独り歩き

ゴんざェもん

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独楽

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しゃがれた声を張り上げる。

レタスの値段が下がったが、相変わらず夏野菜は高止まり。うちの八百屋も爺さんの代からからだが、ドンドン経営が厳しくなる。

大通り沿いに面して、古い大きな赤い庇には喜八百きやおの文字。昔からのお客を始め、最近ではスーパーよりも安いということで若いお客や外国人が写真を撮りながら訪れるようになった。

不況も不況。それに異常気象。出来るだけ国産野菜を仕入れているが、輸入品に頼ることも多くなった。今年の長野のナスは美味い。あと、茨城のレタスは美味い。

「もやし2つと、にんじん、玉ねぎで、800円に負けとくよ。またよろしくネ!」

若いお客はイヤホンから音漏れをしながら軽く会釈して去っていった。

時刻は四時を回ったところ。いつもなら5時前後お客が増える時間だ。

「ちょっくら休んでくるワ!5時には戻るンデ!よろしくネ!」

店の奥からカミさんの声がするのが聞こえる前に、新聞、煙草、小銭を持って外に出た。

大分秋めいてきて、気温も30度を下回る日が3日目になった。今日も今日とて、道の向かいの喫茶店へ行く。

親父と景気について軽く話したら、いつものアイスコーヒーを若い店員が運んできた。

「アリガトネ!今日もンマイワ!」

新聞には、1面に新政権の政策と人事一覧が載っており、サッと目を通して、煙草に火を点ける。そして、スポーツ面で昨日の野球の結果に目を通す。

「若い人、頑張ってンナァ!」

カウンターの向こうで親父が口角を上げて答え、グラスを回収して回る若い店員はマスク越しに笑みを見せる。

「さてと、また来るワ!」

親父に小銭を全部渡して、ドアを開ける。背中を丸めて横断歩道を渡っていく。

いつもの調子で仏さんもありがとさん。
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