【完結】お嬢様を困らせる様な方はこのアメリアが許しません!〜侍女アメリアの秘密の日記帳〜

桐野湊灯

文字の大きさ
14 / 16
それぞれの夜

14.名探偵アメリア2

しおりを挟む
 ジジ様は相変わらず黙ったままなので、私は"憶測"の話が止まらなくなっていた。

「パーティーがお開きになる前に、その手に隠し持った小瓶をこの屋敷のどこかに置いていく気でしょう」

 ジジ様はさっきから左手を握り締めたままでした。私が注意深く見ているせいで、その小瓶を隠しそびれていたのでしょう。

「クロエお嬢様を困らせるような方は、このアメリア•ロベルタが許しません」

「……勇敢な侍女だこと。それなら、動機は何かしら?」

 アメリアは言葉に詰まった。形勢逆転だ。

「人を殺すのには、それなりに理由が必要でしょう」

「……聞いていたんだな」

 フレデリック様の声は震えていました。ジジ様は何も答えません。

「あの夜、聞いていたんだな。俺とエミリアの話を……」

「ええ、聞いていないと言ったのは嘘よ。あんまり大きな声で話していたから聞こえたのよ」

「私がフレデリックの家に行くと、エミリアが来ていたの。なんだか、荷物と取りに来た、とか言っていたわ」

「彼女と昔付き合っていたことは何となく分かっていた。だから、息を潜めて二人の会話を聞いていたわ」

ーーそれなら、俺の子かもしれないじゃないか。
 
「フレデリックの怒鳴る声を初めて聞いたわ。彼女も相当に怒っていた」

ーーいいえ、貴方の子じゃない。調べなくても分かるわ。

ーー頼むから、クロエを不幸にさせないでくれ。誰の子か調べてからでも遅くはないだろう。

「咄嗟に思ったのは、もしもフレデリックの子だったら私は捨てられてしまうってことよ」

 ジジ様はコツコツと規則的なリズムで机を叩きました。

「それから、もうひとつ。彼女と交渉しようと思った。その子どもを育てさせて欲しいって」

 コツコツと、一定で狂いもない。

「まさか、嘘だったなんてね。林檎酒をばかすか飲んでいたのを見て呆れたわ。こんな女がフレデリッックお近くにいるなんて危険すぎる……だから殺してやろうと思ったの」

 ドンっと鈍い音がしました。それまで規則正しい音を立てていた手で、テーブルを強く叩いたせいです。
 彼女は狂っている……その場にいた全員が思ったことでしょう。

「彼女、私が差し出す林檎酒を疑いもせずに飲んだわ。毒が完全に回ってしまう前に、私はその場を離れたの。絶好のタイミングだったわね」

 誰の前でエミリア様の目から光が消えていくのか、ジジ様にとってはゲーム感覚だったのでしょうか。

「彼女が落ちて行った時、少しだけ罪の意識を感じたわ。もしかしたら、私の勘違いで尊い命を奪ったかもしれないって……」

 ジジ様は祈るような仕草をしたあと、ぱっと顔を輝かせて、心の底から安堵したような穏やかな笑顔を浮かべていました。

「でも、彼女本当に嘘をついていたのね。良かったわ、これで今夜ぐっすり眠れそうよ」

「あとはこちらで聞きましょう。ジジ•ウォーカーさん」

「じゃあね、皆様。愛してるわ、フレデリック」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない

エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい 最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。 でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。

悪役令嬢のビフォーアフター

すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。 腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ! とりあえずダイエットしなきゃ! そんな中、 あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・ そんな私に新たに出会いが!! 婚約者さん何気に嫉妬してない?

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

処理中です...