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★シたい
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「……さすがに飲み過ぎですよ」
隣にやって来た深谷先生に言われて手にしていたグラスを置く。
「何で?」
ぽそっと出た呟きはこの騒がしい部屋の中では聞こえなかったのか、先生は不思議そうな顔をした。
フルフルと首を振ってギュッとグラスを見つめる。
「周防先生?飲みましたー?」
「はい、頂きましたよ」
向かいの席に来た同じ五年の学年主任、真野先生に笑われて頷いてグラスにまた口をつけた。
少し温くなっているビールの苦みに眉をひそめたくなる。
「そろそろここはお開きで次行くらしいからさ!」
「そうなんですね」
言いながらグラスの中身を飲み干しても、やはり酔いは回ってこない。
佐藤くんに言われて今日は完全に記憶はなくさない程度に……でも、少し酔って甘えてみようと思っていたのに。
こういう時に限ってなぜか全く酔う気配がない。
なぜだろう?
ビールにレモンサワー、日本酒……それなりに飲んだはずなのに。
「周防先生?」
深谷先生に肩を叩かれてハッとする。
いつの間にか幹事役の先生の話も終わっていて、既に部屋を出ている先生たちも居るほどもうみんなは帰り支度をしていた。
「僕たちも帰りましょうか?」
微笑まれて頷く。
立ち上がって少しクラッとした気はしたが、やはり普通に歩き出すことができた。
先生より先に部屋を出て、前を歩きながら考える。
酔わなかった。
というか、酔えなかった。
さて……どうしようか?
隣にやって来た深谷先生に言われて手にしていたグラスを置く。
「何で?」
ぽそっと出た呟きはこの騒がしい部屋の中では聞こえなかったのか、先生は不思議そうな顔をした。
フルフルと首を振ってギュッとグラスを見つめる。
「周防先生?飲みましたー?」
「はい、頂きましたよ」
向かいの席に来た同じ五年の学年主任、真野先生に笑われて頷いてグラスにまた口をつけた。
少し温くなっているビールの苦みに眉をひそめたくなる。
「そろそろここはお開きで次行くらしいからさ!」
「そうなんですね」
言いながらグラスの中身を飲み干しても、やはり酔いは回ってこない。
佐藤くんに言われて今日は完全に記憶はなくさない程度に……でも、少し酔って甘えてみようと思っていたのに。
こういう時に限ってなぜか全く酔う気配がない。
なぜだろう?
ビールにレモンサワー、日本酒……それなりに飲んだはずなのに。
「周防先生?」
深谷先生に肩を叩かれてハッとする。
いつの間にか幹事役の先生の話も終わっていて、既に部屋を出ている先生たちも居るほどもうみんなは帰り支度をしていた。
「僕たちも帰りましょうか?」
微笑まれて頷く。
立ち上がって少しクラッとした気はしたが、やはり普通に歩き出すことができた。
先生より先に部屋を出て、前を歩きながら考える。
酔わなかった。
というか、酔えなかった。
さて……どうしようか?
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