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それぞれの思惑~前編~
#4
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夏目さんの、あまりの言われようにはちょっとびっくりしちゃったけれど、それだけ、すかしたインテリ銀縁メガネの効果は絶大のようだ。
ふと、夏目さんに、初めてお目にかかった時のことを思い出してしまい、危うく吹き出してしまいそうになったことは、夏目さんには内緒にしておくとして。
まぁ、なにより、傍若無人な副社長が強引に決めちゃったんじゃないと分かったことが、何よりも嬉しかった。
先週末の、あのネックレスの件もあったから、私はちょっと被害妄想気味になっていたのかも知れない。
いくらあの傍若無人な副社長とはいえ、仕事のことまで好き勝手なことは言わないだろうし、ましてや職権濫用なんてしないだろう。
まぁ、そんなことより、一方の、秘書室にいらっしゃる他の先輩方はというと……。
会長、社長、副社長、専務それぞれに一名ずつ、その他の役職の方に関しては四名でまとめて兼務しているらしく、合わせて八名の秘書の方がいらっしゃるようで。
と言っても、社長と専務は先月からずっと、海外から輸入している時計やら宝飾品などなど、工場の視察やら接待やらで出張中らしく、それに同行している二人は不在なんだそうだ。
そのため、副社長は、先月から超が付くほどの激務をこなしてらっしゃるらしく。
きっと、先週末の一件も、それが原因で、イライラを爆発させてしまったんだろう。
ここでようやく、合点がいった私は、副社長へあらぬ疑いを抱いてしまってたことを、心の中で詫びたのだった。
話は戻って、流石は秘書の綺麗なお姉様方っていう感じで、皆さんとにかくモデルさんみたいにスタイルも抜群だし、服装にしたって、上品だし華やかで見惚れちゃうくらいで、本当に綺麗な方々ばかりなんだけれど……。
なんだか、ちょっと冷たいというか、素っ気ない感じがして。
皆さんどの方も本当にお綺麗だから、余計そう感じてしまうだけかもしれないけど、私が歓迎されていないっていうことだけは、なんとなく分かった。
なんとはなく、いたたまれない気持ちになりながらも、三上室長から与えられた夏目さんの隣のデスクに私物などを仕舞っている所へ、やっと夏目さんが自分のデスクへと戻って来て。
すかしたインテリ銀縁メガネ仕様の夏目さんが、
「あぁ、君が、綾瀬さん?
副社長の秘書の夏目です。どうぞ、よろしく」
なんて、初対面の時のような、クールにすました表情を決め込んで、素っ気なく言ってきたと思えば、ちょっと畏《かしこ》まった様子で、私に頭を下げてくるもんだから、思わず、プッと吹き出しそうになっちゃって……。
「……はい。綾瀬美菜です。こちらこそ、よろしくお願いします」
でも、それをなんとか堪えて、私も慌てて立ち上がってお辞儀しながら挨拶を返せば、
私だけに聞こえるように、「こら、笑うな」そう言って、優しく微笑んでくれたから。
夏目さんが一緒だったら、なんとかなるかなぁなんて、単純な私は、この時、呑気にそう思っていた。
これから、どんなことが待ち受けているかなんて、思いもしなかったんだ。
ふと、夏目さんに、初めてお目にかかった時のことを思い出してしまい、危うく吹き出してしまいそうになったことは、夏目さんには内緒にしておくとして。
まぁ、なにより、傍若無人な副社長が強引に決めちゃったんじゃないと分かったことが、何よりも嬉しかった。
先週末の、あのネックレスの件もあったから、私はちょっと被害妄想気味になっていたのかも知れない。
いくらあの傍若無人な副社長とはいえ、仕事のことまで好き勝手なことは言わないだろうし、ましてや職権濫用なんてしないだろう。
まぁ、そんなことより、一方の、秘書室にいらっしゃる他の先輩方はというと……。
会長、社長、副社長、専務それぞれに一名ずつ、その他の役職の方に関しては四名でまとめて兼務しているらしく、合わせて八名の秘書の方がいらっしゃるようで。
と言っても、社長と専務は先月からずっと、海外から輸入している時計やら宝飾品などなど、工場の視察やら接待やらで出張中らしく、それに同行している二人は不在なんだそうだ。
そのため、副社長は、先月から超が付くほどの激務をこなしてらっしゃるらしく。
きっと、先週末の一件も、それが原因で、イライラを爆発させてしまったんだろう。
ここでようやく、合点がいった私は、副社長へあらぬ疑いを抱いてしまってたことを、心の中で詫びたのだった。
話は戻って、流石は秘書の綺麗なお姉様方っていう感じで、皆さんとにかくモデルさんみたいにスタイルも抜群だし、服装にしたって、上品だし華やかで見惚れちゃうくらいで、本当に綺麗な方々ばかりなんだけれど……。
なんだか、ちょっと冷たいというか、素っ気ない感じがして。
皆さんどの方も本当にお綺麗だから、余計そう感じてしまうだけかもしれないけど、私が歓迎されていないっていうことだけは、なんとなく分かった。
なんとはなく、いたたまれない気持ちになりながらも、三上室長から与えられた夏目さんの隣のデスクに私物などを仕舞っている所へ、やっと夏目さんが自分のデスクへと戻って来て。
すかしたインテリ銀縁メガネ仕様の夏目さんが、
「あぁ、君が、綾瀬さん?
副社長の秘書の夏目です。どうぞ、よろしく」
なんて、初対面の時のような、クールにすました表情を決め込んで、素っ気なく言ってきたと思えば、ちょっと畏《かしこ》まった様子で、私に頭を下げてくるもんだから、思わず、プッと吹き出しそうになっちゃって……。
「……はい。綾瀬美菜です。こちらこそ、よろしくお願いします」
でも、それをなんとか堪えて、私も慌てて立ち上がってお辞儀しながら挨拶を返せば、
私だけに聞こえるように、「こら、笑うな」そう言って、優しく微笑んでくれたから。
夏目さんが一緒だったら、なんとかなるかなぁなんて、単純な私は、この時、呑気にそう思っていた。
これから、どんなことが待ち受けているかなんて、思いもしなかったんだ。
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