きみに恋い焦がれる〜ただ……それだけだ〜

水ノ瀬 あおい

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きっかけ

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「アーリン様!」

 聞き慣れたシャロンの声がして振り返る。
 ドアを開けてそのまま体を支えるようにしているシャロンに駆け寄ると、シャロンは今にも泣き出しそうな顔をしていた。

「ご、ご無事ですか?」

 いつもの明るい声からは想像もできない震えた弱々しい声。

「あぁ。でも、シーバスが……」

 ギリッと下唇を噛むと、シャロンはこくりと頷いた。

「処置は無事に終えたと聞いております。特別に城の専属医師たちに診て頂いたそうで……」
「それで!?シーバスは!?」
「まだ目は覚めないとしか……」

 それを聞いて僕はまた弾かれたように走り出した。
 城の専属医師。
 それならばその処置室に行けば……!!
 僕が鳥に襲われたと聞いてシャロンが心配していてくれたのはわかる。
 だが、今は心配を掛けたと寄り添うよりもシーバスの様子を確認する方が先だった。



 結局、処置室にもその姿はなく、むしろシーバスは城の裏口に近い小部屋で寝かされていた。
 ただ、雑な扱いを受けたためではない。
 襲われて出血も酷かったためにすぐに寝かされ、そこに医師たちが駆け付けたためだった。

「シーバス!」

 処置室に居た医師によって案内された僕はその姿を見て崩れそうになる。
 今日初めて微笑んでくれたその顔は血の気を感じられないほど青白く、上半身裸にされて包帯を巻かれている左側はまだかなり血が滲んでいた。
 側に置かれている箱にも真っ赤になった包帯などが見える。
 一体シーバスはどれだけの血を流したのだろうか。
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