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招かれざる客①
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マリウス子爵令嬢のその後について報告を受けていると、邸に招かれざる客がやって来た。
「レイチェル! 助けてくれ……」
悲壮な顔を隠そうともしない第二王子が玄関ホールで情けなく膝をつく。
そのみっともない姿に私はわざとため息をついた。
「……何ですか、第二王子殿下。王族ともあろう御方がそんな簡単に膝をついて……これから偉大な女王陛下の伴侶になるのですからそのように情けない行動は慎んで頂かないと。我が国の恥となりますよ?」
わざと嫌味たっぷりに返してやれば更に情けなくその場で泣き始めた。
成人した男の泣く姿って引くわ……。
「お願いだ……助けてくれ。私はあんな年増に婿入りしたくない……! 母上より10も上なんだぞ!? そんな相手と閨を共にするなんて考えただけで無理だ!」
いや、あのさ……いくら私が人妻とはいえ女性相手に閨がどうこう言うのってセクハラだよ?
控えめに言って気持ち悪いからね? 鳥肌立ってきた……。
「そのようなことを無関係の私に言われても困りますわ。殿下の婿入りは国王陛下がお決めになったこと。それに異を唱えることは王家への反逆だと分かりませんか?」
要するに『王の決定に逆らう真似が出来ると思って? そんな簡単なことも分からないのかよ、バーカ、バーカ! お前と私は無関係の他人だっつーの!』と言ったつもりなんだけど伝わったかな?
あ、泣き声に嗚咽が交じり始めたわ。一応理解したのかしら?
「頼むよ……本夫なんて我儘は言わないから……。第二夫で我慢するから……なあ、頼む……助けてくれ」
「はい? 本夫? 第二夫? 何を言っているのです?」
何それ? 本夫って……まさか本妻の夫バージョン?
聞きなれない言葉だから一瞬本気で分からなかったわ。
え? つまり自分を私の二番目の夫として迎えろって?
…………馬鹿なの?
「閨の回数もあの男優先でいい……。我慢してやる。だからどうか、頼む……!」
キッショイのう…………。
あまりの気持ち悪さにうっかり本音が飛び出すところだった。
この場面でどうして夜の生活の話を出してくるの? 馬鹿なの?
しかも何よその『譲歩してやった』という偉そうな態度は!?
お前なんて一生我慢してろ!
それが人に物を頼む態度か? 頼まれたって御免ではあるが……。
「あらあら……いけませんよ、寝言は寝てからおっしゃってくださいな」
何よそのショックと言わんばかりの顔は?
まさか私が二つ返事で了承するとでも? どれだけ自分に自信があるのよ……。
「そんな……私がここまで譲歩しているのに?」
「何を譲歩しているのかは知りませんが、情けない事をおっしゃらないでください。貴方は王族として国益となる婚姻をする責務があるでしょう? 私の夫になっても何の益にもなりませんよ」
「そんなことはない! 私とお前の婚姻は公爵家と王家を結ぶ橋渡しになるではないか!?」
「橋渡しでしたら私の両親の代で既に完了しております。王妹である母がシスカ家に嫁いだ時点で二家の縁は結ばれておりますよ。私の身に流れる血の半分は王家のもの、私こそが橋渡しの証です。なのでこれ以上の縁は不要にございます」
はっきり告げると第二王子はひどくショックを受けたように固まった。
いやだわ、これじゃ私がイジメているみたいじゃないの?
「ご理解いただけましたら速やかにお帰りください。数日後には婿入りなのですからご準備を致しませんといけないでしょう? もうこの地に帰ることはないでしょうから、忘れ物など致しませんようお気を付けください……」
またショックを受けているようだけど、婿入りしたら離縁されない限り帰れないのは当たり前でしょう?
あちらに骨を埋める覚悟くらい持ちなさいよ、情けないわね。
「い、いやだ……。あんな年増を相手にしたくない……」
「我儘を言っている場合ですか? 貴方に他の選択肢があるとでも?」
「だから! お前と私が結婚すれば全て丸く収まると言っているじゃないか!」
「収まりませんし、それは最大の悪手です。北の女王陛下の伴侶となる方に手を出してただで済むとでも? 最悪は戦もあり得ますよ」
国力で言えばあちらの方が上。そんな格上相手に喧嘩を売るような真似をして、制裁が無いと思うほど緩い頭ではない。
そもそも女王と取り合うほどの価値がこの男にあるとは到底思えない。
王族の責務すら果たす気のない情けない男に。
「いいから私をお前の夫にしろ! これは第二王子としての命令だ!」
「話聞いていませんでした? それとも理解する気がないのかしら……」
開戦もあり得ると言っているのに、尚も己の欲求のみを突き通そうとする彼を心底軽蔑する。先ほどから私は何度も『お前の我儘で国を危機に晒してもいいの?』と注意しているのに全く聞きやしない。この人は自分さえよければ周囲はどうなってもいいらしい。独善的な思考に吐き気がする。
さて、どうしよう……。このまま正論だけ告げてもこの人は聞く耳を持たなそう。
それでは時間の無駄だ。この人に割く時間が勿体ない。
「レイチェル! 助けてくれ……」
悲壮な顔を隠そうともしない第二王子が玄関ホールで情けなく膝をつく。
そのみっともない姿に私はわざとため息をついた。
「……何ですか、第二王子殿下。王族ともあろう御方がそんな簡単に膝をついて……これから偉大な女王陛下の伴侶になるのですからそのように情けない行動は慎んで頂かないと。我が国の恥となりますよ?」
わざと嫌味たっぷりに返してやれば更に情けなくその場で泣き始めた。
成人した男の泣く姿って引くわ……。
「お願いだ……助けてくれ。私はあんな年増に婿入りしたくない……! 母上より10も上なんだぞ!? そんな相手と閨を共にするなんて考えただけで無理だ!」
いや、あのさ……いくら私が人妻とはいえ女性相手に閨がどうこう言うのってセクハラだよ?
控えめに言って気持ち悪いからね? 鳥肌立ってきた……。
「そのようなことを無関係の私に言われても困りますわ。殿下の婿入りは国王陛下がお決めになったこと。それに異を唱えることは王家への反逆だと分かりませんか?」
要するに『王の決定に逆らう真似が出来ると思って? そんな簡単なことも分からないのかよ、バーカ、バーカ! お前と私は無関係の他人だっつーの!』と言ったつもりなんだけど伝わったかな?
あ、泣き声に嗚咽が交じり始めたわ。一応理解したのかしら?
「頼むよ……本夫なんて我儘は言わないから……。第二夫で我慢するから……なあ、頼む……助けてくれ」
「はい? 本夫? 第二夫? 何を言っているのです?」
何それ? 本夫って……まさか本妻の夫バージョン?
聞きなれない言葉だから一瞬本気で分からなかったわ。
え? つまり自分を私の二番目の夫として迎えろって?
…………馬鹿なの?
「閨の回数もあの男優先でいい……。我慢してやる。だからどうか、頼む……!」
キッショイのう…………。
あまりの気持ち悪さにうっかり本音が飛び出すところだった。
この場面でどうして夜の生活の話を出してくるの? 馬鹿なの?
しかも何よその『譲歩してやった』という偉そうな態度は!?
お前なんて一生我慢してろ!
それが人に物を頼む態度か? 頼まれたって御免ではあるが……。
「あらあら……いけませんよ、寝言は寝てからおっしゃってくださいな」
何よそのショックと言わんばかりの顔は?
まさか私が二つ返事で了承するとでも? どれだけ自分に自信があるのよ……。
「そんな……私がここまで譲歩しているのに?」
「何を譲歩しているのかは知りませんが、情けない事をおっしゃらないでください。貴方は王族として国益となる婚姻をする責務があるでしょう? 私の夫になっても何の益にもなりませんよ」
「そんなことはない! 私とお前の婚姻は公爵家と王家を結ぶ橋渡しになるではないか!?」
「橋渡しでしたら私の両親の代で既に完了しております。王妹である母がシスカ家に嫁いだ時点で二家の縁は結ばれておりますよ。私の身に流れる血の半分は王家のもの、私こそが橋渡しの証です。なのでこれ以上の縁は不要にございます」
はっきり告げると第二王子はひどくショックを受けたように固まった。
いやだわ、これじゃ私がイジメているみたいじゃないの?
「ご理解いただけましたら速やかにお帰りください。数日後には婿入りなのですからご準備を致しませんといけないでしょう? もうこの地に帰ることはないでしょうから、忘れ物など致しませんようお気を付けください……」
またショックを受けているようだけど、婿入りしたら離縁されない限り帰れないのは当たり前でしょう?
あちらに骨を埋める覚悟くらい持ちなさいよ、情けないわね。
「い、いやだ……。あんな年増を相手にしたくない……」
「我儘を言っている場合ですか? 貴方に他の選択肢があるとでも?」
「だから! お前と私が結婚すれば全て丸く収まると言っているじゃないか!」
「収まりませんし、それは最大の悪手です。北の女王陛下の伴侶となる方に手を出してただで済むとでも? 最悪は戦もあり得ますよ」
国力で言えばあちらの方が上。そんな格上相手に喧嘩を売るような真似をして、制裁が無いと思うほど緩い頭ではない。
そもそも女王と取り合うほどの価値がこの男にあるとは到底思えない。
王族の責務すら果たす気のない情けない男に。
「いいから私をお前の夫にしろ! これは第二王子としての命令だ!」
「話聞いていませんでした? それとも理解する気がないのかしら……」
開戦もあり得ると言っているのに、尚も己の欲求のみを突き通そうとする彼を心底軽蔑する。先ほどから私は何度も『お前の我儘で国を危機に晒してもいいの?』と注意しているのに全く聞きやしない。この人は自分さえよければ周囲はどうなってもいいらしい。独善的な思考に吐き気がする。
さて、どうしよう……。このまま正論だけ告げてもこの人は聞く耳を持たなそう。
それでは時間の無駄だ。この人に割く時間が勿体ない。
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