わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

聞いてくれ

3

　食べた後も帰るのを引き伸ばしたせいで王都に戻ったのは寝静まった家もあるような時刻。
　車は屋敷の方へ曲がらず真っすぐ城に向かうのを見て、俺は身を乗り出した。

「おい、何で城こっちなんだよ？」
「リューラ様からの王命ですので」

　俺が声を低くしても、エミリオは気にする様子もなく運転を続ける。

「んな個人的なモンに王命使うんじゃねぇっ！」

　喚いても車が停まることはなく、衛兵まで聞いていたらしくすんなりと城門を開けてくれた。

「こんな夜にって……どんな急用だよ」

　後部座席に沈み込んでぼやく。
　今日はこんなのばっかりな気がした。

「それほど大事なんでしょう？」
「……お前マジで言ってんのか？」

　ため息を混ぜて目を細めると、

「私にも身を固めたくない理由があると言ったらわかって頂けますか？」

　エミリオの声のボリュームが落ちる。

「は？」
「冗談です」

　すぐに軽く笑ったが冗談？
　いや、あれはガチの言い方だった気がする。
　気付かれないとでも思ったのだろうか？
　ミラーでチラッと見えたその顔はかなりマジだった。
　エミリオは三十七歳だ。
　年齢的にもこれまで何度も縁談の話はあったはずだが？

「自分だけ黙秘かよ」

　思いっきりミラー越しに睨んでやると、エミリオは肩を竦める。

「私たちのような爵位もない一般市民はただ仕事のみを考えてお仕えするのも一つの道なんですよ」

　言いながらエミリオはスピードを落とした。
　城の通用口にはロットルの姿。
　すぐにリューラも出てきて俺はかなり強い力で抱き締められた。