【完結】追放令嬢は海賊生活を謳歌する

当麻リコ

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61.無様な告白

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ウィルの手が私の頭に触れて、毛の流れに沿うように何度も行き来する。

「ホントに短くなっちまったんだなぁ……」
「……短いの、好きじゃない?」

どこかしみじみと言われて切なくなる。
そんなに前の長さが気に入っていたのだろうか。

そういえばラナの髪も長かった。
綺麗な赤毛は緩くウェーブして、まるで炎のようだ。
豪快で快活な彼女によく似合っている。

「いや別に。こっちのが動きやすそうだしおまえによく似合ってる」
「ホント?」
「ああ。丁度良かったんじゃねぇか。毎日テオにやらせんのも面倒だろ」
「えっ、テオやっぱ面倒くさがってた⁉」
「ばか、おまえがだよ」
「私?」
「毎朝頼みに行くの億劫だろ」
「そんなことないよ。いつもいろんなアレンジしてくれるから楽しかったし」
「あっそ」
「なによ」
「なんでもねぇよ」

つまらなそうに言われてムッとする。
短い髪に興味がないのだとしても、もうちょっと関心を持ってくれたっていいのに。

でも、髪型と髪質を気に入って誘拐したのだとしたら、がっかりする気持ちもわからなくはない。

そう考えて深く落ち込む。
私の価値ってそれだけしかないのだろうか。

言われてみれば髪を切って以来なんか素っ気なくない?
この島についてから女の人のところに入り浸りだし。
まぁ私も避けてるからそのせいもあるんだけど。

無言でジトっとした目を向けると、ウィルがわずかにたじろいだ。

「……なんだよ」

視線のせいで責められているような気分にでもなっているのか、少し気まずげだ。

「ねぇ、……私がいると役に立つ?」
「ああ? そらもちろん。料理も剣技もピカイチだしな」

こういう風に答えてくれるってわかっていてこんなこと聞くのは卑怯だ。
わかっていて、ウィルから離れなくていい理由を探している。

「髪が短くても?」
「髪がなんか関係あんのか?」
「だってウィル、髪フェチでしょ」
「ちげぇわばか」

どこ情報だ、と呆れたようにウィルが顔を顰めた。
そうしてまた私の頭を撫でる。

「だいたいそうだとして、さっき言ったろ。よく似合ってるって」
「……言った」
「お世辞とか言わねぇよ。本心だ」
「うん……」
「なんだ? なんか悩んでんのか?」
「別に。綺麗な人いっぱい見てちょっとへこんでるだけ」
「ぶはっ、おまえでもそういうこと考えるんだな」

何にウケたのか、笑いながら私の頭をわしゃわしゃと掻き回す。

「考えるわよ。私をなんだと思ってるのよ」

今までなら女らしさの優劣なんて確かに考えたこともなかったけれど。
今は目の前で屈託なく笑うこの男に、少しでもよく思われたいなんて卑しいことを考えている。

「なにって。強くてかっこいい女だと思ってるよ」

さらりと言われて言葉に詰まる。

それはずっと誰かに言ってほしかった言葉だ。

ずっとそういう人間になりたくて、重ねた努力は報われずに追放された。

欲しくてたまらなかった評価を、この男がくれるのか。

泣きそうなのを見られたくなくて、ベッドの上で膝を抱えて俯く。
ウィルにとっては特に意味もない、からかいの延長なのかもしれなくても嬉しかった。

「レーナ……?」

頭を撫でる手が止まる。
私のリアクションに困惑しているのだろう。
戸惑いが手の平から伝わった。

「……今日は女の人のところに行かないでって言ったら困る?」

言った瞬間、馬鹿なことを言ったと後悔した。
顔から血の気が引いていく。

おそるおそる顔を上げてみると、ウィルが怪訝な顔をしたあとで、何かを察したように手がゆっくり離れていった。

卑怯な言い方をしたことを深く恥じて、一瞬で顔が熱くなる。

なんだこの気持ち悪い女は。

自分を罵倒したい気持ちでいっぱいだった。
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