【完結】追放令嬢は海賊生活を謳歌する

当麻リコ

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67.返り討ち ※微性描写ありですご注意ください

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あっという間の出来事だった。

ベッドに転がされた身体は小さくバウンドし、体勢を整えるより早く反転させられベッドに仰向けに押し倒される。
私の身体を跨ぐようにウィルが膝立ちで上に乗って、まるで敵を見るような目で私を見下ろした。

「な、なに、どうし、」

何が起こったのかわからなくて、訳を聞きたかったがウィルの視線に制されて口を噤んだ。
無言のまま、ウィルの指先が喉元にそっと触れた。

野生の獣のような獰猛な目つきをしている。
心臓が大きく脈打って、喉がこくりと鳴った。

ウィルは何も言ってくれない。
喉に触れたままの指が、鎖骨まで辿るように動いてウィルが身を屈めた。

食べられる、と思った。

思って、思考に空白が生まれる。
無意識に顎を少し上げ、自ら差し出すように喉元を晒す。
導かれるようにウィルの唇が首筋に近付く。

触れられた瞬間、肩がぴくりと跳ねた。

目を閉じて、犬歯が喉笛に刺さり、噛み千切られる想像をした。

それはなんだかとても幸福なことのように思えた。
けれど、そうはならなかった。

「あっ!……ッぅ、」

突然の感覚に目を見開く。
ぬるりとした感触が喉を這ったのだ。
後頭部にしびれが走る。
その動きは止まらずに、首筋やうなじ、鎖骨を容赦なく嬲っていく。

「っ、あッ、……んっ、や、」

そのたびに小さな甘ったるい声が勝手に自分の口から飛び出して、堪えることが出来なかった。

初めての感覚に翻弄されていると、服の裾から武骨な手が侵入して身体が強張る。
するすると這い上がってくる熱い手の平が、胸のふくらみのすぐ下で止まった。

何が起きてるの。
何が起こるの。

混乱に涙がにじむ。
手が再び動き出す。

「やっ、ま、待って、ダメ!」

なんとか静止の声を振り絞っても、ウィルは待ってくれなかった。
優しさのかけらもない強さで、無遠慮に胸を揉みしだく。

初めて胸を他人に触られて、それが好きな人相手だというのに恐怖を感じた。

だってさっきからウィルが何もしゃべってくれない。
せめて一言、まぁ今日はお前で我慢してやるとか、そんなデリカシーのない言葉でもあれば違ったのに。
ほんの少しでも欲情してくれているのがわかれば、この身をゆだねることができるのに。

でもそうじゃない。

ただ怒りに任せてこの身体を荒らそうとしているのだ。
そんなの、怖くないはずがなかった。

知らず、涙がボロボロと流れ始めた。
せめて終わるまで泣き声は出さないでいよう、と歯を食いしばって必死に耐えていると、はーっ、と深いため息が聞こえてきた。

「……クソ馬鹿アバズレ処女ビッチ」

やけに疲れた声でひどいことを言われて涙が引っ込んだ。
そのままどさっと大きな身体が私の上に倒れ込む。

「そんなブルブル震えて鼻水垂れ流しで泣くやつ相手に勃つヤロウがいるかよ」
「はっ、はなみず、でてないしっ」

ず、と鼻を啜りながら反論する。

覆いかぶさるような体勢のままだったが、雰囲気がいつものウィルに戻っているのに気付いてホッと息を吐きだした。

「……悪かったよ。脅かしすぎた」

決まり悪そうに言って、くしゃくしゃと私の頭を掻き回す。

がちがちに強張っていた身体から力を抜くと、引っ込んだはずの涙がまたひとつこぼれ落ちた。

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