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初恋編【序】
スカートを濡らした昼休み
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その日一日は、彼の顔が頭から離れなかった。恋焦がれた私の脳に文字通り、焦げ付き記されたのだ。
朝のホームルームに遅刻し、担任の教師にお説教を受けている時も。数学の授業で課題を忘れ、くどくどと嫌味を言われている時も。家庭科の授業で、ホットケーキを丸焦げにして、注意された時も。
『夢幻神々』の顔が、常に私の頭の中でぐるぐると回っていた。
そして、昼休みの時間。
「…………かり?………ひか………光莉っ!」
「…はにゃ?」
彼を想う私に、幼馴染の生駒 瑠衣が声を大にして話しかけてきた。意外かもしれないが、こんな私にも友達はいるのだ。どうだ参ったか、ざまぁみろ。
「光莉、今日どうしたの?朝からボケ~っとして」
私の前の席をこちらに向け、瑠衣は対面に座った。
「えぇ~?そぉ~~?ボケ~~~~~っとなんてぇ~、してな~いよぉ~?」
私は、はきはきとした口調でそう言った。
「それそれ!その言い方がもうボケてるって!」
瑠衣はそんな訳のわからないことを言って、私に人差し指を向けた。やめてくれ、私は先端恐怖症なのだ。
私は向けられた指の先端の延長上から顔を避けながら話を続ける。
「本当に、何も、ないから…」
「嘘だぁ?だって、そんなよだれ垂らしながらにやにやしてる光莉初めて見たもん」
よだれ?何を言っているんだ?私がそんな不衛生な物をこんな公衆の面前で出すわけが………。
念のため顎先を手で拭うと、何だか瑞々しい手触り。目視で確認すると、それはキラキラと輝いていた。………私はゆっくりと、スカートで拭った。
「で?なにがあったの?もしかして…好きなやつでもできた!?」
瑠衣は好奇心に満ち溢れたような瞳で体を私に近づける。正直、瑠衣に図星を突かれたことには驚いたが、しかし私は冷静に返すのだ。
「すすすすすすす好きな人なんててってていいいるるるるーるるるわけないじゃじゃん」
「………………あんた、嘘隠すの下手すぎるでしょ………」
瑠衣は呆れた顔で、背もたれに寄り掛かる。
「そんなスクラッチDJみたいな動揺の仕方初めて見たよ」
「…動揺なんてしてないYo~!ていうか、誰がDJだYo~!!」
「………………」
「………………」
………………スベった。捨て身のギャグがスベった。堀井光莉に94の大ダメージ。
「でもまさか、あの光莉に好きな奴ができるとはねぇ~」
あ、スルーされた。まぁその方がこちらとしてもありがたいが。というか、そんなことよりも。
「あ、あんまり大きな声で言わないで。まだ誰にも言ってないんだから…」
私はまるで、恋路を暴かれた女子高校生のように、肩をすぼませ、うねうねと左右に揺れてみせた。
「で?相手はどんな奴?私の知ってる人?いつから好きなの、どこで知り合ったの!?」
「あ…えっと、ご質問はお時間の都合上お一人様一つまでとさせて頂きます」
「別に記者会見してるわけじゃないんだけど、私」
朝のホームルームに遅刻し、担任の教師にお説教を受けている時も。数学の授業で課題を忘れ、くどくどと嫌味を言われている時も。家庭科の授業で、ホットケーキを丸焦げにして、注意された時も。
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そして、昼休みの時間。
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瑠衣はそんな訳のわからないことを言って、私に人差し指を向けた。やめてくれ、私は先端恐怖症なのだ。
私は向けられた指の先端の延長上から顔を避けながら話を続ける。
「本当に、何も、ないから…」
「嘘だぁ?だって、そんなよだれ垂らしながらにやにやしてる光莉初めて見たもん」
よだれ?何を言っているんだ?私がそんな不衛生な物をこんな公衆の面前で出すわけが………。
念のため顎先を手で拭うと、何だか瑞々しい手触り。目視で確認すると、それはキラキラと輝いていた。………私はゆっくりと、スカートで拭った。
「で?なにがあったの?もしかして…好きなやつでもできた!?」
瑠衣は好奇心に満ち溢れたような瞳で体を私に近づける。正直、瑠衣に図星を突かれたことには驚いたが、しかし私は冷静に返すのだ。
「すすすすすすす好きな人なんててってていいいるるるるーるるるわけないじゃじゃん」
「………………あんた、嘘隠すの下手すぎるでしょ………」
瑠衣は呆れた顔で、背もたれに寄り掛かる。
「そんなスクラッチDJみたいな動揺の仕方初めて見たよ」
「…動揺なんてしてないYo~!ていうか、誰がDJだYo~!!」
「………………」
「………………」
………………スベった。捨て身のギャグがスベった。堀井光莉に94の大ダメージ。
「でもまさか、あの光莉に好きな奴ができるとはねぇ~」
あ、スルーされた。まぁその方がこちらとしてもありがたいが。というか、そんなことよりも。
「あ、あんまり大きな声で言わないで。まだ誰にも言ってないんだから…」
私はまるで、恋路を暴かれた女子高校生のように、肩をすぼませ、うねうねと左右に揺れてみせた。
「で?相手はどんな奴?私の知ってる人?いつから好きなの、どこで知り合ったの!?」
「あ…えっと、ご質問はお時間の都合上お一人様一つまでとさせて頂きます」
「別に記者会見してるわけじゃないんだけど、私」
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