どうして許されると思ったの?

わらびもち

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寒い日のブランデーケーキ

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 少し肌寒い日の午後、システィーナは私室で報告書に目を通していた。

「奥様、お茶が入りました」

「ありがとう」

 専属侍女が淹れてくれたお茶を飲みほっと一息つく。
 分厚い報告書を読んでいたせいか疲れてしまったようだ。

「本日のお茶請けはブランデーケーキでございます」

 白磁の皿に乗せられたケーキをフォークで一口大にすくい、口へと運ぶ。
 ブランデーの芳醇な香りが口内に広がり思わず笑みが零れた。

「美味しいわ」

「それはようございました」

 ブランデーケーキはシスティーナの好物の一つである。
 好物を前にすると流石の彼女も表情が緩む。

「ところで奥様、そちらはもしやの報告書ですか?」

「ええ、そうよ。ようやく二人分読み終えたわ」

 借金のカタに嫁いでいったアリーとメグの近況を綴った報告書が早々にシスティーナの元へと届けられた。予想を超えた量の多さに流石の彼女も目を丸くして驚いたものだ。嫁いで間もないというのにどうしてそこまで書くことがあるのか……と目を通してみると、そこには予想を超えた内容が綴られていた。

「確か……アリー嬢が大農家の経営主に、メグ嬢が大牧場の経営主へと嫁いだのですよね?」

「そうよ。農家か牧場かどちらに娘を嫁がせるかの選択をまずダスター男爵にしてもらって、残った方をゼット家に差し上げようとしたのだけど……男爵がのよ。だからご嫡男に選んでもらおうとしたところ、どちらでも構わないと言うものだからゼット家に先に選択してもらったの」


「……ゼット家も男爵が事故に遭ったようで当主の座が次代に移ったのですよね? では、選択はその方が?」

「そう。次代はメグ嬢の姉君なのだけど、彼女ったら『より辛い方でお願いします』なんて言ったのよ。実の妹に辛い想いをしてほしいなんて言うとは思わなかったから驚いたわ」

「妹のせいで危うく死罪になるところだったのですから、そう思うのも致し方ないかと。ところで農家よりも牧場の方が大変なのですか?」

「仕事内容に関しては一概にはどちらが大変か断言することは難しいわ。人によって感じ方は違うでしょうし……向き不向きもあるからね。ただ……人間関係でいえば複雑なのは後者の方だと断言できるわ」

「人間関係ですか……」

「ええ、前者もそうだけど、後者はそれを上回るほどのだからね」

 その言葉の意味を想像し、侍女は嫌そうに顔を顰めた。
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