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情け

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「ごめんごめん、冗談だよ。あまりに慣れてない感じがして可愛いなって思って」
「良かった…」
思わず安堵の溜息が漏れる。恥ずかしすぎて目を合わせられない。
「そう言えば言ってなかったけど、医療関係には結構詳しいから何かあったらすぐ対応するよ」
「そうなの?」
「うん、そうだよ。だから具合が悪かったり、怪我したら言ってね」
「ありがとう」
優しいな、はるくん。ご飯も作ってくれるし、我儘も聞いてくれる。
「何なら今からお風呂でこけて骨折しちゃっても良いんだよ?」
「じ、冗談だよね」
「うん、勿論。可愛いみみが足を骨折して俺の介護無しじゃ何処にも行けないようにしようなんて考えてないよ」
「 そ、そんなこと」
考えてたの。はるくんは意外とサディストなのかな。それとも、まだからかってるの。
「ねえねえ、みみ。上がって来たら一緒にこれ見ようね」
ふふと笑ったはるくんが持ってたのは、男の人がベッドの下や本棚の裏に隠すとかよくテレビで聞いたことがあるあれだった。綺麗な女の人が開けた服を着てこちらに色っぽい視線を送っている。
「なっ、なん…」
仮にも中身が高校生の私とは言え、妻というものがありながら堂々とこんなものを。
「この女優好きなんだよね、みみは好き?」
「し、知らないっ!!」
「じゃあ、一緒に確かめようね。どうゆう表情とか部位が好きとか教えるからね」
クスクス笑いながらはるくんは私より先に歩いて、洗面所の方へ促す。電気をつけて扉を開ける。
「どうぞ、暖かいうちに入ってね。ちゃんと湯船に浸かるんだよ」
よしよしと頭を撫でられる。
「ありがとう、ちゃんと入って温まります」
「良かった、逆上せないようにね」
「逆上せません!!幾つだと思ってるの」
「ふふ、可愛い」
完全にはるくんは私の事を子供扱いしてからかってくる。
「あの、出てくれないと着替えられない」
一向に出ていく気配が無いはるくん。
「見慣れてるから俺のことは気にしなくていいよ」
さあと言わんばかりにこの状況で着替えさせようとしてくる。
「気にするの!!」
どうしてこんなに意地悪なの。恥ずかしい。お風呂に入ってないのに逆上せそう。
「ふふ、じゃあ温まってね」
パタンとドアを閉められる。恥ずかしくて声にならない声が出る。今日だけで色々なことが起こった。楓先輩、私乙女の危機に晒されてます。楓先輩の家だったらこの上無い喜びなのに。違う男の家でこんなことになるなんて。一体全体どうなってるの。神様仏様、楓様。どうか私に知恵を。


    
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