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好きにやらせてほしい
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「まずは前の奥様方が幼馴染のお嬢様方の散財を補填した分につきましては一旦ベロア家が肩代わりし、そこから一括で返済しようと考えております」
「え? 何故ベロア家が肩代わりをする必要が……」
「幼馴染の家に請求したとして、一括で返済するのは難しい金額です。分割となるといつ全額回収できるか分かりません。それではいつまで経っても先方へ全額返済できないでしょう? ベロア家が介入し、債権者となった方が円滑に進みます。分割返済分をちまちまと先方に届けるのは手間がかかりますし、先方だって一括で返してもらった方がよいでしょうから」
「いや、それはそうだが……。いくら君の生家といえども伯爵家の問題に他家を巻き込むのはどうだろう」
「問題ありません。資金の方はわたくしの個人資産から捻出致しますので、ベロア家の資産に手をつけることはありません。あくまで名前を借りるだけです」
「それならばベロア家でなく、当家の名でもいいのではないか? それに君の個人資産を使うなんてとんでもない! 使うなら私の個人資産を……」
「いいえ、旦那様。わたくしが管理をしたいと思っておりますので、わたくしの個人資産の方が都合がよいのです。ベロア家の名も然りでございます」
何だか良い感じの言葉で誤魔化したが、本音はベロア家が債権者の方がやりやすいからだ。ベロア家ならば多少えげつない方法を使ってでも必ず返済金を回収できる。それだけの人脈も権力も有している。フレン家ではまず無理だ。
そしてシスティーナの個人資産から肩代わりするのであれば管理も請求も好きなように出来る。ある程度自由にやらせてもらう方がシスティーナの性に合っていた。
「そして先方へお返しする方法ですが、わたくしが直接足を運んでお届けしようかと思っております」
「え!? どうして君が? 流石にそこまでやってもらうわけにはいかないよ! 私がする」
「お言葉ですが、旦那様があちらに向かうとなると父と共同で行っております鉱山の開発計画はどうなります? 責任者の旦那様が不在では計画に支障をきたす恐れがありますし、それでは多方面にご迷惑がかかってしまいます。この事業にはフレン伯爵領の未来がかかっているのですよ?」
「う……確かに、それはそうだが……。でも、私が引き起こした面倒事の始末を全て君にさせるわけには……」
「いいえ、これは旦那様個人ではなく伯爵家の問題です。ならば伯爵夫人であるわたくしが対処するのは当然のこと。それに、父に知られてはこの程度のことも処理できないのかとわたくしが叱られてしまいますわ」
叱られるというよりも失望されると言った方が正しいかもしれない。
この程度はフレン家にとっては大ごとでも父にとっては些末なことに過ぎない。
そんな些末なことで念願の鉱山開発に支障が出れば父は「こんなことも対処できないのか」とがっかりした顔で言ってくるに違いない。そんな腹が立つことを言われるのは御免だ。
その後も責任感から自分がすると言っていた夫を耳あたりのいい言葉で言い包めたシスティーナはこの件について実権を握ることとなった。今後は事後報告のみでいいとの言質を取り、全てシスティーナの采配に任せるとの承諾を得る。
自分のやらかしによる尻拭いを何の関係も無い妻にやらせてしまうことに難色を示したレイモンドだが、システィーナの巧みな話術によりいつの間にか『妻に任せた方が間違いないのか……?』と思い始めたのだ。もはや洗脳の域である。
今まで逐一レイモンドに承諾をとっていたので少々やりにくかったが、これでやっと自由に動けるとシスティーナは心の中で大層喜んだ。自分が嫁ぐ前の不始末への対処を嫌がるどころか面白がっている。
(これで今よりも自由に動けるわ。まずは目障りな害虫二匹の駆除から始めましょうか……)
障害は自らの手で排除するに限る。
システィーナは遠出前の子供のように期待で心を弾ませるのだった。
「え? 何故ベロア家が肩代わりをする必要が……」
「幼馴染の家に請求したとして、一括で返済するのは難しい金額です。分割となるといつ全額回収できるか分かりません。それではいつまで経っても先方へ全額返済できないでしょう? ベロア家が介入し、債権者となった方が円滑に進みます。分割返済分をちまちまと先方に届けるのは手間がかかりますし、先方だって一括で返してもらった方がよいでしょうから」
「いや、それはそうだが……。いくら君の生家といえども伯爵家の問題に他家を巻き込むのはどうだろう」
「問題ありません。資金の方はわたくしの個人資産から捻出致しますので、ベロア家の資産に手をつけることはありません。あくまで名前を借りるだけです」
「それならばベロア家でなく、当家の名でもいいのではないか? それに君の個人資産を使うなんてとんでもない! 使うなら私の個人資産を……」
「いいえ、旦那様。わたくしが管理をしたいと思っておりますので、わたくしの個人資産の方が都合がよいのです。ベロア家の名も然りでございます」
何だか良い感じの言葉で誤魔化したが、本音はベロア家が債権者の方がやりやすいからだ。ベロア家ならば多少えげつない方法を使ってでも必ず返済金を回収できる。それだけの人脈も権力も有している。フレン家ではまず無理だ。
そしてシスティーナの個人資産から肩代わりするのであれば管理も請求も好きなように出来る。ある程度自由にやらせてもらう方がシスティーナの性に合っていた。
「そして先方へお返しする方法ですが、わたくしが直接足を運んでお届けしようかと思っております」
「え!? どうして君が? 流石にそこまでやってもらうわけにはいかないよ! 私がする」
「お言葉ですが、旦那様があちらに向かうとなると父と共同で行っております鉱山の開発計画はどうなります? 責任者の旦那様が不在では計画に支障をきたす恐れがありますし、それでは多方面にご迷惑がかかってしまいます。この事業にはフレン伯爵領の未来がかかっているのですよ?」
「う……確かに、それはそうだが……。でも、私が引き起こした面倒事の始末を全て君にさせるわけには……」
「いいえ、これは旦那様個人ではなく伯爵家の問題です。ならば伯爵夫人であるわたくしが対処するのは当然のこと。それに、父に知られてはこの程度のことも処理できないのかとわたくしが叱られてしまいますわ」
叱られるというよりも失望されると言った方が正しいかもしれない。
この程度はフレン家にとっては大ごとでも父にとっては些末なことに過ぎない。
そんな些末なことで念願の鉱山開発に支障が出れば父は「こんなことも対処できないのか」とがっかりした顔で言ってくるに違いない。そんな腹が立つことを言われるのは御免だ。
その後も責任感から自分がすると言っていた夫を耳あたりのいい言葉で言い包めたシスティーナはこの件について実権を握ることとなった。今後は事後報告のみでいいとの言質を取り、全てシスティーナの采配に任せるとの承諾を得る。
自分のやらかしによる尻拭いを何の関係も無い妻にやらせてしまうことに難色を示したレイモンドだが、システィーナの巧みな話術によりいつの間にか『妻に任せた方が間違いないのか……?』と思い始めたのだ。もはや洗脳の域である。
今まで逐一レイモンドに承諾をとっていたので少々やりにくかったが、これでやっと自由に動けるとシスティーナは心の中で大層喜んだ。自分が嫁ぐ前の不始末への対処を嫌がるどころか面白がっている。
(これで今よりも自由に動けるわ。まずは目障りな害虫二匹の駆除から始めましょうか……)
障害は自らの手で排除するに限る。
システィーナは遠出前の子供のように期待で心を弾ませるのだった。
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