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無礼にも程がある
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「まあ、すっかり忘れていたわ。……ところで、その応接室にいる客人とはどなたかしら? 旦那様の幼馴染みと聞いたけれど……」
「はい、旦那様の幼馴染みのアリー様です。ダスター男爵のご息女であります」
「ダスター男爵? 確かフレン家の家臣よね? 家臣の娘が主人の妻に先触れなしに会いにきたというの……?」
無礼だ。無礼にも程がある。
ただ追い返すだけでは甘い。己の立場というものを本人にもその家の者にも分からせなくては。
「お前達、応接室にいるお客様を自宅まで送って差し上げなさい! 自宅に着いたらその家の者に今回の件がどれほど無礼かを、とくと説明しておあげ!」
「はいっ! 畏まりました、奥様!」
システィーナは生家より連れてきた侍女と護衛に指示を飛ばす。
彼等ならば任せて問題ない。ベロア家の使用人はこの邸のように生温い教育を受けていないのだから。
「他の者もよくお聞きなさい。今後は邸内にわたくしの許可無く勝手に客人を入れることは許しません。これを破った者には罰を与えますので、ゆめゆめ忘れることのないように」
常識で考えれば主人の許可なく邸内に客人を迎えるなど言語道断である。
しかし、どうもこの家の者はそんな当たり前のことを理解していないようだ。
そこも含めて今後は厳しく指導が必要になるかもしれない。
「奥様、それでは今後ダスター男爵令嬢以外の旦那様の幼馴染みの方からの訪問を断っても構わないでしょうか?」
旦那様の幼馴染みはそんなにいるの!?
というか、その人達は何しにこの屋敷に来ているの?
「勿論よ。それより、旦那様の幼馴染みは何しにこの邸に来ているの?」
「ええと……旦那様の妻になった方と仲良くなりたいそうで……」
非常に言いにくいといった顔をするジェーン。
その顔を見る限り彼女もその行為がどれだけの無礼に値するかを理解しているのだろう。
家臣の娘が主家の奥方、しかも面識のない相手に気軽に会いに来るという神経がもう理解できない。
「まあ、無礼ですこと。わたくしにそんな無礼な真似をするなんていい度胸ですこと……」
システィーナの静かだが凄みのある声音にジェーンを含めたフレン家の侍女達は皆恐怖で震えあがった。
「全ての使用人に通達なさい。その方々を勝手に邸へ入れないようにと。破った場合は鞭打ちのうえ解雇よ」
震える声で「はい……!」と返事をする侍女達だが、実はシスティーナの告げた罰は甘い部類に入る。約束も無い格下の人間に会わせるという行為は言わずもがな主人への侮辱にあたる。こんな無礼を働けばその場で首を物理的に斬られても文句は言えないものなのだが、どうやら伯爵家の使用人達はそれを知らないようだ。
「いいこと、貴女方が仕える相手はわたくしと旦那様です。そこを履き違えてはなりません。優先すべきは主人たるわたくし達よ。それすら理解できない者はこの邸に必要ありません。それをゆめゆめ忘れぬように」
その邸毎に使用人に在り方も異なるというのは分かるが、流石にこれはない。
主人の許可なしにホイホイ客人を邸内に入れてしまうなんて防犯意識が低すぎるし、上下関係の何たるかも分かっていなさすぎる。
それとも女主人が不在の邸とはこういうものなのだろうか。
「きちんとわたくしの言いつけを守り、わたくしに尽くす者にはそれ相応の報酬を与えます。主人に仕えることがどう己の利益に繋がるかをよくお考えなさい」
「はい! 私共、奥様に忠誠をもってお仕えいたします」
「よろしい。では、もう下がってよくてよ。ああ、ジェーンはここに残りなさい。先ほどの“旦那様の幼馴染み”について詳しく教えてちょうだい」
伯爵家に先触れなしでやってくる“旦那様の幼馴染み”。
もしかしてコレが前の奥方達が離縁した理由なのかもしれない。
「はい、旦那様の幼馴染みのアリー様です。ダスター男爵のご息女であります」
「ダスター男爵? 確かフレン家の家臣よね? 家臣の娘が主人の妻に先触れなしに会いにきたというの……?」
無礼だ。無礼にも程がある。
ただ追い返すだけでは甘い。己の立場というものを本人にもその家の者にも分からせなくては。
「お前達、応接室にいるお客様を自宅まで送って差し上げなさい! 自宅に着いたらその家の者に今回の件がどれほど無礼かを、とくと説明しておあげ!」
「はいっ! 畏まりました、奥様!」
システィーナは生家より連れてきた侍女と護衛に指示を飛ばす。
彼等ならば任せて問題ない。ベロア家の使用人はこの邸のように生温い教育を受けていないのだから。
「他の者もよくお聞きなさい。今後は邸内にわたくしの許可無く勝手に客人を入れることは許しません。これを破った者には罰を与えますので、ゆめゆめ忘れることのないように」
常識で考えれば主人の許可なく邸内に客人を迎えるなど言語道断である。
しかし、どうもこの家の者はそんな当たり前のことを理解していないようだ。
そこも含めて今後は厳しく指導が必要になるかもしれない。
「奥様、それでは今後ダスター男爵令嬢以外の旦那様の幼馴染みの方からの訪問を断っても構わないでしょうか?」
旦那様の幼馴染みはそんなにいるの!?
というか、その人達は何しにこの屋敷に来ているの?
「勿論よ。それより、旦那様の幼馴染みは何しにこの邸に来ているの?」
「ええと……旦那様の妻になった方と仲良くなりたいそうで……」
非常に言いにくいといった顔をするジェーン。
その顔を見る限り彼女もその行為がどれだけの無礼に値するかを理解しているのだろう。
家臣の娘が主家の奥方、しかも面識のない相手に気軽に会いに来るという神経がもう理解できない。
「まあ、無礼ですこと。わたくしにそんな無礼な真似をするなんていい度胸ですこと……」
システィーナの静かだが凄みのある声音にジェーンを含めたフレン家の侍女達は皆恐怖で震えあがった。
「全ての使用人に通達なさい。その方々を勝手に邸へ入れないようにと。破った場合は鞭打ちのうえ解雇よ」
震える声で「はい……!」と返事をする侍女達だが、実はシスティーナの告げた罰は甘い部類に入る。約束も無い格下の人間に会わせるという行為は言わずもがな主人への侮辱にあたる。こんな無礼を働けばその場で首を物理的に斬られても文句は言えないものなのだが、どうやら伯爵家の使用人達はそれを知らないようだ。
「いいこと、貴女方が仕える相手はわたくしと旦那様です。そこを履き違えてはなりません。優先すべきは主人たるわたくし達よ。それすら理解できない者はこの邸に必要ありません。それをゆめゆめ忘れぬように」
その邸毎に使用人に在り方も異なるというのは分かるが、流石にこれはない。
主人の許可なしにホイホイ客人を邸内に入れてしまうなんて防犯意識が低すぎるし、上下関係の何たるかも分かっていなさすぎる。
それとも女主人が不在の邸とはこういうものなのだろうか。
「きちんとわたくしの言いつけを守り、わたくしに尽くす者にはそれ相応の報酬を与えます。主人に仕えることがどう己の利益に繋がるかをよくお考えなさい」
「はい! 私共、奥様に忠誠をもってお仕えいたします」
「よろしい。では、もう下がってよくてよ。ああ、ジェーンはここに残りなさい。先ほどの“旦那様の幼馴染み”について詳しく教えてちょうだい」
伯爵家に先触れなしでやってくる“旦那様の幼馴染み”。
もしかしてコレが前の奥方達が離縁した理由なのかもしれない。
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