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それぞれの夜
14.名探偵アメリア2
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ジジ様は相変わらず黙ったままなので、私は"憶測"の話が止まらなくなっていた。
「パーティーがお開きになる前に、その手に隠し持った小瓶をこの屋敷のどこかに置いていく気でしょう」
ジジ様はさっきから左手を握り締めたままでした。私が注意深く見ているせいで、その小瓶を隠しそびれていたのでしょう。
「クロエお嬢様を困らせるような方は、このアメリア•ロベルタが許しません」
「……勇敢な侍女だこと。それなら、動機は何かしら?」
アメリアは言葉に詰まった。形勢逆転だ。
「人を殺すのには、それなりに理由が必要でしょう」
「……聞いていたんだな」
フレデリック様の声は震えていました。ジジ様は何も答えません。
「あの夜、聞いていたんだな。俺とエミリアの話を……」
「ええ、聞いていないと言ったのは嘘よ。あんまり大きな声で話していたから聞こえたのよ」
「私がフレデリックの家に行くと、エミリアが来ていたの。なんだか、荷物と取りに来た、とか言っていたわ」
「彼女と昔付き合っていたことは何となく分かっていた。だから、息を潜めて二人の会話を聞いていたわ」
ーーそれなら、俺の子かもしれないじゃないか。
「フレデリックの怒鳴る声を初めて聞いたわ。彼女も相当に怒っていた」
ーーいいえ、貴方の子じゃない。調べなくても分かるわ。
ーー頼むから、クロエを不幸にさせないでくれ。誰の子か調べてからでも遅くはないだろう。
「咄嗟に思ったのは、もしもフレデリックの子だったら私は捨てられてしまうってことよ」
ジジ様はコツコツと規則的なリズムで机を叩きました。
「それから、もうひとつ。彼女と交渉しようと思った。その子どもを育てさせて欲しいって」
コツコツと、一定で狂いもない。
「まさか、嘘だったなんてね。林檎酒をばかすか飲んでいたのを見て呆れたわ。こんな女がフレデリッックお近くにいるなんて危険すぎる……だから殺してやろうと思ったの」
ドンっと鈍い音がしました。それまで規則正しい音を立てていた手で、テーブルを強く叩いたせいです。
彼女は狂っている……その場にいた全員が思ったことでしょう。
「彼女、私が差し出す林檎酒を疑いもせずに飲んだわ。毒が完全に回ってしまう前に、私はその場を離れたの。絶好のタイミングだったわね」
誰の前でエミリア様の目から光が消えていくのか、ジジ様にとってはゲーム感覚だったのでしょうか。
「彼女が落ちて行った時、少しだけ罪の意識を感じたわ。もしかしたら、私の勘違いで尊い命を奪ったかもしれないって……」
ジジ様は祈るような仕草をしたあと、ぱっと顔を輝かせて、心の底から安堵したような穏やかな笑顔を浮かべていました。
「でも、彼女本当に嘘をついていたのね。良かったわ、これで今夜ぐっすり眠れそうよ」
「あとはこちらで聞きましょう。ジジ•ウォーカーさん」
「じゃあね、皆様。愛してるわ、フレデリック」
「パーティーがお開きになる前に、その手に隠し持った小瓶をこの屋敷のどこかに置いていく気でしょう」
ジジ様はさっきから左手を握り締めたままでした。私が注意深く見ているせいで、その小瓶を隠しそびれていたのでしょう。
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「……勇敢な侍女だこと。それなら、動機は何かしら?」
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「ええ、聞いていないと言ったのは嘘よ。あんまり大きな声で話していたから聞こえたのよ」
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ーーそれなら、俺の子かもしれないじゃないか。
「フレデリックの怒鳴る声を初めて聞いたわ。彼女も相当に怒っていた」
ーーいいえ、貴方の子じゃない。調べなくても分かるわ。
ーー頼むから、クロエを不幸にさせないでくれ。誰の子か調べてからでも遅くはないだろう。
「咄嗟に思ったのは、もしもフレデリックの子だったら私は捨てられてしまうってことよ」
ジジ様はコツコツと規則的なリズムで机を叩きました。
「それから、もうひとつ。彼女と交渉しようと思った。その子どもを育てさせて欲しいって」
コツコツと、一定で狂いもない。
「まさか、嘘だったなんてね。林檎酒をばかすか飲んでいたのを見て呆れたわ。こんな女がフレデリッックお近くにいるなんて危険すぎる……だから殺してやろうと思ったの」
ドンっと鈍い音がしました。それまで規則正しい音を立てていた手で、テーブルを強く叩いたせいです。
彼女は狂っている……その場にいた全員が思ったことでしょう。
「彼女、私が差し出す林檎酒を疑いもせずに飲んだわ。毒が完全に回ってしまう前に、私はその場を離れたの。絶好のタイミングだったわね」
誰の前でエミリア様の目から光が消えていくのか、ジジ様にとってはゲーム感覚だったのでしょうか。
「彼女が落ちて行った時、少しだけ罪の意識を感じたわ。もしかしたら、私の勘違いで尊い命を奪ったかもしれないって……」
ジジ様は祈るような仕草をしたあと、ぱっと顔を輝かせて、心の底から安堵したような穏やかな笑顔を浮かべていました。
「でも、彼女本当に嘘をついていたのね。良かったわ、これで今夜ぐっすり眠れそうよ」
「あとはこちらで聞きましょう。ジジ•ウォーカーさん」
「じゃあね、皆様。愛してるわ、フレデリック」
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