3 / 4
豪邸と入学式
悪役令嬢は乗車する
しおりを挟む
フランスにはカエルを食べる習慣があることを知ってはいたものの、実際にそれを口にしたことはなかった。高級品であることは知っていたが、こんな金持ちの家なのだからもっと高いお肉でも食わせていただけなかったのか。真人はそう思いつつリムジン風の車に乗り込んだ。端的に言えば、お口に合わなかったのだ。
最前列には白い髭を生やした爺さんが乗り込んだ。そしてパーティとか開そうなくらい広い空間に、メイドさんと真人の2人が腰掛けていたのだった。
「いかがなさいましたか?もしかして朝食の味がよろしくなかったと」
「いえそんなことは……」
「わかりました明日にはお抱えの料理人全員に解雇を言い渡します」
「大丈夫だって!そんなことしないで!」
「はあ……そうですか」
メイドさんは怪訝な顔をしていた。全くどういうことだよこれ?夢にしては長すぎるぞ。真人だって、そりゃ前の世界は悲惨なものだった。だからと言って、いきなり御令嬢の姿形になってしまうのは無茶が過ぎる。
「お嬢様、お嬢様は名門クアラローズ家を背負って、我が国最大にして最高学府の国立魔法院学院へ入学するのです。その自覚だけはしっかりと持っていただけますか?貴方の振る舞い一つ一つが、国王の側近であるタタ様にすら影響が出てしまい、更にはクラアローズ家の命運すら左右されてしまう。ですので関わるのは同じ公爵や侯爵、伯爵の御子息御令嬢様達とに留めていただきたく。間違っても何てことのない庶民と関わりを持たぬよう、ゆめゆめお忘れなきようお願い致します」
そう思っていたら、メイドさんの忠告が入った。本人は少し苦言を呈しているのだろうが、個人的にはとても嬉しかった。何故なら、そういった説明するターンがないと、真人はいつまで経っても今の状況から抜け出せないからだ。どう動けばいいかもわからないし、バックボーンがわからなければ生活の肩代わりだってできやしない。
「……申し訳ございません。聡明なお嬢様であれば重々承知して頂いていた話、心配性な私の戯言として受け入れ流して頂ければ幸いです」
あ、いややめて下さい。自分から色々説明を受けるのは中々に気が引けるのでもっとこの世界について説明してください。まずは貴方の名前を教えていただけますかメイドさん!!真人は心の中でそう願ったものの、メイドさんはすっと黙ってしまった。多分余計な事を言ったと後悔しているのだろう。
さてどうしよう……真人は悩んでいた。このままいくと国立魔法院学院とかいう院が2回つく滑稽なネーミングの学院に通う羽目になる。しかも、なんかよくわからんが高家の令嬢としてだ。魔法なんて使えないし、生まれはそこらの庶民の子だ。魔法も舞踊もできない令嬢なんて、目立って仕方ないだろう。
既に死にきった脳内細胞をフル回転して解決策を模索していたその時、きききぃぃとブレーキ音が響いた。真人とメイドさんはそれぞれ側面の窓ガラスに激突した。どうやら急ブレーキを踏んだようだ。頭を強く打ち、少しぐらんぐらんと頭が回った真人は、衝突部位の後頭部を抑えつつ何があったのかと外を見た。
窓を開けて前方を見ると、自転車が転けたのか女の子が地面にへたり込んでいた。自動車と衝突したのか、それとも道の真ん中で転んでしまったのかは不明だった。
「何があったのですか?」
運転席に向けて指示を出すメイドさんなんて、もはや眼中になかった。真人はその少女の姿を見て、一二もなく外へ飛び出した。そしてそのまま、少女の元へ近づいた。
少女が心配だった。それは勿論ある。でもそれだけじゃない。
二重瞼、
長い睫毛、
鼻に少し目立つ雀卵。
そう、真人を異世界に送り込んできたピンク色のJKにそっくりだったのだ。
最前列には白い髭を生やした爺さんが乗り込んだ。そしてパーティとか開そうなくらい広い空間に、メイドさんと真人の2人が腰掛けていたのだった。
「いかがなさいましたか?もしかして朝食の味がよろしくなかったと」
「いえそんなことは……」
「わかりました明日にはお抱えの料理人全員に解雇を言い渡します」
「大丈夫だって!そんなことしないで!」
「はあ……そうですか」
メイドさんは怪訝な顔をしていた。全くどういうことだよこれ?夢にしては長すぎるぞ。真人だって、そりゃ前の世界は悲惨なものだった。だからと言って、いきなり御令嬢の姿形になってしまうのは無茶が過ぎる。
「お嬢様、お嬢様は名門クアラローズ家を背負って、我が国最大にして最高学府の国立魔法院学院へ入学するのです。その自覚だけはしっかりと持っていただけますか?貴方の振る舞い一つ一つが、国王の側近であるタタ様にすら影響が出てしまい、更にはクラアローズ家の命運すら左右されてしまう。ですので関わるのは同じ公爵や侯爵、伯爵の御子息御令嬢様達とに留めていただきたく。間違っても何てことのない庶民と関わりを持たぬよう、ゆめゆめお忘れなきようお願い致します」
そう思っていたら、メイドさんの忠告が入った。本人は少し苦言を呈しているのだろうが、個人的にはとても嬉しかった。何故なら、そういった説明するターンがないと、真人はいつまで経っても今の状況から抜け出せないからだ。どう動けばいいかもわからないし、バックボーンがわからなければ生活の肩代わりだってできやしない。
「……申し訳ございません。聡明なお嬢様であれば重々承知して頂いていた話、心配性な私の戯言として受け入れ流して頂ければ幸いです」
あ、いややめて下さい。自分から色々説明を受けるのは中々に気が引けるのでもっとこの世界について説明してください。まずは貴方の名前を教えていただけますかメイドさん!!真人は心の中でそう願ったものの、メイドさんはすっと黙ってしまった。多分余計な事を言ったと後悔しているのだろう。
さてどうしよう……真人は悩んでいた。このままいくと国立魔法院学院とかいう院が2回つく滑稽なネーミングの学院に通う羽目になる。しかも、なんかよくわからんが高家の令嬢としてだ。魔法なんて使えないし、生まれはそこらの庶民の子だ。魔法も舞踊もできない令嬢なんて、目立って仕方ないだろう。
既に死にきった脳内細胞をフル回転して解決策を模索していたその時、きききぃぃとブレーキ音が響いた。真人とメイドさんはそれぞれ側面の窓ガラスに激突した。どうやら急ブレーキを踏んだようだ。頭を強く打ち、少しぐらんぐらんと頭が回った真人は、衝突部位の後頭部を抑えつつ何があったのかと外を見た。
窓を開けて前方を見ると、自転車が転けたのか女の子が地面にへたり込んでいた。自動車と衝突したのか、それとも道の真ん中で転んでしまったのかは不明だった。
「何があったのですか?」
運転席に向けて指示を出すメイドさんなんて、もはや眼中になかった。真人はその少女の姿を見て、一二もなく外へ飛び出した。そしてそのまま、少女の元へ近づいた。
少女が心配だった。それは勿論ある。でもそれだけじゃない。
二重瞼、
長い睫毛、
鼻に少し目立つ雀卵。
そう、真人を異世界に送り込んできたピンク色のJKにそっくりだったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
悪役令嬢に転生しましたが、全部諦めて弟を愛でることにしました
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に転生したものの、知識チートとかないし回避方法も思いつかないため全部諦めて弟を愛でることにしたら…何故か教養を身につけてしまったお話。
なお理由は悪役令嬢の「脳」と「身体」のスペックが前世と違いめちゃくちゃ高いため。
超ご都合主義のハッピーエンド。
誰も不幸にならない大団円です。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
小説家になろう様でも投稿しています。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる