた。

でももう知ってしまっている。
これから商船を襲いに行くのだと。
朝の早い時間に全てを終わらせて、私に何も気付かせないまま日常に戻るつもりだったのか。

「私も行くわ」
「行くって厨房か? 今日はアランに任せとけって。あいつもおまえ手伝ってるおかげでだいぶマシに、」
「違う」
「メシの心配ならすんなって。あとでちゃんと持ってきてやる」
「商船によ」

きっぱり言うと、ウィルがお喋りを止めた。
笑みを引っ込めた端正な顔は、感情を抜くと恐ろしいほどに整っていることに気付く。

「どこでそれを」
「聞かれたくないなら私のテリトリーで話さないで」

無茶なことを言っている。
厨房と食堂は確かに私が主に立ち働く場所ではあるが、そもそもこの船自体ウィル達のテリトリーだ。そこに私が混ざりこんだだけ。
でも、無理やり連れてきたのはウィルなのだ。
これくらいの強引な主張を通してくれたっていいじゃないか。
八つ当たり気味にそう思う。

「……あそこにいたのか。気配消すのがうまいな」

すぐに思い至ったのか、諦め交じりのため息をついてウィルが頭を抱えた。

「邪魔はしない。口出しもしない。一緒に行くだけ」

無茶なことを言っている。
私には内緒で進めたかった事だろう。見せたくないのだ。それは優しさからくる気遣いなのか、それとも別の何かか。
でも私は知らなくてはいけない。
ここでこのまま海賊として暮らしていくつもりなら。

「……わかった。連れてってやる」

どうなっても知らねぇからな、と投げやりな口調で言って部屋を出ていく。

いつのまにか緊張に強張っていた身体からホッと力を抜き、朝のストレッチを始める。
指先まで血が廻るのを確認して、部屋を出た。

食堂に行くと、すでに簡単な朝食を始めていた船員たちが、私の姿に気付いて目を丸くしてざわつき始めた。
何人かはウィルを責めるような視線を投げているが、本人は知らん顔で朝食を食べている。
むしろ「俺は悪くねぇ」とばかりにちょっと不機嫌オーラが出ていた。

少し申し訳なく思う反面、やはり知らなかったのは私だけなのだなと改めて思い知って何とも言えない気持ちになった。
子供扱いなのか、いまだお客様扱いなのか。信用されていないのか腫れ物扱いなのか。それとも女というものはそういうところから遠ざけるべきと思われているのか。

いずれにせよ、どれも嬉しくはなかった。
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