はんぶんこ天使

いずみ

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第二章 ちょっと怖いけどがんばってみる!

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 萌ちゃんは宮崎さんのことを、じ、と見つめている。すると、宮崎さんもこちらを見て、萌ちゃんと目があったようだった。
 宮崎さんは、は、としたように一瞬だけ目を見開くと、怖い顔になって顔をふせてしまった。 

「なんか……宮崎さんも機嫌悪そうだね」
 その姿を不思議に思ってこっそりと萌ちゃんに耳打ちすると、萌ちゃんはあっけらかんと笑った。
「ああ、今、幻覚でね、私の髪が、ロングのストレートヘアに見えるようにしていたの。すごくきれいな黒髪の、ね」
「へ? なんで、そんなこと」
 萌ちゃんは、声をひそめると言った。

「宮崎さんが私の髪を見たらうらやましくなるように、幻を見せたのよ」
「幻って……え?! まさか、宮崎さんが犯……!」
「美優ちゃん」
 あわてて私の口をふさぎながら、めずらしくきらきらした目をした萌ちゃんが続けた。

「やっと見つけた。彼女よ。あまり学校に来てなかったから、ここで見つけられなかったのね」
「そ……なの?」
「萌、美優、早く行くよー!」
 昇降口の外から莉子ちゃんが呼んだ。

「莉子ちゃあん、私たち今日、三角公園に遊びに行くけど、どうする?」
 唐突に、萌ちゃんが大きな声で叫んだ。
「いや、無理だってば」
 莉子ちゃんが思い切り顔をしかめる。それはそうだろう。今日は読書感想文書いちゃうって、今言ってたばかりなんだから。

「萌ちゃん?」
 首を傾げながら萌ちゃんを見ると、萌ちゃんは、にっこりと笑った。その向こうにいる宮崎さんは、ちらちらと萌ちゃんを見ているみたいだ。
 もしかして。

「わかったわ。じゃあ莉子ちゃんはまたね」
「いいなー、私も遊びたいー!!」
 そんな風に話しながら、私たちは学校を後にした。

  ☆

「じゃあね、美優。ばいばーい」
 いつもの別れ道で莉子ちゃんが片手をあげた。私だけ、莉子ちゃんと萌ちゃんとは別の方向になる。
「じゃあ、萌ちゃん、またあとでね」

 闇を持つ該当者が見つかったのなら、図書館に行く必要はもうないだろう。そのかわり、三角公園にいくことになっちゃったけど。
 三角公園で、何が起こるんだろう。

 私が言ったら、萌ちゃんは笑いながら首をふった。
「ううん、やっぱり今日はやめとく。莉子ちゃんも遊べないし、美優ちゃんだって感想文書き直さなきゃいけないでしょ? 二人の宿題が終わったら、みんなで遊びに行きましょうよ」
「萌ー! 優しいねえー!」
 わざとらしく抱き着いた莉子ちゃんをかかえながら、萌ちゃんは続けた。

「だから美優ちゃんも、今日は家にいてね。遊びに行ったりしちゃ、だめよ? 絶対に、ね」
 萌ちゃんは、やけに念を押すような言い方をする。真剣な顔を見ていて気づいた。

 きっとこれは、来るなって言ってるんだ。
 萌ちゃんは、一人で三角公園に行く気だ。やっぱりさっき大きな声を出したのは、宮崎さんに聞かせるためだったんだ。

「でも萌ちゃん……大丈夫なの?」
「慣れているから、大丈夫よ」
「何が? 萌」
 莉子ちゃんが不思議そうに聞く。
「今日遊べなくても大丈夫かってことでしょ? ね、美優ちゃん」
「うん……」
「なあんだ」
 ぱ、と莉子ちゃんが笑う。

「私がんばって今日中に終わらせるから! 明日はだめだけど、明後日遊びに行こうよ!」
「そうしましょうね」
 そう言うと、萌ちゃんは、じ、と私を見つめた。
「美優ちゃん、本当にありがとうね。おかげで、とても助かったわ」
「ん? ううん、私たいしたことしてないし」
 そんな風に改めてお礼を言われると、ちょっと照れくさいなあ。
「さよなら」
「じゃあね、美優」
「うん、ばいばーい……」
 二人に手を振って、私は家へ向かった。ぽてぽてと歩きながら考える。

 萌ちゃんが大丈夫っていうなら、大丈夫だよね。きっと。
 でも、髪を切るような力を持っている人を相手にするんだ。もしその力で、髪じゃないところを切られたりしたら……

 立ち止まった私の足が、かたかたと震えていた。


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