11 / 19
第十一話 王宮の記憶
しおりを挟む
▲
アルドヴィナは魔術師と戦った事がなかった。
だから、どうしたらいいのかさっぱりわからない。
「魔術院の講習を受けておくべきだったな、機会があったら必ずそうしよう」
これでは、逃げ出すだけでも容易な事ではなさそうだ。
その上片目を取り戻す事を考えると、途方に暮れてしまう。
魚の籠を台所に置いて、塔の最上階の部屋に閉じこもる。
窓から外を眺めると、青い海と草の生えた丘が半分ずつ見えた。
アルドヴィナは椅子に腰かけて、じっくり考えて見る。
彼はあの危険な試合の時、盾を投げてアルドヴィナを救ってくれたという。
自分で片目を盗んで危険な状態にしておきながら、一方では命を助けた????
何がしたいんだかさっぱりわからん。
それはともかく、あの時王宮にいたという事だ。
なかなか鮮やかな技を使うが、王宮のお抱え魔術師だったろうか?
魔術師は皆同じような模様のついた服をぞろぞろ着て、帽子やターバンをかぶっている。
それだけで十分区別がつけにくい。
アルドヴィナも仕事柄、王の臣下は皆顔を記憶しているつもりだ。
しかし魔術師に関しては、それは無意味なのだ。
彼らは自在に姿を変える事ができるし、しょっちゅうやっているようだ。
悪戯が大好きなのである。
仕事でも都合の悪い時は、弟子に自分に化けさせ登城させるなど日常茶飯事なのだ。
そもそも王事態が魔術師なので、得体の知れない知人友人を引っ張り込むのはしょっちゅうだ。
そのたびに警備の近衛兵は右往左往させられる。
彼を王宮で見かけた気もするが、確かではない。
だが、彼はアルドヴィナを知っていたのだ。しかも、相当親し気な口をきく。
こちらには彼の姿は確かに覚えがなかった。
だが、ふとしたおりなどに懐かしい感じがする。
あの表情が、あの話し方、笑い方が……。
アルドヴィナの心のどこかが、慕っているような気がする。
「うーん、わからん。だから魔術師なんか嫌だ」
彼は何と言っていたっけ?
アルドヴィナがずっとここで暮らすと言えば、目を返してくれる。
「ようし」
その時、部屋の扉が軽くノックされ、青年の顔が覗いて、
「お昼の支度ができましたよ」
と言って、またひっこんだ。
気づいたらいつの間にかお腹がぺこぺこになっている。
扉の外に出ると、いい匂いがここまで漂って来ていた。
アルドヴィナは我知らず急ぎ足になって、台所に向かう。
アルドヴィナは魔術師と戦った事がなかった。
だから、どうしたらいいのかさっぱりわからない。
「魔術院の講習を受けておくべきだったな、機会があったら必ずそうしよう」
これでは、逃げ出すだけでも容易な事ではなさそうだ。
その上片目を取り戻す事を考えると、途方に暮れてしまう。
魚の籠を台所に置いて、塔の最上階の部屋に閉じこもる。
窓から外を眺めると、青い海と草の生えた丘が半分ずつ見えた。
アルドヴィナは椅子に腰かけて、じっくり考えて見る。
彼はあの危険な試合の時、盾を投げてアルドヴィナを救ってくれたという。
自分で片目を盗んで危険な状態にしておきながら、一方では命を助けた????
何がしたいんだかさっぱりわからん。
それはともかく、あの時王宮にいたという事だ。
なかなか鮮やかな技を使うが、王宮のお抱え魔術師だったろうか?
魔術師は皆同じような模様のついた服をぞろぞろ着て、帽子やターバンをかぶっている。
それだけで十分区別がつけにくい。
アルドヴィナも仕事柄、王の臣下は皆顔を記憶しているつもりだ。
しかし魔術師に関しては、それは無意味なのだ。
彼らは自在に姿を変える事ができるし、しょっちゅうやっているようだ。
悪戯が大好きなのである。
仕事でも都合の悪い時は、弟子に自分に化けさせ登城させるなど日常茶飯事なのだ。
そもそも王事態が魔術師なので、得体の知れない知人友人を引っ張り込むのはしょっちゅうだ。
そのたびに警備の近衛兵は右往左往させられる。
彼を王宮で見かけた気もするが、確かではない。
だが、彼はアルドヴィナを知っていたのだ。しかも、相当親し気な口をきく。
こちらには彼の姿は確かに覚えがなかった。
だが、ふとしたおりなどに懐かしい感じがする。
あの表情が、あの話し方、笑い方が……。
アルドヴィナの心のどこかが、慕っているような気がする。
「うーん、わからん。だから魔術師なんか嫌だ」
彼は何と言っていたっけ?
アルドヴィナがずっとここで暮らすと言えば、目を返してくれる。
「ようし」
その時、部屋の扉が軽くノックされ、青年の顔が覗いて、
「お昼の支度ができましたよ」
と言って、またひっこんだ。
気づいたらいつの間にかお腹がぺこぺこになっている。
扉の外に出ると、いい匂いがここまで漂って来ていた。
アルドヴィナは我知らず急ぎ足になって、台所に向かう。
1
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
聖銀竜に喰われる夜――冷酷な宰相閣下は、禁書庫の司書を執愛の檻に囚える
真守 輪
恋愛
「逃がさない。その賢しい口も、奥の震えも――すべて、私のものだ」
王宮で「禁書庫の未亡人」と揶揄される地味な司書・ルネ。
その正体は、好奇心旺盛でちょっぴり無作法な、本を愛する伯爵令嬢。
彼女には、誰にも言えない秘密があった。
それは、冷酷非道と恐れられる王弟・ゼファール宰相に、夜の禁書庫で秘密に抱かれていること。
聖銀竜の血を引き、興奮すると強靭な鱗と尾が顕れる彼。
人外の剛腕に抱き潰され、甘美な絶望に呑み込まれる夜。
「ただの愛人」と割り切っていたはずなのに、彼の孤独な熱に触れるたび、ルネの心は無防備に暴かれていく。
しかし、ルネは知らなかった。
彼が近づいた真の目的は、彼女が守る「禁書」――王国を揺るがす禁断の真実にあったことを。
「君は、私のものだ。禁書も、その魂も、すべてな」
嘘から始まった関係が、執着に変わる。
竜の情欲と宮廷の陰謀が絡み合う、背徳のインモラル・ロマンス。
女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」
行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。
相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。
でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!
それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。
え、「何もしなくていい」?!
じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!
こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?
どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。
二人が歩み寄る日は、来るのか。
得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?
意外とお似合いなのかもしれません。笑
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる