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第一章 今、天使って言った?
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「切ったって……誰が?」
なのに、当の菜月ちゃんは私の言葉にきょとんとした顔になった。
「その髪だよ! なんで切っちゃったの?! あ、うん、それも似合うけど!」
毎日お母さんに結わえてもらってるの、って嬉しそうに話していた菜月ちゃんの自慢の髪だった。だから、まさかそんなに短く切るなんて思ってもいなかった。
びっくりしている私とはうらはらに、菜月ちゃんはけげんな顔で首をかしげる。
「髪って……私? ここしばらくは切ってないよ?」
「何言ってんの、美優。菜月の髪って、そんなもんじゃん。何かかんちがいしてない?」
「え……ええ?!」
莉子ちゃんにまでそんなことを言われてさらにおどろく。
だって莉子ちゃんだって、黒くてまっすぐでお人形みたいな菜月ちゃんの髪がうらやましい、ってこないだ言ってたばかりなのに。
「それより、萌ちゃんは? 今日は休み?」
菜月ちゃんは、私の様子より萌ちゃんが一緒じゃないことの方が気になるらしかった。いつも三人で一緒に登校することを、知っているから。
莉子ちゃんが、ランドセルをおろしながら菜月ちゃんにこたえた。
「萌、保健室にいるよ」
「どうしたの?」
「んー、ちょっと具合悪いみたい」
そうなのだ。私と一緒に行った保健室で、先生が萌ちゃんの顔色が悪いことに気がついた。
萌ちゃんは朝ごはんを食べてなくて軽く貧血気味だったらしい。今は、先生にもらったおにぎりを保健室で食べている。ちなみに、おにぎりは先生のお昼用のお弁当だって。
そう説明したら、菜月ちゃんもちょっと、ほ、としたような顔になった。
「よかった。ほら萌ちゃん、先週も倒れたじゃん? またそうなのかと思って」
「ああ、あれはもう大丈夫みたい。……でも、少しそれもあったのかなあ」
先週も萌ちゃんは、具合が悪くて体育の時間に倒れたんだ。いつも穏やかににこにことしているから、私たちも倒れるまで気づかなかった。今朝もおはようと言った時に具合を聞いたけど、週末十分休んだから、と言われてそのまま来てしまった。でもさすがに、保健室の先生にはわかったみたい。
菜月ちゃんと話していると、予鈴が鳴った。私たちはあわてて自分の席に着く。
ランドセルから教科書を出して机にしまい終えると、私はちらりと向こうの席に座っている菜月ちゃんを見る。
菜月ちゃんの髪……確かに先週は長かったよね。……と、思うんだけど。莉子ちゃんは気にしてなかったし、私、何かかんちがいしてるのかな。
気になった私は、隣の席のまこちゃんに声をかけた。
「ねえ、まこちゃん」
「なあに?」
まこちゃんは、一時間目の国語の教科書を出しながら返事をした。
「菜月ちゃんって、髪短かったっけ?」
「まあ、短いって言えば短いよね。前みたいに、また伸ばすらしいよ」
「でもさ、先週の金曜日までは、背中まで長かったよね?」
「は?」
おどろいたように、まこちゃんは私に顔を向けた。
「金曜日? 何言ってんの、美優ちゃん」
「菜月ちゃんって、週末に髪切ってきたのかな」
「知らないけど……菜月の髪が長かったのって、去年くらいじゃない? ずっとショートでしょ」
「そ、そうだっけ? あはは、ごめん。私の勘違いかな……」
そこで、担任の沢田先生が教室に入ってきて、私たちは前を向いた。
沢田先生は、ママより年上のベテランの先生で、普段は優しいけど怒るとすっごく怖い。でもみんなの話をよく聞いてくれるし、時には一緒にふざけてもくれるから、学校でも人気の先生だ。
さっそく莉子ちゃんが先生に萌ちゃんのことを報告しに行くと、先生は知っていたみたいでうなずいた。
「ええ、保健室の浅田先生に聞いているわ。みなさん、萌さんはちょっと遅れてくるそうです。休みの人はいないわね。他に具合悪い人はいるかしら」
「はいはい」
颯太が元気に手をあげる。
なのに、当の菜月ちゃんは私の言葉にきょとんとした顔になった。
「その髪だよ! なんで切っちゃったの?! あ、うん、それも似合うけど!」
毎日お母さんに結わえてもらってるの、って嬉しそうに話していた菜月ちゃんの自慢の髪だった。だから、まさかそんなに短く切るなんて思ってもいなかった。
びっくりしている私とはうらはらに、菜月ちゃんはけげんな顔で首をかしげる。
「髪って……私? ここしばらくは切ってないよ?」
「何言ってんの、美優。菜月の髪って、そんなもんじゃん。何かかんちがいしてない?」
「え……ええ?!」
莉子ちゃんにまでそんなことを言われてさらにおどろく。
だって莉子ちゃんだって、黒くてまっすぐでお人形みたいな菜月ちゃんの髪がうらやましい、ってこないだ言ってたばかりなのに。
「それより、萌ちゃんは? 今日は休み?」
菜月ちゃんは、私の様子より萌ちゃんが一緒じゃないことの方が気になるらしかった。いつも三人で一緒に登校することを、知っているから。
莉子ちゃんが、ランドセルをおろしながら菜月ちゃんにこたえた。
「萌、保健室にいるよ」
「どうしたの?」
「んー、ちょっと具合悪いみたい」
そうなのだ。私と一緒に行った保健室で、先生が萌ちゃんの顔色が悪いことに気がついた。
萌ちゃんは朝ごはんを食べてなくて軽く貧血気味だったらしい。今は、先生にもらったおにぎりを保健室で食べている。ちなみに、おにぎりは先生のお昼用のお弁当だって。
そう説明したら、菜月ちゃんもちょっと、ほ、としたような顔になった。
「よかった。ほら萌ちゃん、先週も倒れたじゃん? またそうなのかと思って」
「ああ、あれはもう大丈夫みたい。……でも、少しそれもあったのかなあ」
先週も萌ちゃんは、具合が悪くて体育の時間に倒れたんだ。いつも穏やかににこにことしているから、私たちも倒れるまで気づかなかった。今朝もおはようと言った時に具合を聞いたけど、週末十分休んだから、と言われてそのまま来てしまった。でもさすがに、保健室の先生にはわかったみたい。
菜月ちゃんと話していると、予鈴が鳴った。私たちはあわてて自分の席に着く。
ランドセルから教科書を出して机にしまい終えると、私はちらりと向こうの席に座っている菜月ちゃんを見る。
菜月ちゃんの髪……確かに先週は長かったよね。……と、思うんだけど。莉子ちゃんは気にしてなかったし、私、何かかんちがいしてるのかな。
気になった私は、隣の席のまこちゃんに声をかけた。
「ねえ、まこちゃん」
「なあに?」
まこちゃんは、一時間目の国語の教科書を出しながら返事をした。
「菜月ちゃんって、髪短かったっけ?」
「まあ、短いって言えば短いよね。前みたいに、また伸ばすらしいよ」
「でもさ、先週の金曜日までは、背中まで長かったよね?」
「は?」
おどろいたように、まこちゃんは私に顔を向けた。
「金曜日? 何言ってんの、美優ちゃん」
「菜月ちゃんって、週末に髪切ってきたのかな」
「知らないけど……菜月の髪が長かったのって、去年くらいじゃない? ずっとショートでしょ」
「そ、そうだっけ? あはは、ごめん。私の勘違いかな……」
そこで、担任の沢田先生が教室に入ってきて、私たちは前を向いた。
沢田先生は、ママより年上のベテランの先生で、普段は優しいけど怒るとすっごく怖い。でもみんなの話をよく聞いてくれるし、時には一緒にふざけてもくれるから、学校でも人気の先生だ。
さっそく莉子ちゃんが先生に萌ちゃんのことを報告しに行くと、先生は知っていたみたいでうなずいた。
「ええ、保健室の浅田先生に聞いているわ。みなさん、萌さんはちょっと遅れてくるそうです。休みの人はいないわね。他に具合悪い人はいるかしら」
「はいはい」
颯太が元気に手をあげる。
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