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王妃と第二王子のその後
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王妃の茶会へ招待された日から数日後、陛下から直々に手紙が届いた。
「王妃と第二王子が……。これでようやく王宮の風通しが良くなったわね」
あの茶会の後、私はシスカ公爵家として王家に抗議文をしたためた。
茶会での王妃の嫌がらせと第二王子が幼稚な罠でリヒャルトと私を離縁させようと企んだことを事細かに記し、処分を懇願する文言で締めくくる。
自分の妻と息子の阿呆さ加減に陛下は頭を抱えたことだろう。
二人が私の伴侶の座を狙っていたことは知っていたはずだが、リヒャルトと結婚したことで安心しきっていたようだ。
まさか浅ましくも私達を離縁させたうえでその後釜を狙っているとは考えていなかったのだろう。そんな恥知らずな真似はするまいと信じたかったのもあるかもしれない。
他所の令嬢まで巻き込み、王宮であんな茶番を繰り広げた第二王子を陛下は完全に見限った。彼は自分の母親よりも年上の女王の15番目の夫になることが決まったそうだ。北の大陸を制した女傑と名高い女王、英雄色を好むというが女王もその例にもれず好色家らしい。
女王は見目のいい第二王子をかなりお気に召したようで、自国で産出される鉄や石炭を優先的に我が国へとまわしてくださると約束してくださったそう。これでこの国はますます豊かになる。
ちなみに、女王への婿入りを命じた時の第二王子は死刑宣告を受けた囚人のように絶望していたらしい。そして王妃は息子が母親よりも年上の女に婿入りすると知って王宮で暴れたそう。それが原因で王妃は冷宮へと押し込められることとなったとか。
王宮の敷地に冷宮なんてあったんだ。あの罪を犯した妃を閉じ込めるという宮殿。
だが、幼い頃に王宮内をよく探検していたレイチェルの記憶にそれらしきものはない。
「もしかして冷宮といいながら本当は地下牢にでも押し込めたとか……?」
有り得る、とハッとなった。
陛下が王妃を持て余していることは随分前から気づいていた。
能力も人格も優れているとはお世辞にも言えず、おまけに問題ばかり起こす彼女は国の母として相応しくないと私の父に愚痴を零していたのを聞いたことがある。
どうしてそんな王妃を妻に迎えたかというと、“王家の血が入っていない伯爵家以上の妙齢の娘”という条件に彼女しか当て嵌まらなかったから。ただそれだけの理由だ。
健康な王子を二人も産んだ、という功績だけしか褒めるものが無かったせいか王妃はやたらと息子に執着した。その結果がこれである。
本当に“冷宮”が存在してそこに押し込められたのか、はたまた“冷宮”という名の牢獄に入れられたかは分からない。しかし国王の赦しが無い限りそこから永遠に出られないことは確かだ。もしかすると息子の王太子が代替わりして王になれば出してくれるかもしれないけど……望みは薄いだろう。王太子は妻をイビった母親を毛嫌いしているし。
それと手紙にはお茶会で私が受けた嫌がらせの理由も書いてあった。
陛下はどうやらわざわざ王妃に「どうしてこんなことをした!」と問い質してくれたそう。そして王妃の答えは私が予想していた通りのものだった。
『可愛い息子ちゃんを奪うあの女が憎い! それに夫の母親であるわたくしへの敬意が足りない! 生意気だ!』
要約するとこんな感じだ。全くもって訳が分からない。
可愛い息子ちゃんを奪う、とあるがいつ誰が奪おうとしたというのか。私の記憶が正しければ奪うどころか押し付けようとしてきたのはそちらではないか。それと夫の母親……というがまだ結婚すらしていないし、する気もない。生意気というなら息子の嫁にしようとするなよ、と声を大にして言いたい。
思い返せば本当に腹の立つ女だ。もう会わなくて済むと思うと清々する。
「王妃と第二王子が……。これでようやく王宮の風通しが良くなったわね」
あの茶会の後、私はシスカ公爵家として王家に抗議文をしたためた。
茶会での王妃の嫌がらせと第二王子が幼稚な罠でリヒャルトと私を離縁させようと企んだことを事細かに記し、処分を懇願する文言で締めくくる。
自分の妻と息子の阿呆さ加減に陛下は頭を抱えたことだろう。
二人が私の伴侶の座を狙っていたことは知っていたはずだが、リヒャルトと結婚したことで安心しきっていたようだ。
まさか浅ましくも私達を離縁させたうえでその後釜を狙っているとは考えていなかったのだろう。そんな恥知らずな真似はするまいと信じたかったのもあるかもしれない。
他所の令嬢まで巻き込み、王宮であんな茶番を繰り広げた第二王子を陛下は完全に見限った。彼は自分の母親よりも年上の女王の15番目の夫になることが決まったそうだ。北の大陸を制した女傑と名高い女王、英雄色を好むというが女王もその例にもれず好色家らしい。
女王は見目のいい第二王子をかなりお気に召したようで、自国で産出される鉄や石炭を優先的に我が国へとまわしてくださると約束してくださったそう。これでこの国はますます豊かになる。
ちなみに、女王への婿入りを命じた時の第二王子は死刑宣告を受けた囚人のように絶望していたらしい。そして王妃は息子が母親よりも年上の女に婿入りすると知って王宮で暴れたそう。それが原因で王妃は冷宮へと押し込められることとなったとか。
王宮の敷地に冷宮なんてあったんだ。あの罪を犯した妃を閉じ込めるという宮殿。
だが、幼い頃に王宮内をよく探検していたレイチェルの記憶にそれらしきものはない。
「もしかして冷宮といいながら本当は地下牢にでも押し込めたとか……?」
有り得る、とハッとなった。
陛下が王妃を持て余していることは随分前から気づいていた。
能力も人格も優れているとはお世辞にも言えず、おまけに問題ばかり起こす彼女は国の母として相応しくないと私の父に愚痴を零していたのを聞いたことがある。
どうしてそんな王妃を妻に迎えたかというと、“王家の血が入っていない伯爵家以上の妙齢の娘”という条件に彼女しか当て嵌まらなかったから。ただそれだけの理由だ。
健康な王子を二人も産んだ、という功績だけしか褒めるものが無かったせいか王妃はやたらと息子に執着した。その結果がこれである。
本当に“冷宮”が存在してそこに押し込められたのか、はたまた“冷宮”という名の牢獄に入れられたかは分からない。しかし国王の赦しが無い限りそこから永遠に出られないことは確かだ。もしかすると息子の王太子が代替わりして王になれば出してくれるかもしれないけど……望みは薄いだろう。王太子は妻をイビった母親を毛嫌いしているし。
それと手紙にはお茶会で私が受けた嫌がらせの理由も書いてあった。
陛下はどうやらわざわざ王妃に「どうしてこんなことをした!」と問い質してくれたそう。そして王妃の答えは私が予想していた通りのものだった。
『可愛い息子ちゃんを奪うあの女が憎い! それに夫の母親であるわたくしへの敬意が足りない! 生意気だ!』
要約するとこんな感じだ。全くもって訳が分からない。
可愛い息子ちゃんを奪う、とあるがいつ誰が奪おうとしたというのか。私の記憶が正しければ奪うどころか押し付けようとしてきたのはそちらではないか。それと夫の母親……というがまだ結婚すらしていないし、する気もない。生意気というなら息子の嫁にしようとするなよ、と声を大にして言いたい。
思い返せば本当に腹の立つ女だ。もう会わなくて済むと思うと清々する。
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