8 / 136
その感覚はよろしくない
しおりを挟む
「旦那様の幼馴染みは三名ほどおりまして……先ほどいらしたアリー様に、ゼット男爵家のメグ様、バルタ男爵家のパメラ様です」
「全員女性なのね……。ちなみに年齢は? 結婚はしているの?」
「確か旦那様と近いご年齢だったかと……。そして皆さま未婚のご令嬢です」
結婚適齢期をとうに過ぎた未婚の令嬢が、既婚者の男の家に足繫く通う。
それはつまり……
「彼女達は旦那様の愛人狙いなのね。いえ、もしかしてすでに愛人関係にある……とか?」
「いえ、奥様、それはないかと。旦那様は彼女達をただの幼馴染みとしか見ておられないようです。その……失礼ですが旦那様は女性の外見にうるさい方かと。前の奥様もお綺麗な方でしたし……」
つまりその幼馴染みのご令嬢方は夫基準で美しくないということか。
好みでもない、愛人にするわけでもない未婚の令嬢が邸へ訪れることを夫は何故容認しているのだろう。
「旦那様はその幼馴染みのご令嬢方の訪問をどう思っているのかしら?」
「はあ……おそらくは友人が家に遊びに来ているくらいの感覚なのかと……」
「旦那様のご年齢でその感覚はよろしくないわね……」
いい年をした男、しかも貴族家当主がいつまでもそんな幼子のような感覚では困る。
それに夫が不在と知って帰るならばまだいいが、何故か居座ろうとするところも迷惑でしかない。
だいたい、成人を過ぎた家臣の娘が主君の家に軽々しく遊びにくるなんて許されない。配下に軽んじられているなんて、領地を治める長としての面目丸つぶれではないか。
「旦那様がお帰りになったらきちんと話さないとね。このままではよくないわ」
***
「旦那様、お帰りなさいませ」
「ただいま、システィーナ。先ほど執事に聞いたのだが、今日屋敷にアリーが来たのかい?」
「はい。しばらくいらっしゃいましたね」
嘘は言っていない。
相手をしていないだけで、しばらく居たのは事実だから。
「そうか。アリーは私の幼馴染みなんだ。システィーナも仲良くしてくれると嬉しい」
「あら、何故わたくしが仲良くしなくてはなりませんの? 旦那様の幼馴染みのご令嬢と」
突き放すような口調にレイモンドはシスティーナを怒らせてしまったと焦った。
「い、いや、その……アリーは同性の友人も少なくて……」
「左様でございますか。ですが、それは旦那様が気を配ることではございません。旦那様はこの伯爵領の民全てに気を配らねばならない御方。一家臣の娘の交友関係に気を配る暇などございませんことよ?」
表情一つ変えず淡々と説明するシスティーナ。
自分よりも一回りも年下の妻に正論を吐かれ、レイモンドは唖然とした。
「全員女性なのね……。ちなみに年齢は? 結婚はしているの?」
「確か旦那様と近いご年齢だったかと……。そして皆さま未婚のご令嬢です」
結婚適齢期をとうに過ぎた未婚の令嬢が、既婚者の男の家に足繫く通う。
それはつまり……
「彼女達は旦那様の愛人狙いなのね。いえ、もしかしてすでに愛人関係にある……とか?」
「いえ、奥様、それはないかと。旦那様は彼女達をただの幼馴染みとしか見ておられないようです。その……失礼ですが旦那様は女性の外見にうるさい方かと。前の奥様もお綺麗な方でしたし……」
つまりその幼馴染みのご令嬢方は夫基準で美しくないということか。
好みでもない、愛人にするわけでもない未婚の令嬢が邸へ訪れることを夫は何故容認しているのだろう。
「旦那様はその幼馴染みのご令嬢方の訪問をどう思っているのかしら?」
「はあ……おそらくは友人が家に遊びに来ているくらいの感覚なのかと……」
「旦那様のご年齢でその感覚はよろしくないわね……」
いい年をした男、しかも貴族家当主がいつまでもそんな幼子のような感覚では困る。
それに夫が不在と知って帰るならばまだいいが、何故か居座ろうとするところも迷惑でしかない。
だいたい、成人を過ぎた家臣の娘が主君の家に軽々しく遊びにくるなんて許されない。配下に軽んじられているなんて、領地を治める長としての面目丸つぶれではないか。
「旦那様がお帰りになったらきちんと話さないとね。このままではよくないわ」
***
「旦那様、お帰りなさいませ」
「ただいま、システィーナ。先ほど執事に聞いたのだが、今日屋敷にアリーが来たのかい?」
「はい。しばらくいらっしゃいましたね」
嘘は言っていない。
相手をしていないだけで、しばらく居たのは事実だから。
「そうか。アリーは私の幼馴染みなんだ。システィーナも仲良くしてくれると嬉しい」
「あら、何故わたくしが仲良くしなくてはなりませんの? 旦那様の幼馴染みのご令嬢と」
突き放すような口調にレイモンドはシスティーナを怒らせてしまったと焦った。
「い、いや、その……アリーは同性の友人も少なくて……」
「左様でございますか。ですが、それは旦那様が気を配ることではございません。旦那様はこの伯爵領の民全てに気を配らねばならない御方。一家臣の娘の交友関係に気を配る暇などございませんことよ?」
表情一つ変えず淡々と説明するシスティーナ。
自分よりも一回りも年下の妻に正論を吐かれ、レイモンドは唖然とした。
5,141
あなたにおすすめの小説
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?
との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」
結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。
夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、
えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。
どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに?
ーーーーーー
完結、予約投稿済みです。
R15は、今回も念の為
皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。
一年だけの夫婦でも私は幸せでした。
クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。
フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。
フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。
更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる