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それぞれの思惑~後編~

#2

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少しして、なんとか泣かずに済んだ私は、木村先輩といい副社長といい、どうして分かったのかが気になってきて。

「どうしてそんなこと、分かったんですか?」

副社長の背中にしがみついた状態で疑問に思ったことをそのまま口にしてしまってて。

そうしたら、副社長は、何やら考えているようで……。

すぐには答えずに、勿体つけるように暫く溜めてから、

「……さぁ、どうしてだろうなぁ? 教えない。自分でよーく考えてみるんだな」

なーんて、答える気がないのか、なにやら楽しそうに意地悪なことを言ってくる。

それが面白くなくって、ムッとしてしまった私は、副社長に抗議するべく顔を上げて、

「あー、ズルいっ!」

副社長の顔を軽く睨みながらそう言えば……。

「美菜が単純だから分かりやすいだけじゃないのか?」

子供のように拗ねてしまった私のことをからかうのが楽しいようで。

ハハッて声をたてて笑いながら、とっても楽しそうに、子供みたく無邪気な微笑を浮かべている。

そんな副社長の無邪気な微笑みに見惚れてしまった私は、副社長の大きな手によって、顔をまた肩の上に強制的に戻されてしまい。

優しい副社長のお陰で、漸く元気を取り戻すことができた私は、不服に思いながらも、副社長のお言葉に甘えて素直に瞼《まぶた》を閉じた。


♪゜・*:.。. .。.:*・♪


いつものように社員専用の通用口を抜けて、ティーサロンの前を横切ると、綺麗に彩られたウィンドウディスプレイの傍に、木村先輩の姿があった。

「木村先輩、お待たせしました。遅くなっちゃってすみません」

「ううん。俺もついさっき来たとこだから、全然平気だよ。……それより、夏目さん大分怒ってたみたいだけど、大丈夫だった?」

秘書室に異動になっちゃってからは、いつも夏目さんの運転する車で、副社長と一緒に帰っていたから、一緒に帰らない旨を副社長に伝えたりしていたせいで遅くなってしまったのだった。

そのことを聞いた副社長は、一瞬、怪訝そうな表情をしていたものの、友人との約束があることを伝えると、

「たまには、ゆっくりしてくるといい」そう言って快く送り出してくれた。

なんとなく、木村先輩と一緒だということは副社長には言うことはできなかったけれど。

私にとって木村先輩は、後輩思いの優しい先輩でしかないのだから、別に嘘を言っている訳じゃないと思ったからだ。

一方、そのことを知っている夏目さんはといえば、なにやら複雑そうな表情をしていたけれど。

まだ夏目さんのことを許すことができずにいた私は、それには気づかないフリをした。
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