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第二章2
しおりを挟む「つかれたぁ……っ」
相談所の提携先のラブホテル。
その浴室からバスローブ姿で現れた綾音を尻目に、環は大きなため息とともに吐き出した。
美容室にショッピング、普段ならそれぞれ別日に予定を入れるところを、一度にこなしたのだ。環が疲れを感じるのも致し方がなかった。
先にシャワーを浴び終え、ベッドに腰掛けてだらついていたために、思わずこぼれた本音だった。
しかし、部屋に綾音もいることを思い出して、環は慌てて口を両手で覆う。
「あ、すみません!」
「いえ、お疲れさまでした」
元々綾音の提案ではあるものの、完全に彼女の業務外なのだ。
疲れているとはいえ、最も疲れているであろう当人の前で、真っ先に言うべきではなかった。
焦りながら弁解の言葉を探す環に、綾音は穏やかに笑う。
「私が好きでやらせて頂いたことですから、気になさらないでくださいね」
これから講習も残っているというのに、少しの疲れも見せず笑う綾音に、環はある種の尊敬を抱く。
(さすが、プロ……)
環は、〝その講習で誰が最も疲れるのか〟ということに、考えが及んでいなかった。
バスローブを纏い、身体を締め付けるものが何もない状態が、環を油断させる。
「そういえば、良いものを持っておりました」
そう言って、綾音はサイドチェアに置かれた自分の手荷物を探る。
そして手にした棒状のものを、胸の前で軽く掲げてみせた。
「こちら、マッサージ器なんです」
「そうなんですか? 小さいですね」
綾音の持つマッサージ器は、持ち手と先端部分の間にくびれがあり、半球状の先端が振動することによって筋肉をほぐすタイプのようだ。
「先端部分は可動式で、角度も変えられます」
綾音が振動部を掴んで力を加えると、カチカチという音と共に折れ曲がる。
環がイメージするマッサージ器と言えば、実家にある、柄が長い大型のものだった。
背中に届き、パワーもあったが、音がうるさく、環はあまり使う気になれなかった。
一方で、綾音が握るそれは小さく、持ち手は握った手から少しはみ出る程度だ。
充電式のコードレスタイプのようなので、使用時にコードを煩わしく感じる心配もなく、先端が曲がるため、肩や首をほぐす際に腕を後ろに回す必要もない。
「持ち運べるというのが売りで、音もかなり静かなんですよ。是非、講習の前に少し体をほぐしましょう」
「えっ」
思わず、環は慌てた。そしてすぐに首を振る。
「いえ、さすがに……!」
同じだけ歩き、さらには客への気配りもしていた綾音。
そんな彼女にそこまでされるのは、いくら何でも申し訳がないと思えた。
しかし、綾音はスリッパを脱いで迷いなくベッドに上がり、腰を浮かしかけていた環の肩を、後ろから掴んで留まらせる。
「力を抜いてくださいますか? 笹原様」
「えっと……ハイ……」
有無を言わさぬ声色に、環は早々に諦め、綾音に大人しく従うことにした。
促されるまま、ベッドにうつ伏せで寝そべる。
すぐに、カチリと電源を入れた音と、マッサージ器特有の振動音がした。
「お体の上、失礼しますね」
綾音は環の腰あたりに跨がり、軽く体重をかける。
「苦しくないですか?」
「はい……」
腰部にかかる負荷が、環の身体を僅かにマットレスへと沈ませる。
綾音の体温も相まって、むしろ心地の良いくらいだった。
「それでは、当てていきます。痛かったり苦しかったりしたら、すぐに教えてください」
肩甲骨周辺を綾音の掌が探り、確かめるように窪みを辿る。
数度往復すると、マッサージ器が押し当てられた。
静音タイプとはいえ、当てられると低く唸るような音が体に響く。
小刻みな振動は思っていたより強く、また、綾音の当て方が上手いようで、肩甲骨周りの筋肉を程良くほぐしていった。
続く心地よさに、段々と環の瞼が重くなっていく。
「肩、大分凝っていますね。笹原様は少し巻き肩気味ですので、胸を開くことを意識してみてくださいね」
「わかり、ました」
眠気を隠し切れない声色で返すと、振動音に紛れ、綾音が控えめに笑う。
「次は足腰もしましょうか」
「あ、だいじょうぶです、もう」
環が振り返ると、綾音が眉尻を下げて困ったように口を開いた。
「嫌でなければやらせてもらえませんか?」
「………じゃあ……お願いします……」
またも逆らえなかった環は、そのままうつ伏せの状態で留まることになった。
綾音は、絶妙な力加減と的確さで、腰、ふくらはぎ、腿裏と、順にほぐしていく。
一度は覚醒しかけたはずの環の意識は、揉み始めて早々に朦朧とし、今はもう、うつらうつらといった風だった。
「次は、前腿もよろしいですか?」
骨抜きにされかけている環は、拒む気持ちをすっかり失っていた。
腰を浮かせた綾音が促す通りに、環はその場で半回転して、仰向けに寝転ぶ。
綾音はむくみを流すように、環の膝上から脚の付け根へとマッサージ器を滑らせる。
手付きは今まで以上に優しく、ゆったりと。
外腿から始め、行き来させるごとに施術範囲は内腿へとスライドしていく。
内腿の深い部分への振動が、下腹をもじんわりと刺激した。
「ン……、」
眠気に呑まれつつある環の中で、身体的な心地よさと性的な快感が入り混じり始める。
やがて綾音の手は、腿の付け根を乗り越え、下腹へと進出してきた。
皮膚の上から子宮を撫でるかのように、マッサージ器の先端を這わせる。
「ふぅ……、は、ン……っ」
とろ火で溶かされるような快楽に、ついに環の瞼が下りた。
僅かに眉根を悩ましく寄せ、喘ぎとも吐息ともつかない声が、緩く開いた唇から零れ落ちる。
環が意識を手放したことを確認し、綾音はマッサージ器の出力を、〝弱〟から〝中〟へと切り替える。
「あっ…、はっ、ぁ……、ン、はっ……」
出力に比例して、環の反応は大きくなり、声には甘さが滲む。
振動部が恥骨の少し上――脂肪が少なく、最も子宮に近い場所――へ沈むと、環は差し出すように腰を押し付ける。
「アっ、んはっ、……ぁン……あっ……」
綾音は環の膝を、片方ずつ慎重に立てて、そっと開いた。
バスローブの裾を左右にはだけさせると、潤んだ大陰唇が露わになる。
籠った熱気が、むわりと周囲に漂うようだった。
「ふふ、お下着、着けてないのですね」
綾音は一人ほくそ笑み、仄かに桃色の、ふっくらとした恥肉を指先で広げた。
そして、包皮に覆われ、まだ何の反応もしていない陰核を軽くつつく。
環は小さく震え、寝息混じりに喘いだ。
その赤く染まりつつある耳へと、綾音が唇を寄せる。
「次は、こちらをほぐしていきます……♡」
綾音はそう言って、振動するマッサージ器を、無防備に緩く開いた環の股座へと潜り込ませた。
「アァッッ⁉」
びくんっ! と環の腰が跳ね上がる。
「ア、あッ! ふぁっ、あ……ッ!」
唐突な鋭い刺激で無理矢理覚醒させられ、環は視線を右往左往させる。
「やっ、なにっ、なッ……にぃッ⁉」
浅い眠りで乾いてしまった瞳を瞬かせながら、混乱を訴える環に、綾音が笑い掛けた。
「ここも、凝っているようでしたので」
「あぁっ、あっ! 要ら、ないッですっ! そこっ! 要らな、ぃ……ッ、あっ、ひぁあッ!」
「とても凝っていますので、入念にしますね」
「ちがっ、それっ、ちがぅッ、きゃら! ぁあッ! あ――っ」
綾音は笑顔のまま、ぷっくりと肥え始めた陰核を、容赦なく押し潰す。
神経を直接かき回されるような刺激に、環はいやいやと頭を振り、懸命に制止を訴える。
「かんざっ、きさんっ! とめてっ!」
「このまま一度、達してしまいましょう」
「あっ、あっ! やだっ! 強いっ、機械ッ! ちゅよ、いのッ!」
綾音に向けて必死に伸ばした手は、片手で簡単に往なされ、綾音のバスローブの袖を引くだけだった。
包皮の上から陰核へ当てていた振動部を、綾音が動かす。
「ヒっ! ひぁっ! あァァっ!」
隠れた陰核を狙い、股に差し込むよう水平方向にマッサージ器をあてる。
環の腰がくねるが、多少逃れたところで振動は陰核の芯を捉えて離さない。
「も、だめっ! だめぇ……っ!」
環は、腰をぶるぶると震わせ、いよいよ切羽詰まったように高く鳴いた。
そんな環を食い入るように見詰め、綾音は閉じようとする両膝を、自らの膝を乗せてベッドへと固定する。
少しも逃れられなくなった身体は弓なりにしなり、つま先はきゅう、と強く丸まった。
「ア! イくっ! イっ、ちゃうぅうッ! はなしてっ、は、なしィッ、あっ! あ、アァッ! あっ‼ ふ、あぁあア――〰〰ッ♡♡」
環は背を反らし、全身を緊張させて絶頂する。
絶頂を見届けた綾音は、ひくひくと震える環を尻目に、マッサージ器の電源を落とす。
「ぁ、あ……ふっ……」
唸るような振動音が消え、環の浅い呼吸音だけとなった室内に、ぷちゅりと間抜けな音が響く。
マッサージ器が、環の濡れそぼったぬかるみを離れた音だった。
振動部は環の愛液でてらてらと光り、つんと立ち上がった陰核との間に、透明の糸が垂れる。
綾音は何も言わないまま、サイドテーブル上のティッシュケースから数枚ティッシュペーパーを取り、マッサージ器を拭う。
環は後始末をする綾音をぼんやりと視界にとらえ、またも眠りに落ちそうになっていた。
潤んだ瞳からは涙がこぼれ、額には汗が滲む。
うとうととしながら眺める綾音は、やはり美しかった。
綾音のバスローブは、環に袖を引かれたために乱れ、襟元がはだけている。
綾音も下着を着用しておらず、緩んだ合わせの部分から、白い胸が覗いていた。
浮いた鎖骨に、すっきりとしたデコルテ。
そして、たぷりとした豊満な胸と、その先端に、ベビーピンク色の乳輪、小ぶりでツンとした乳首。
綾音が動くと、瑞々しい桃の香りがするような気がした。
そのいい香りに包まれながら、環が瞼を下ろそうとしたとき。
ふいに綾音が、マッサージ器を環に握らせた。
「じゃあ、次はご自分でシてみましょう」
「……えっ?」
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