どうして許されると思ったの?

わらびもち

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で、証拠は?

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「そうなの……。それはさておき、どういたしますか旦那様?」

「どう……か。どうしたらいいんだろうな……」

 侍女長が自分を騙していたこと。
 幼馴染みが伯爵家の資金を横領していたこと。
 前妻の生家からも資金を巻き上げていたこと。
 
 隠されていた真実が浮き彫りになりレイモンドは途方に暮れていた。

 システィーナはそんな夫を頼りないと思う一方で、何故今までこの件が表沙汰にならなかったのかという疑問を覚えた。いくら勘違いとはいえ愛人が好き勝手していることに苦言を呈さず、実家の資金まで使って散財を補填するなんてことあるだろうか?

 しかも二人いる前妻のどちらも同じような対応をしていたというのはどうにもおかしい。
 どちらか一人くらいは夫に一言あっても不思議ではない。愛人の散財を妻が補填するなんてどう考えても理不尽だ。それを一人目の妻も二人目の妻も夫に黙って我慢する、というのは何とも不自然な気がする。

「……前の奥様方の家に補填した分をお返しすべきかと。それと、出来れば奥様方にも直接謝罪が出来ればいいのですが……」

 これは難しいかもしれない。何故なら前妻達はもうこの国にはいないから。

「……そうだな、それがいい」

「次に旦那様の幼馴染とその家の当主を呼び出し、この不始末についてどう責任をとるかを詰めた方がよろしいですね。……分かっていると思いますが、幼馴染のご令嬢たちとはもう二度と会えないと覚悟をなさってくださいね? 伯爵家の資金のみならず、他家の資金まで横領した犯罪者に対して温情は不要です」

 情けをかけたらどうなるか分かっているんだろうな?
 と言わんばかりの妻の圧に恐れを成したレイモンドは冷や汗をかきながら「勿論だとも!」と返す。

「その際にはわたくしも立ち会います。ああ、場合によっては斬首も有り得ることを覚悟しておいてくださいましね?」

「ざ、斬首……? そ……そこまでするのか?」

「当然ではありませんか。前の奥様方の生家にも被害が及んでいるのなら、当家だけの問題では済みません。今後これを真似するような愚か者を出さない為にも厳しい対応が必要です」

 何を甘いことを言っているんだ、という絶対零度の視線に耐え切れず、レイモンドは「その通りだな!」と勢いよく首を縦に振った。

「元はといえば旦那様が異性のご友人との距離感を間違えたせいなのだと肝に銘じてくださいませ。そうでなくとも此度のことはやり過ぎにございます。あ、ちなみに侍女長、先ほどの発言に虚偽はありませんね? もしあった場合は許しませんよ。貴女はご自分の発言に命を懸けられますか?」

 命と天秤にかけられた侍女長は「勿論でございます!」とレイモンドと同じように激しく首を縦に振った。

「そう。で、この件は何か証拠はあるの?」

「へっ!? 証拠でございますか……?」

「そうよ。証拠も無しに家臣の娘を尋問するわけにはいかないでしょう?」

 今のところ侍女長の言葉以外に何も証拠がない。
 侍女長がこう言っていたから、という一方の証言だけで相手を詰めるわけにもいかない。
 そんなの相手が「やっていません」と言えばそれ以上糾弾しようがないのだから。

「今わたくしが言ったことは全て証拠があること前提よ。真偽も分からないうちから決めつけて動くことは出来ないわ」

「システィーナ、それは侍女長から聞いたと言えばいいのではないか?」

「否定されてしまえばそれで終わりです。有耶無耶にされてしまうばかりではなく、疑いをかけられたとこちらが非難されてしまう恐れがあります」

 再度侍女長の方を向くと、困ったような顔で脂汗をかいていた。
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