【完結】追放令嬢は海賊生活を謳歌する

当麻リコ

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73.アルフレッドとレジーナ

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雑談をしながら食堂の片付けを終える。

「そういえば話ってなんだったの?」

明かりを消して、廊下に出ながら問う。
アルの話とはなんなのか。もしかしたら雑談の中に話したいことが紛れていたのだろうか。

「告白をしようと思って」
「告白?」
「そう」

首を傾げる私に、アルが手を差し出す。
特に抵抗もなくその手に掴まって、導かれるように歩き出す。

「ずっと伝えようか迷ってたんだ。けど、やっと決めた」
「なぁに? なにか隠し事でもしてるの?」
「ふふふ、そう。とっておきの秘密」

楽しそうに話すアルフレッドに、私もつられて小さく笑う。
私の手を引いて少し先を歩くアルフレッドが、振り返って意味深に微笑んだ。

「どこに向かってるの?」
「星が綺麗だから外で話をしよう」
「素敵ね」

外に出ると甲板はすでに粗方かたづけられていて、船員たちは皆船内に引き上げたようだった。
静かな船上で、勧められた椅子に腰を掛けるとアルも隣に座った。

空にはアルの言う通り星が無数に瞬いて、もう何度も目にしているというのに改めて見惚れてしまう。

「本当に綺麗……」
「レーナの方がずっと綺麗だ」
「ふふ、アルったらまたそんなこと言って」
「本気で思ってる」

声のトーンが変わったことに気付いて、空から視線をアルに移す。
いつもの軽口とは違うのだと、すぐに気付いた。
アルはじっと私を見ていて、笑みに近い表情をしていたけれど目は真剣だった。

「好きだよ」

眩しいものでも見るように目を細めながら、いつも口数が多いはずのアルがそれだけ言った。
だからそれが本気なのだとすぐにわかった。

心臓が大きな音を立てて、キンと耳鳴りがする。
波の音が消えて、一瞬自分がどこにいるのかわからなくなった。

「……いつ、から」
「ずっとだ」
「ずっと……?」
「うん。もう何年も前から」

そんなはずはない。だってこの船に乗ってからまだ一年だ。なのにどうしてそんなことを。
それに彼に好かれるようなことを何もしていない。船の中にたった一人の女だからという理由だけで好かれるとは到底思えなかった。

「レジーナ。俺はキミと会ったことがある」
「っ、どうして、」

唐突に本当の名前を呼ばれて動揺する。

彼は一体何者なのか。私を連れ戻しに来た誰かなのか。いやそんなはずはない。アルは私が船に乗る前からここのメンバーだったのだから。
では私がここに来たこと自体が仕組まれたことだったのか。でも一体なんのために。

さまざまな疑念が脳内に渦巻く。

その混乱を見て取ったのか、アルが困ったように苦笑した。

「安心して。敵じゃないから」

言って静かに立ち上がる。
私の正面に来ると、スッと跪き頭を垂れた。

「……レジーナ・アーヴァイン嬢。不躾な質問をお許しください。貴女はなぜ強く在れるのですか」

少し芝居がかったセリフ。
その言葉には聞き覚えがあった。

記憶の線がゆっくりと繋がっていく。

切実な瞳。
苦しそうに歪む顔。
必要以上に理性的で無感動に見えていた彼。
垣間見えた本音。

「ウォルターズ、侯爵家の……」

無意識に口にした言葉に、アルが顔を輝かせた。
今まで見たこともないくらい嬉しそうに笑うその表情は、記憶の中の彼とは重ならない。
だって彼の笑顔なんて、一度も見たことがなかったのだから。

「本当に……? だって、全然、その……」
「あはは。あの頃は真面目な優等生でつまんない人間だったからね」

照れくさそうに言って、それから大きくため息をついて両手で顔を覆いながら脱力したようにその場にうずくまる。

「……良かった。覚えててくれた。なんかもうそれだけで十分」

噛みしめるように呟かれた声は少し滲んで、上げられた顔には泣き笑いの表情が浮かんでいた。

それはやはり、私の記憶の中のアルフレッド・ウォルターズとは大きく異なっていた。
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