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#6 チートな能力でもふもふ発見!?

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 美しい容姿とは裏腹に、手厳しいフェアリーにどやされてシュンとして元いた家の裏手へと背中を丸めてとぼとぼ歩いて行くピクシー。

 その背中を眺めているうち、親友の未来や野々宮先輩のことがふと脳裏に過る。

 ルーカスさんの話によれば、召喚された場合、元いた世界で命を全うしているか、元の世界で行方知れずになっているかのどちらからしい。

 私の場合は、大きな地震に巻き込まれているので、おそらく前者である可能性が高いようだ。なので、もう元の世界に戻ることは叶わないらしい。

 だから余計に、二人のことが気にかかってしまうのだろう。

 ーーきっと皆、私は地震に巻きかまれて死んだものだと思っているんだろうなぁ。

 それとも、未来や先輩たちもあの地震の巻き添えになってしまったのだろうか。

 いつも見栄ばかり張っていて、子供の成績や進路のことにステイタスを見いだしていた口うるさい両親のことよりも、未来たちのことがどうにも気にかかる。

 浮かない顔をしていたのだろう、私の様子を心配したフェアリーが私の肩に腰かけ顔を覗き込んでくる。

「ノゾミン? どうしたの? 大丈夫?」

「……ん? ああ、ごめん、ごめん。ぼーとしちゃった。へへへっ」

 ハッとした私は慌てて笑顔を取り繕った。

「悲しいときは、無理に笑わなくていいのよ。いきなり異世界に召喚されたんですもの。寂しくもなるわよ。ほら、この花の蜜でも吸って元気出しなさい」

 いつもはキャピキャピしていて、JKのようなフェアリーだけど、時折こんな風にふっと大人びたことを言って慰めてくれていた。

 正確な年齢はフェアリー自身にもわからないようだが、もうかれこれ数百年は生きているらしいので、妙に説得力がある。

 ここで暮らすようになって、何度こうして慰めてもらったかわからない。

 それはフェアリーだけでなく、ルーカスさんもそうだし、勿論ピクシーもだ。

 三人のお陰で、異世界に召喚された私は、今もこうして、生きながらえることができて楽しく暮らせている。

 それらに心底感謝しつつ、フェアリーが差し出してくれている、小さくて可憐な白い花に目を向けてみる。

 見た感じ、小さなコスモスのような花だ。

 それを受け取ってそっと唇に寄せて吸ってみる。

 すると仄かに優しい蜜の甘みが口中に広がった。

 なんだか酷く懐かしい感じがする。

 ーーこの香り、どこかで嗅いだことがあるかも。どこだったかなぁ。

「何これ、すっごく美味しい! それになんだろう、リンゴみたいな匂いがする」

「でしょでしょ。この花はね、カモマイルって言う薬草でね。香草にもなるし、ティーにもできるしー」

「あっ、カモミールのことね。それなら知ってる。田舎のおばあちゃんに教えてもらったことある」

「さっすが聖女様~」

「いやいや、元いた世界にもよく似た花があっただけだから」

「へ~、そうなんだぁ」

 フェアリーの説明で、どうやらカモミールとよく似た花だとわかり、花を育てるのが好きだった田舎の祖母のことを思い出す。

 父方の祖母は、私が小学三年生の頃病気で亡くなっている。

 だから元いた世界に戻れたとしても、もう会うことは叶わない。

 本来なら、地震に巻き込まれて生涯を終えている私も、祖母らがいるのだろうあっちの世界に行っていたんだろう。

 そうしたら、会えていたのかなぁ。

 ふとそんな考えが脳裏に過ったときのことだ。

 春のあたたかな優しい風がそよそよと吹いてきて、鉄の錆びたような妙な匂いが微かに鼻先を擽った。

 以前いた世界でなら、特に気にもならなかっただろうが。

 この異世界では滅多に嗅ぐことのできない匂いだ。

 ーーなんだろう。この匂い。それになんだろう? 胸がザワザワする。

 異世界に召喚されてからこの一月の間で、薬草を探すのにオーラが見えるだけでなく、もう一つ備わっていたものがある。

 それは以前と比較にならないほど鼻がきくようになったことだ。

「ねぇ、フェアリー。なんか変な匂いしない?」

「そう? 特に何も匂わないけど」

「あっ、風向きが変わったのかな? 匂いが強くなった。ちょっと見てくるね」

「え? ちょっと、待ちなさいよー!」
 
 鼻がきくだけでなく、なんだか妙な胸騒ぎを感じてしまった私は、いても立ってもいられなくなってしまう。

 気づけば、匂いが漂ってくる方へと駆けだしていて。

 焦ったフェアリーが小さな羽をせわしなく羽ばたかせて後を追ってくる気配を背後で感じながら、うっそうと茂っている精霊の森のなかへと入ってすぐ、眼前に姿を現した大きな木の幹と幹の間に丸くなって横たわっている、子犬の姿が目に飛び込んでくるのだった。

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