わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

水ノ瀬 あおい

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悲嘆

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 城にならば更に詳しい情報も入っているだろうがあの車列。
 簡単には入れないだろう。

「ただ、この後、城に呼ばれております」
「は?何で……?」
 
 今まさに望む返答に戸惑いながら聞くと、マニエルは部屋に掛けてあった深緑のジャケットを羽織った。
 キラリと光る胸の勲章。

「僕は今、“軍師補佐”をさせて頂いているので」

 身に着けたことで更に表情は引き締まった気がする。
 あのマニエルが。
 リューラがマニエルには指揮能力があると言っていたが、まだ一応学生であるのにそれを活かす仕事を始めたらしい。ただ……

「待て。軍師補佐が呼ばれるって……」
「えぇ、戦争になるでしょうね」

 サラッと言い切るマニエルに言葉が出てこない。
 戦争!?
 この国が!?
 こんなずっと平和にのんびり過ごしてきた国がそんなこと……。

「まぁ、戦争と言っても援軍という体だと思いますが……さすがに医師団長が亡くなって更に被害もあるとなると何もしないわけにはいかないでしょうね」

 冷静な判断であるし言う通りだと思う。だが、
 
「……サフィナが被害に遭っていたら?」

 考えたくはないことを口にすると、マニエルは深く息を吐き出して目を細めた。

「あのリオッター家の令嬢が……なんて……下手したらラグランドルは消えますよ」

 それは大袈裟なんかじゃない。
 薬品全てがストップし、公爵を敵に回したくない国々からも背を向けられ……それだけの力がリオッター家にはある。
 戦の中、それは終わりを意味するだろう。
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