世界を救うキスをしよう~無職ニートはJKとの口付けをきっかけに悪役令嬢へ転生する~

Chicken Fly

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豪邸と入学式

悪役令嬢は乗車する

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 フランスにはカエルを食べる習慣があることを知ってはいたものの、実際にそれを口にしたことはなかった。高級品であることは知っていたが、こんな金持ちの家なのだからもっと高いお肉でも食わせていただけなかったのか。真人はそう思いつつリムジン風の車に乗り込んだ。端的に言えば、お口に合わなかったのだ。

 最前列には白い髭を生やした爺さんが乗り込んだ。そしてパーティとか開そうなくらい広い空間に、メイドさんと真人の2人が腰掛けていたのだった。

「いかがなさいましたか?もしかして朝食の味がよろしくなかったと」
「いえそんなことは……」
「わかりました明日にはお抱えの料理人全員に解雇を言い渡します」
「大丈夫だって!そんなことしないで!」
「はあ……そうですか」

 メイドさんは怪訝な顔をしていた。全くどういうことだよこれ?夢にしては長すぎるぞ。真人だって、そりゃ前の世界は悲惨なものだった。だからと言って、いきなり御令嬢の姿形になってしまうのは無茶が過ぎる。

「お嬢様、お嬢様は名門クアラローズ家を背負って、我が国最大にして最高学府の国立魔法院学院へ入学するのです。その自覚だけはしっかりと持っていただけますか?貴方の振る舞い一つ一つが、国王の側近であるタタ様にすら影響が出てしまい、更にはクラアローズ家の命運すら左右されてしまう。ですので関わるのは同じ公爵や侯爵、伯爵の御子息御令嬢様達とに留めていただきたく。間違っても何てことのない庶民と関わりを持たぬよう、ゆめゆめお忘れなきようお願い致します」

 そう思っていたら、メイドさんの忠告が入った。本人は少し苦言を呈しているのだろうが、個人的にはとても嬉しかった。何故なら、そういった説明するターンがないと、真人はいつまで経っても今の状況から抜け出せないからだ。どう動けばいいかもわからないし、バックボーンがわからなければ生活の肩代わりだってできやしない。

「……申し訳ございません。聡明なお嬢様であれば重々承知して頂いていた話、心配性な私の戯言として受け入れ流して頂ければ幸いです」

 あ、いややめて下さい。自分から色々説明を受けるのは中々に気が引けるのでもっとこの世界について説明してください。まずは貴方の名前を教えていただけますかメイドさん!!真人は心の中でそう願ったものの、メイドさんはすっと黙ってしまった。多分余計な事を言ったと後悔しているのだろう。

 さてどうしよう……真人は悩んでいた。このままいくと国立魔法院学院とかいう院が2回つく滑稽なネーミングの学院に通う羽目になる。しかも、なんかよくわからんが高家の令嬢としてだ。魔法なんて使えないし、生まれはそこらの庶民の子だ。魔法も舞踊もできない令嬢なんて、目立って仕方ないだろう。

 既に死にきった脳内細胞をフル回転して解決策を模索していたその時、きききぃぃとブレーキ音が響いた。真人とメイドさんはそれぞれ側面の窓ガラスに激突した。どうやら急ブレーキを踏んだようだ。頭を強く打ち、少しぐらんぐらんと頭が回った真人は、衝突部位の後頭部を抑えつつ何があったのかと外を見た。

 窓を開けて前方を見ると、自転車が転けたのか女の子が地面にへたり込んでいた。自動車と衝突したのか、それとも道の真ん中で転んでしまったのかは不明だった。

「何があったのですか?」

 運転席に向けて指示を出すメイドさんなんて、もはや眼中になかった。真人はその少女の姿を見て、一二もなく外へ飛び出した。そしてそのまま、少女の元へ近づいた。

 少女が心配だった。それは勿論ある。でもそれだけじゃない。

 二重瞼、

 長い睫毛、

 鼻に少し目立つ雀卵。

 そう、真人を異世界に送り込んできたピンク色のJKにそっくりだったのだ。
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